• TSRデータインサイト

2024年8月「株価下落の影響」に関するアンケート調査

一時、株価が急落(8月5日撮影)

 8月5日、東京株式市場は波乱の展開で、終値は4,451円安と株価が暴落した。これは1987年のブラックマンデー翌日の3,836円安を超え、過去最大の下落幅となった。6日には3,217円高と過去最大の上げ幅で株価は乱高下の不安定な状況が続いている。
 東京商工リサーチ(TSR)は8月7日から13日まで、「株価下落の影響」に関する企業アンケートを実施した。上場企業の株価下落は、経営に「マイナス」との回答が26.0%あり、大企業は約4割(36.8%)あった。一方、「影響はない」は6割超(62.5%)と冷静に受け止めていることもわかった。
 「マイナス」と回答した理由は、「景気減速感から受注が減少する可能性がある」が約8割(76.4%)、「景気減速感から設備投資を抑制する可能性がある」も約3割(29.6%)あり、株価下落が景気への悪影響を懸念する回答が多かった。
 7月11日、日経平均の終値は史上最高の4万2,224円を記録したが、8月14日の終値は3万6,442円と15%ほど低い。企業は、株価を景気の先行き指標として捉える傾向にあり、株価回復が遅れると、先行投資を含めた企業活動の意欲に「マイナス」の影響が広がりそうだ。
※ 本調査は、2024年8月7~13日にインターネットによるアンケート調査を実施し、2,614社から回答を得て、集計・分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
 

Q1.8月に入ってから上場企業の株価が下落しています。この状況は、貴社の経営にとってプラスですか?マイナスですか?受注、投資、採用、賃上げ、資金調達の面を勘案して回答下さい(択一回答) 

「マイナス」が26.0%
 「株価下落」の影響について、「プラス」は1.2%(2,614社中、32社)で、「マイナス」は26.0%(681社)だった。また、「プラス・マイナス拮抗」が10.1%(265社)、「影響はない」が62.5%(1,636社)だった。
 規模別では、「マイナス」は大企業が36.8%(263社中、97社)、中小企業は24.8%(2,351社中、584社)と、大企業が12.0ポイント高く、「株価下落」のマイナス影響は大企業ほど大きいことがわかった。一方、「影響はない」は大企業が51.3%(135社)、中小企業は63.8%(1,501社)で中小企業が12.5ポイント高く、非上場の中小企業は株価下落の影響をさほど深刻に受け止めていないようだ。
 「マイナス」の影響と回答した企業の業種別(母数10以上)は、「金融商品取引業,商品先物取引業」が80.0%(10社中、8社)で最も高かった。次いで、「印刷・同関連業」が45.4%(22社中、10社)、「運輸に附帯するサービス業」が42.3%(26社中、11社)、「繊維・衣服等卸売業」が38.8%(18社中、7社)、「産業廃棄物処理業」が38.0%(21社中、8社)と続き、業種を問わず、「マイナス」影響を懸念する回答が多かった。

株価下落の企業への影響は?

Q2.マイナスの理由はどのようなものですか?(複数回答) 

「景気減速感による受注減の懸念」が76.4%
 「マイナス」理由について、最多は「景気減速感から受注が減少する可能性がある」が76.4%(645社中、493社)で、「景気減速感から設備投資を抑制する可能性がある」も29.6%(191社)で約3割あった。「株価下落」による景気減速から受注減を懸念する回答が最も多かった。
 次いで、「金融機関の融資姿勢が硬化する可能性がある」が18.9%(122社)、「投資目的有価証券の価値の目減りにより損失計上する可能性がある」16.1%(104社)、「景気減速感から賃上げ見送りや抑制、賃下げする可能性がある」が11.1%(72社)あった。
 規模別では、「受注減の可能性」は大企業が75.5%(86社中、65社)、中小企業が76.5%(559社中、428社)と大きな差は出なかった。ただ、「投資目的有価証券の損失計上の懸念」は大企業が20.9%(18社)、中小企業は15.3%(86社)で大企業が5.6ポイント上回った。
 産業別では、「受注減の可能性」が最も高かったのが、「農・林・漁・鉱業」の87.5%(8社中、7社)。「小売業」が86.2%(29社中、25社)、「製造業」が86.1%(152社中、131社)、「卸売業」が81.8%(121社中、99社)、「情報通信業」80.0%(45社中、36社)までの5産業が8割を上回った。一方、最も低かったのは、「サービス業他」の64.0%(128社中、82社)だった。
株価下落のマイナス影響は?
           ◇         ◇         ◇
 株価が過去最高値から一転して、過去最大の下落幅を記録するなど、2024年の株式市場は不安定な状況が続く。「株価下落」を景気の先行き指標として不安を抱く企業が多く、受注減や設備投資の抑制などを懸念する回答が目立った。
 米国など海外の金利や景気動向、中東やウクライナ情勢など、株価への影響は多岐にわたる。また、為替も不安定な状況が続き、株価動向は予想が難しい。株価回復が遅れると企業マインドにはマイナス影響が広がるだろう。
 7月まで企業倒産は28カ月連続で前年同月を上回り、増勢を強めている。特に、これまで物価高や人手不足などを背景に、業績回復が遅れて過剰債務の解消メドが立たない企業も多い。今後は金利上昇も収益悪化の懸念材料に浮上してくる。好調な株価が景気を牽引していたが、低迷が長引くと企業には新たなリスクになりかねない。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

3

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

4

  • TSRデータインサイト

銭湯の利益6割減、値上げは諸刃の剣 独自文化の維持へ模索続く

木枯らし吹きすさぶなか、背中を丸めながら洗面器を抱えて銭湯に…。寒くなると銭湯が恋しくなるのは、いつの時代も変わらない。サウナブームで光明が差すように見える銭湯だが、実際はそうではない。

5

  • TSRデータインサイト

「退職代行」による退職、大企業の15.7%が経験 利用年代は20代が約6割、50代以上も約1割

「退職代行」業者から退職手続きの連絡を受けた企業は7.2%で、大企業は15.7%にのぼることがわかった。退職代行はメディアやSNSなどで取り上げられ、代行利用や退職のハードルが下がり、利用者も増えている。

TOPへ