• TSRデータインサイト

2024年8月の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産 37件 3カ月連続で減少、25カ月ぶりに40件を下回る

2024年8月「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


 2024年8月のゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)を利用した企業の倒産は、37件(前年同月比37.2%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。2022年7月(35件)以来、25カ月ぶりに40件を下回った。ゼロゼロ融資を利用後の倒産は、初めて発生した2020年7月からの累計が1,637件に達した。

 産業別では、最多がサービス業他の10件(前年同月比56.5%減)、建設業が9件(同25.0%減)で続く。業種中分類では、「飲食店」と「総合工事業」が各4件で最多だった。コロナ禍からの業績回復が遅れるなか、食材や資材価格の高騰が追い打ちをかけたケースが多い。

 ゼロゼロ融資を中心にしたコロナ禍の資金繰り支援策は、企業倒産の抑制には寄与した。だが、その副作用で過剰債務を抱えた企業が増加した。そこに円安、ロシアのウクライナ侵攻などが起き、物価高を招いた。また、企業規模が小さいほど価格転嫁が容易ではなく、収益確保に苦慮しながらゼロゼロ融資の返済が負担になっている。
 さらに、コロナ禍が落ち着いたが、業績回復局面の資金需要への対応も難しいのが実状だ。

 民間金融機関のゼロゼロ融資の返済は、今年4月に最後のピークを迎えた。だが、返済開始に伴う資金繰り破たんを防ぐ「コロナ借換支援」などの各種資金繰り支援は6月末で終了した。7月からは、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援に移行し、信用保証協会では保証料を減免した制度融資「経営力強化保証制度」を設けて後押しをする。

 8月の全国企業倒産は723件(前年同月比4.8%減)で、29カ月ぶりに減少に転じた。資金繰り支援や条件変更などの下支えが、一時的に倒産抑制にひと役買ったようだ。
 ただ、物価上昇や最低賃金引き上げなどの賃上げ圧力、日銀の追加利上げに伴う金利引き上げなど、コスト負担は増すばかりだ。今後の業績改善の進み具合次第で、企業業績は二極化が一段と鮮明になる可能性もある。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2024年8月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は37件、25カ月ぶりに40件割れ

 2024年8月の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は37件(前年同月比37.2%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。月次の倒産件数が40件を下回ったのは、2022年7月以来、25カ月ぶり。
 負債総額は164億3,000万円(前年同月比10.6%増)で、3カ月ぶりに前年同月を上回った。2カ月連続で100億円を超えた。前年同月は発生しなかった50億円以上の大型倒産が1件発生し、負債総額を押し上げた。

ゼロゼロ融資利用後倒産 月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

3

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

4

  • TSRデータインサイト

銭湯の利益6割減、値上げは諸刃の剣 独自文化の維持へ模索続く

木枯らし吹きすさぶなか、背中を丸めながら洗面器を抱えて銭湯に…。寒くなると銭湯が恋しくなるのは、いつの時代も変わらない。サウナブームで光明が差すように見える銭湯だが、実際はそうではない。

5

  • TSRデータインサイト

「退職代行」による退職、大企業の15.7%が経験 利用年代は20代が約6割、50代以上も約1割

「退職代行」業者から退職手続きの連絡を受けた企業は7.2%で、大企業は15.7%にのぼることがわかった。退職代行はメディアやSNSなどで取り上げられ、代行利用や退職のハードルが下がり、利用者も増えている。

TOPへ