• TSRデータインサイト

2月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産 42件 4カ月連続で40件台に、小康状態が続く

2024年2月「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


 2024年2月の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用後の倒産は、42件(前年同月比16.0%減)で、2023年12月から3カ月連続で前年同月割れが続いた。
月次では2023年3月に最多の63件が発生したが、その後は次第に落ち着き、同年11月から4カ月連続で40件台で推移している。初めて確認できた2020年7月からの累計倒産件数は、1,302件に達した。

 産業別では飲食店(6件)などのサービス業他が最多の12件(前年同月比20.0%減)で、全体の約3割(構成比28.5%)を占めた。
 負債額別では、負債1億円以上5億円未満が17件(前年同月比5.5%減)、同5億円以上10億円未満が5件(同150.0%増)発生し、同1億円以上は合計22件(構成比52.3%)と過半数を占めた。

 コロナ禍の急激な業況悪化で、多くの企業がゼロゼロ融資で窮状をしのぎ、企業倒産は記録的な低水準にとどまった。しかし、コロナ禍からの業績回復が遅れるなか、資金繰り支援の副作用で過剰債務に陥り、新たな資金調達が難しくなっている。さらに、物価高や人件費高騰、人手不足などで資金繰りは余裕を欠き、ゼロゼロ融資返済も負担になり行き詰まる企業が相次いでいる。

 金融庁は、2023年1月から開始した「コロナ借換保証」制度や資本性劣後ローンなどの活用を促し、金融機関に継続的な伴走支援を求めている。中小企業庁も、今年2月から1年間の期限で、早期経営改善計画の早期策定を支援(補助上限15万円)することで、民間金融機関に経営改善支援の促進を求めている。

 今年4月に民間金融機関のゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎える。物価上昇や人手不足に伴う人件費上昇も見込まれるなか、企業倒産は増勢を強めている。各種支援策が打ち出されるが、どこまで効果があるか未知数で、「ゼロゼロ融資」利用後倒産の動向はしばらく目が離せない。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2024年2月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は42件、3カ月連続で前年同月を下回る

 2024年2月の「ゼロゼロ融資」を利用後の倒産は42件(前年同月比16.0%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。また、2023年11月から4カ月連続で40件台にとどまり、小康状態が続く。
 負債総額は83億5,200万円(同55.7%減)で、2カ月ぶりに100億円を下回った。負債10億円以上の大型倒産(前年同月5件)がなく、負債総額を押し下げた。

ゼロゼロ融資利用後倒産 月次推移

【産業別】サービス業他が最多で約3割

 産業別では、サービス業他が12件(前年同月比20.0%減)で最多、全体の約3割(構成比28.5%)を占めた。
 次いで、建設業(前年同月同数)と製造業(前年同月比12.5%増)が各9件、小売業が5件(同66.6%増)、卸売業(同62.5%減)と運輸業(同40.0%減)が各3件、情報通信業が1件(同50.0%減)の順。
 農・林・漁・鉱業と金融・保険業、不動産業は、前年同月と同様に発生がなかった。

産業別状況(2月)

【業種別】飲食店が6件で最多

 業種別(中分類)では、「飲食店」6件が最多。コロナ禍で集客が落ち込み、業績不振が続くなか、原材料高が経営を直撃、返済の目途が立たず、事業継続を断念した。
 次いで、「総合工事業」5件が続く。資材価格の高騰や人手不足に伴う労務費の上昇などで資金繰りが悪化、業績回復が進まず行き詰まった。
 このほか、「食料品製造業」と「織物・衣服・身の回り品小売業」が各3件で並び、飲食関連やアパレル関連の苦境を反映した。

業種分類別倒産状況(2月)

【形態別】消滅型倒産が9割超

 形態別は、破産が38件(前年同月比7.3%減)で最多。特別清算2件(前年同月ゼロ)と合わせた『消滅型』倒産は40件(前年同月比2.4%減)で9割超(構成比95.2%)を占めた。
 『再建型』は民事再生法が1件(前年同月4件)で、2カ月連続で発生した。
 このほか、私的倒産の取引停止処分が1件(同4件)。

【従業員数別】10人未満が約7割

 従業員数別の最多は、5人未満の22件(前年同月比8.3%減)だった。次いで、10人以上20人未満が8件(同27.2%減)、5人以上10人未満が6件(同14.2%減)で続く。10人未満の小規模企業は28件で、約7割(構成比66.6%)を占めた。
 50人以上300人未満は2件、300人以上はゼロ件で、それぞれ前年同月と同数だった。中堅規模以上は前年同月と変わらなかった。

【地区別】北陸以外の8地区で発生

 地区別の最多は、関東の17件(前年同月21件)で、4割(構成比40.4%)を占めた。次いで、九州8件(前年同月5件)、中国6件(同ゼロ)、東北5件(同9件)、北海道と中部が各2件(同3件)、近畿(同8件)と四国(同ゼロ)が各1件の順。北陸(同1件)を除く8地区で発生した。
 都道府県別では、東京都が9件(前年同月11件)で最多。このほか、広島県が4件(同ゼロ)、宮城県が3件(前年同月同数)で続く。2023年11月以来、4カ月連続で10件以上発生した都道府県はない。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ