新総裁に期待する経済政策トップは 「内需拡大の推進」 企業の受け止め 「期待していない」6割、「期待する」4割
「新総裁に期待する経済政策アンケート」調査
9月27日、自民党の新総裁に選出された石破茂総裁は10月1日、内閣総理大臣に就任し、10月9日に衆議院を解散した。総理就任から衆議院解散まで8日間で、戦後最短となった。
新総裁への期待度は、最多が「あまり期待していない」の38.5%、「全く期待していない」20.4%を合わせた「期待していない」は59.0%と約6割に達した。期待する経済政策では「内需拡大の推進」が46.1%を占め、「法人税の引き下げ」は、大企業13.1%、中小企業23.3%と規模による格差が大きかった。
自民党総裁が決定した直後の10月1~8日、東京商工リサーチ(TSR)は企業向けアンケート調査を実施し、新たな総裁に期待する経済政策を聞いた。
新たな総裁への期待では、最多は「あまり期待していない」が38.5%(5,491社中、2,119社)。 一方、「大いに期待」、「多少期待」は合計40.9%(2,249社)で、新総裁への期待は低めにスタートした。
企業が期待する経済政策では、最多は「内需拡大の推進」が46.1%(5,712社中、2,638社)で、「人手不足への対応」は大企業が38.1%(503社中、192社)に対し、中小企業は29.0%(5,209社中、1,512社)で、大企業が9.1ポイント上回った。
また、「法人税の引き下げ」は、大企業が13.1%(503社中、66社)に対し、中小企業は23.3%(5,712社中、1,214社)で、中小企業が10.2ポイント上回り、減税への温度差が出た。
石破総理は10月4日の所信表明演説で、「デフレ脱却を最優先に、賃上げと投資がけん引する成長型経済を実現」すると述べた。コロナ禍から脱却し、円安是正や内需拡大の推進、人手不足への対応、物価安定など、幅広い対策が求められている。だが、総理就任直後に為替や株式市場が乱高下するなど市場の受け止めは定まらず、重要課題への具体的な取り組みも見えてこない。
※本調査は、2024年10月1~8日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,712社を集計・分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
Q1. 9月27日の自民党総裁選挙で第28代総裁に石破茂氏が選出されました。貴社は、新総裁の誕生を期待を持って受け止めていますか?(択一回答)
◇「あまり期待していない」38.5%、「多少期待する」34.1%で拮抗
新総裁の誕生への期待度を聞いた。5,491社から回答を得た。
最多は「あまり期待していない」が38.5%(5,491社中、2,119社)。次いで、「多少期待」34.1%(1,873社)、「全く期待していない」20.4%(1,123社)、「大いに期待する」6.8%(376社)の順。
規模別では、「多少期待」が大企業の43.9%(457社中、201社)に対し、中小企業は33.2%(5,034社中、1,672社)で、大企業が10.7ポイント上回った。一方、「全く期待していない」は大企業13.1%(60社)に対し、中小企業が21.1%(1,063社)で、中小企業が大企業を8.0ポイント上回った。
産業別 「期待を持っている」金融・保険業がトップ
Q1の回答を産業別に分析した。「大いに期待」、「多少期待」を合計した「期待を持っている」で最も高かったのは、金融・保険業の51.5%(66社中、34社)だった。次いで、農・林・漁・鉱業の47.7%(44社中、21社)、小売業の45.9%(261社中、120社)と続く。
一方、建設業38.9%(763社中、297社)、サービス業他38.3%(1,009社中、387社)など4産業は40%以下だった。
石破首相の貯蓄から投資の流れを引き続き推進する姿勢や、金融政策の正常化への期待などから金融・保険業からの期待が高かったようだ。また、「地方創生2.0」を掲げ、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを示したことから、農・林・漁・鉱業からの期待も高かった。
Q2.貴社は、新総裁にどのような経済政策を期待しますか?3つまで選択ください。(複数回答)
◇「内需拡大の推進」がトップ
新総裁にどのような経済政策を期待するか聞いた。
5,712社から回答を得た。
期待する経済政策では、「内需拡大の推進」が46.1%(2,638社)で最多だった。次いで、「物価の安定」35.3%(2,022社)、「人手不足への対応」29.8%(1,704社)の順。
一方、「廃業支援への取り組み」1.3%(78社)、「貿易促進への取り組み」2.3%(132社)、「スタートアップ支援の充実」2.3%(133社)で、廃業支援や貿易促進より、内需拡大や物価の安定、人手不足への対応など、各社が直面している経営課題に関する政策を求める声が多かった。
産業別 運輸業は「エネルギーコスト上昇への対策」がトップ
Q2の回答を産業別で分析した。
「内需拡大の推進」の回答が最も多かったのは、農・林・漁・鉱業の55.8%(43社中、24社)だった。次いで、不動産業52.3%(193社中、101社)、卸売業52.2%(1,188社中、621社)と続く。 「内需拡大の推進」は10産業のうち、9産業がトップで、幅広い産業が景気刺激策を求めていることがわかった。
また、運輸業では、回答が最も多かったのは、「エネルギーコスト上昇への対策」が49.5%(226社中、112社)で、「人手不足への対応」40.2%(91社)、「物価の安定」33.6%(76社)と続く。運輸業は燃料等のコスト上昇が経営に打撃を与えており、エネルギーコスト対応を特に求めているようだ。
「物価の安定」は、すべての産業で30%を超えており、物価高の深刻な影響と早急な打開策を求める声が大きい。