• TSRデータインサイト

東日本大震災から13年、「震災」関連倒産が累計2,046件 2023年は初めて前年を上回る

~ 「東日本大震災」関連倒産(2月29日現在)~


 2011年3月11日、未曽有の被害をもたらした東日本大震災から13年を迎える。多くの人命を奪った震災は、震源地の東北だけでなく、関東や北海道にも被害をもたらし、経済活動への影響は全国に及んだ。
 いまだに震災の影響を引きずる企業は多く、震災が倒産の一因となった関連倒産は2024年2月までで累計2,046件にのぼる。
 「震災」関連倒産は、震災の起きた2011年の544件をピークに、2021年まで10年連続で減少をたどった。しかし、2022年は前年と同数の21件で下げ止まり、2023年は前年より6件多い27件発生、初めて前年を上回った。震災の影響は、今でも企業活動に暗い影を落としている。
 2023年の企業倒産は、物価高や人手不足、人件費高騰による収益悪化が財務内容の脆弱な企業を直撃し、8,690件(前年比35.1%増)と急増。31年ぶりの高い増加率を示し、4年ぶりに8,000件台に乗せた。被災企業は、震災被害で抱え込んだ債務に加え、コロナ禍とコスト上昇が負担となり行き詰まるケースが多かった。
 政府は、2021~2025年度を「第2期復興・創生期間」と位置づけ、復興の総仕上げを目指す。インフラ等のハード面は概ね完了したが、原発災害の被災地域に関しては、事故の収束や帰還・移住の促進など、中長期的な対応が必要となっている。
 地域経済や雇用の担い手となる企業の経営安定化も復興には欠かせない。被災地の復興を支える地元企業に、中長期的に寄り添った支援が求められている。

東日本大震災関連倒産 震災後月次推移


東日本大震災の関連倒産 累計2,046件

 都道府県別では、最多は東京都の593件。次いで、宮城県217件、福島県96件、岩手県93件、北海道85件、神奈川県と茨城県が各83件、千葉県77件、福岡県71件、栃木県と群馬県が各63件など、島根県を除いた46都道府県に広がる。東北6県は合計512件(構成比25.0%)と4分の1にとどまる。
 産業別では、サービス業他の537件(同26.2%)が最多。このうち、宿泊業126件や飲食店96件などが多い。次いで、製造業479件(同23.4%)、卸売業375件(同18.3%)、建設業235件(同11.4%)、小売業193件(同9.4%)、運輸業88件、情報通信業67件、不動産業39件、農・林・漁・鉱業30件、金融・保険業3件の順。
 形態別では、最多が破産の1,515件で、7割(同74.0%)を超える。再建型の民事再生法と会社更生法は計155件(同7.5%)にとどまり、9割超が再建を断念した。

東日本大震災関連倒産 都道府県別倒産件数

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

次世代電池のAPB、経営騒動の舞台裏 ~ APB・大島麿礼社長 単独インタビュー ~

次世代リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発や製造を手がける技術系ベンチャーのAPB(株)が注目を集めている。大島麿礼社長が東京商工リサーチの単独取材に応じた(取材日は4月10日)。

3

  • TSRデータインサイト

コロナ禍で急拡大の「マッチングアプリ」市場 新規参入のテンポ鈍化、“安全“投資で差別化

20代、30代の若者を中心に、恋活や婚活、恋愛の真面目な出会いを求めるマッチングアプリの利用が広がっている。マッチングアプリの運営会社はコロナ禍を境に急増し、社数は6年間で5.6倍になった。2019年3月末の5社から、2025年3月末は28社と6年間で大幅に増えた。

4

  • TSRデータインサイト

丸住製紙(株)~ 倒産した地元の“名門”製紙会社の微妙な立ち位置 ~

2月28日に新聞用紙の国内4位の丸住製紙(株)(四国中央市)と関連2社が東京地裁に民事再生法の適用を申請してから2週間が経過した。負債総額は約590億円、債権者数は1,000名以上に及ぶ。愛媛県では過去2番目の大型倒産で、地元の取引先や雇用への影響が懸念されている。

5

  • TSRデータインサイト

介護離職者 休業や休暇制度の未利用54.7% 規模で格差、「改正育児・介護休業法」の周知と理解が重要

団塊世代が75歳以上になり、介護離職問題が深刻さが増している。ことし4月、改正育児・介護休業法が施行されたが、事業規模で意識の違いが大きいことがわかった。

TOPへ