2023年度の飲食業倒産、過去最多を更新し930件に 「宅配・持ち帰り」「ラーメン店」「焼肉店」「居酒屋」が苦境
2023年度「飲食業の倒産動向」調査
コロナ禍が落ち着き、人流や訪日外国人も戻ってきたが、飲食業はゼロゼロ融資の返済や食材価格・光熱費の上昇、人手不足などが押し寄せ、コロナ禍前より厳しさを増している。
2023年度(4-3月)の「飲食業」倒産(負債1,000万円以上)は930件(前年度比57.0%増)と急増し、4年ぶりに前年度を上回った。年度では初めて900件を超え、過去最多を記録した。また、「新型コロナウイルス」関連倒産は529件(同37.4%増)で、飲食業倒産の約6割(56.8%)を占めた。
2023年度の飲食業は、コロナ禍から業績回復が遅れた事業者だけでなく、インバウンド需要を取り込み売上が伸びた事業者も、人件費や食材・光熱費の上昇が収益の足かせとなった。
2023年度の飲食業の「人手不足」倒産は57件(前年度29件)で1.9倍、「物価高」倒産は59件(同21件)で2.8倍と大幅に増え、それぞれ過去最多を更新した。
業種別では、コロナ特需の終焉で淘汰が進む「宅配」「持ち帰り」に加え、物価や人件費上昇の影響が深刻な「ラーメン店」や「焼肉店」を含む「専門料理店」で最多となった。
利幅が薄い飲食業は、急激なコストアップで利益がさらに圧迫され、売上増加だけでは十分な採算の改善に至らない事業者も多い。飲食業でも価格転嫁が必要だが、客足の維持と採算を両立できる価格設定には同業者との差別化も急務になっている。
※ 本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2023年度(4-3月)の倒産を集計、分析した。
飲食業倒産、年度初の900件台に急増
2023年度(4-3月)の「飲食業」倒産は4年ぶりに増加し、過去最多の930件(前年度比57.0%増)に達した。年度の飲食業倒産が900件台に乗せるのは初めて。
コロナ禍前の飲食業は、人手不足や消費低迷などを背景に厳しい業況が続き、2015年以降、4年連続で倒産件数が増加していた。2019年度は人手不足に加え、消費増税もあり、倒産は841件と、東日本大震災直後の2011年度(830件)を上回り最多を更新した。しかし、「新型コロナウイルス」感染拡大以降は、手厚いコロナ関連支援による資金繰り緩和が効果をみせた。また、事業継続の判断を先送りした事業者も多く、飲食業倒産は2年連続で抑制された。
2023年度は、新型コロナ感染症の5類移行でインバウンドや人流回復が急速に進んだ。しかし、コロナ禍での生活様式の変化や宴会・接待需要の減少で売上が戻らないなか、コロナ関連支援の終了・縮小やゼロゼロ融資の返済に加え、食材費や光熱費、人件費などのコスト上昇で資金繰りが悪化している飲食業者は少なくない。
月次でも、飲食業倒産は2022年11月から17カ月連続で前年同月を上回っている。コスト上昇分の価格転嫁にも限界があり、飲食業倒産は引き続き増勢をたどる可能性が高い。
業種別 全業種で増加、「すし店」「持ち帰り飲食サービス業」が前年度比倍増
業種小分類別では、全業種で前年度の件数を上回った。最多は日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店を含む「専門料理店」の235件(前年度比71.5%増、構成比25.2%) だった。以下、「食堂,レストラン」が202件(同51.8%増、同21.7%)、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が173件(同35.1%増、同18.6%)の順。
業種細分類では、「ラーメン店」(63件、前年度比173.9%増)と「持ち帰り飲食サービス業」(56件、同107.4%増)、「宅配飲食サービス業」(66件、同53.4%増)の3業種が過去最多を更新。「持ち帰り」と「すし店」(30件、同100.0%増)は倍増した。
また、「居酒屋」は2020年度(175件)に次いで、「焼肉店」(31件、同93.7%増)は2012年度(33件)に次いで、それぞれ過去2番目の多さだった。
原因別 『不況型』倒産が約9割
最多は「販売不振」の766件(前年度比57.6%増、構成比82.3%)だった。
増加率では、「他社倒産の余波」の前年度比91.3%増(23→44件)や「事業上の失敗」の同65.0%増(20→33件)で増加が目立った。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は817件(前年度比57.1%増)だった。飲食業倒産に占める構成比は87.84%(前年度87.83%)で、前年度とほぼ同水準。
負債額別 負債1億円未満が8割超え
負債額別では、最多が「1千万円以上5千万円未満」の674件(前年度比73.7%増、構成比72.4%)だった。「5千万円以上1億円未満」の130件(同18.1%増、同13.9%)と合わせ、負債1億円未満の倒産は804件(同61.4%増、同86.4%)で、全体の8割以上を占めた。
一方で、増加率の最大は「10億円以上」の前年度比133.3%増(3→7件)で、飲食業倒産は規模の二極化が進んでいる。
都道府県別 増加30、減少15、同数2
増加が30都道府県、減少が15県、同数が2県だった。
10件以上発生した都道府県では、増加が、熊本900.0%増(1→10件)、山口500.0%増(2→12件)、群馬350.0%増(4→18件)、兵庫228.0%増(25→82件)、福岡221.0%増(19→61件)、広島115.3%増(13→28件)、富山100.0%増(5→10件)、東京97.4%増(78→154件)、和歌山87.5%増(8→15件)、三重87.5%増(8→15件)、愛知61.3%増(44→71件)、滋賀60.0%増(10→16件)、神奈川56.5%増(23→36件)、栃木54.5%増(11→17件)、奈良50.0%増(10→15件)、大阪42.6%増(75→107件)、京都41.3%増(29→41件)、静岡28.5%増(14→18件)、北海道27.7%増(18→23件)、千葉20.0%増(15→18件)、宮城6.6%増(15→16件)。
減少は、埼玉27.7%減(18→13件)と新潟33.3%減(15→10件)、前年度同件数は茨城(13件)のみ。