• TSRデータインサイト

2023年度の「円安」関連倒産 56件に 前年度の1.5倍増、負債は2,000億円超

2023年度の 「円安」関連倒産(3月29日現在) 


 2023年度の「円安」関連倒産は56件(前年比55.5%増)で、前年度(36件)の1.5倍に増加した。3月は2023年度で2番目の8件発生し、円安が物価高などを招き、資金繰りに大きな影響を及ぼしている。 
 負債総額は2,009億4,900万円(前年比554.2%増)と大幅に膨らんだ。これは2023年5月にFCNT(株)(神奈川県)と関連2社が合計1,775億円を抱えて民事再生法を申請し、押し上げた。
 3月11日の円ドル相場は1ドル=146円54銭で推移していたが、3月19日に日本銀行がマイナス金利解除を発表すると、東京外国為替市場は1ドル=151円台へ円安が加速した。このため、当面は経営体力がぜい弱な中小・零細企業への影響が懸念される。

 2023年度の「円安」関連倒産は、卸売業が26件(前年比62.5%増)と4割を占めた。このほか、小売業12件(同71.4%増)、製造業11件(同83.3%増)と続き、主要産業で影響が続いている。
 円安は、内需型産業では海外からの輸入商材の仕入コストアップにつながる一方で、輸出産業の好業績に寄与している。内需型産業は価格転嫁が進まない場合、物価高が直撃し、資金負担を増すことになる。このため、コロナ禍からの業績回復が遅れた企業を中心に、円安の影響が倒産を押し上げる下地ができつつある。

円安関連倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「人材派遣業」倒産、1-3月は過去最多の29件 ~ 「円高」、「トランプ関税」でさらに増加も ~

人手不足で人材の獲得競争が厳しさを増すなか、人材派遣会社(労働者派遣業)の倒産が急増している。

2

  • TSRデータインサイト

コメ農家の倒産・休廃業が過去最多 ~ コメ作りの「あきらめ」、さらに増加も ~

コメ価格の高騰が止まらない。農水省が18日に発表した3月の米価格(相対取引価格)は2万5,876円で、1年前の約2倍の高値だ。 政府は備蓄米を放出したが、小売業者にはなかなか届かず、韓国産やアメリカ産の輸入拡大も検討されている。

3

  • TSRデータインサイト

大型連休は「博物館・美術館」がオススメ? ~ 物価高でも魅力的な入館料が追い風、業績も回復 ~

コロナ禍で打撃を受けた博物館・美術館が物価高のなかで健闘している。体験型やデジタル対応など新しい取り組みや、比較的安価な入館料で集客力を高めている。

4

  • TSRデータインサイト

次世代電池のAPB、経営騒動の舞台裏 ~ APB・大島麿礼社長 単独インタビュー ~

次世代リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発や製造を手がける技術系ベンチャーのAPB(株)が注目を集めている。大島麿礼社長が東京商工リサーチの単独取材に応じた(取材日は4月10日)。

5

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

TOPへ