• TSRデータインサイト

8月の「物価高」倒産 46件 今年2番目の低水準、2カ月ぶりに前年同月を下回る

2024年8月 「物価高」倒産状況


 2024年8月の「物価高」に起因する倒産は46件(前年同月比22.0%減)で、今年2番目に低い水準となった。負債総額は149億3,100万円(同31.7%減)で、件数・負債ともに6月以来、2カ月ぶりに前年同月を下回った。
 一時に比べ円安は落ち着いているが、為替の変動と物価にはタイムラグがあり、しばらく物価下落は期待できず物価高の状態が続くとみられる。
 1-8月累計は490件(前年同期比16.6%増)、負債総額1,527億2,000万円(同55.6%減)。

 産業別では、最多は製造業の15件(前年同月比15.3%増)。以下、卸売業(同166.6%増)と運輸業(同20.0%減)が各8件、建設業7件(同65.0%減)の順。下請け企業が多く、ドライバーや職人不足が深刻な運輸業、建設業は、燃料や資材価格の高止まりが続き、適切な価格転嫁が急務になっている。負債額別は、負債1億円以上が25件(前年同月比28.5%減、構成比54.3%)を占めた。形態別は、破産が42件(同23.6%減、同91.3%)と大半を占めた。

 深刻な人手不足を背景に、人材採用や退職阻止への賃上げに加え、10月からは最低賃金の引き上げも始まり、人件費上昇が収益にのしかかる。さらに、借入金の返済や金利引き上げもあり、資金繰りへの負担材料が増えている。こうしたなか、企業は売上回復で資金需要が増大しているが、過剰債務を抱えた企業は新規借入が難しいだけに、「物価高」が収益を圧迫する度合いはこれまで以上に高まるだろう。

※本調査は、2024年8月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。

「物価高」倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ