倒産企業の平均寿命は23.1年、2年連続で縮む 倒産企業の構成比 「新興」企業が初めて30%台に
~ 2023年 倒産企業の「平均寿命」調査 ~
2023年の倒産企業の平均寿命は23.1年(前年23.3年)で、2007年に調査を開始以降、東日本大震災が発生した2011年(23.0年)に次いで短かった。ゼロゼロ融資の返済や物価高、人件費上昇、人手不足など、多くの問題を引きずるなか、経営基盤がぜい弱な「新興」企業ほどコロナ禍の影響が大きく、倒産した企業に占める割合が上昇し、平均寿命が縮んだ。
産業別の平均寿命は、最長が製造業の36.3年(前年35.7年)。製造業は、倒産の構成比が業歴30年以上の「老舗」企業が6割(63.3%)を占め、突出して多い。次いで、卸売業の29.5年(同27.9年)、小売業の24.5年(同23.9年)と続く。一方で、最短は金融・保険業の15.0年(同12.5年)だった。
2023年に倒産した企業のうち、最も業歴が古かったのは1920年6月設立の丸松(株)(大阪市、4月破産)の102年だった。1923年以前設立で、業歴100年以上は2社(前年4社)。
国や自治体のコロナ関連支援が資金繰りの緩和をもたらし、企業倒産は歴史的な低水準が続いた。だが、支援の縮小・終了で企業倒産が増勢を強めるなか、業歴の短い「新興」企業ほど営業基盤や金融機関との関係を築くまでに至らず、しわ寄せを受けやすくなっている。
政府、金融機関はコロナ禍から企業の事業再生に軸足を移しつつあるが、「新興」企業は支援の網の目からこぼれた分だけ倒産件数を押し上げ、全体の平均寿命の短縮につながった。
※本調査は、2023年の全国倒産8,690件(負債1,000万円以上)のうち、創業年月が不明の1,054件を除く、7,636件を対象に分析した。
※業歴30年以上を「老舗」企業、同10年未満を「新興」企業と定義し、業歴は法人が設立年月、個人企業は創業年月で起算。
平均寿命は23.1年 2年連続で短縮
2023年の倒産企業の平均寿命は23.1年(前年23.3年)で、2年連続で前年を下回った。コロナ禍の支援効果が薄れる一方、ゼロゼロ融資の返済や円安を背景にした原材料や資材、エネルギー価格の上昇で、経営基盤がぜい弱な「新興」企業の倒産が増加。倒産に占める構成比も上昇した。
業歴別の倒産構成比は、業歴30年以上の「老舗」企業は32.1%(前年33.7%)で、2年連続で縮小した。
一方で、業歴10年未満の「新興」企業は30.1%(同29.6%)で、2009年以降の15年間で初めて30%台に乗せた。綿密な事業計画より手厚い企業支援を背景に設立された企業も多く、コロナ禍の急激な市場の変化に対応できなかったことも構成比を引き上げた一因になった。
平均寿命の最長は製造業の36.3年
産業別の平均寿命は、10産業のうち、製造業、卸売業、小売業、金融・保険業の4産業で延びた。一方、平均寿命が短縮したのは農・林・漁・鉱業、建設業、不動産業、運輸業、情報通信業、サービス業他の6産業だった。
平均寿命では、最長が製造業の36.3年(前年35.7年)で、唯一、30年を超えた。次いで、卸売業29.5年(同27.9年)、小売業24.5年(同23.9年)、運輸業24.4年(同26.2年)、農・林・漁・鉱業21.9年(同23.1年)の順。
平均寿命の最短は、金融・保険業の15.0年(同12.5年)だった。
政府は、コロナ禍で断続的に支援策を打ち出し、企業倒産は歴史的な低水準となった。だが、コロナ禍も4年を経過し、支援策は順次、縮小・終了を迎えている。支援効果が希薄化するに伴い、業績回復が遅れた企業は市場からの撤退、廃業や倒産が現実味を帯びている。
さらに、円安やロシアのウクライナ侵攻などで、物価高騰が長引き、人手不足も深刻化している。全体的なコストアップを吸収できない企業は、物価高が収益面に大きな負担となっている。そうした事態への耐性がもろい「新興」企業が倒産件数を押し上げ、結果的に平均寿命の短縮につながった。
産業別 製造業は老舗企業が63.3%
産業別では、「老舗」企業の構成比は10産業のうち、製造業、卸売業、金融・保険業の3産業で上昇。一方、農・林・漁・鉱業、建設業、不動産業、運輸業、情報通信業、サービス業他の6産業で減少、小売業は前年と同水準だった。
「老舗」企業の構成比の最高は、製造業の63.3%(前年62.7%)で、3年連続で60.0%を超えた。以下、卸売業45.0%(同42.9%)、運輸業34.1%(同37.8%)、小売業33.1%(同33.1%)、建設業29.9%(同30.9%)と続く。
2023年の製造業の社長年齢は、60代以上が6割(60.9%)を超え高齢化が目立っている。後継者不在や事業承継に加え、資材価格の高騰や人件費の上昇などコスト負担の増加も深刻さを増している。
産業別で、業歴10年未満の「新興」企業の構成比が最も高かったのは、サービス業他の41.4%(前年40.7%)だった。飲食業など対面サービス業は、政府、自治体の積極的な創業支援の恩恵を受ける一方で、コロナ禍前の業況に戻らず、業歴の浅い企業の息切れが目立った。
法人格別 老舗企業は合資会社が65.0%、新興企業は合同会社が87.5%
主な法人格別では、「老舗」企業の構成比は有限会社、合資会社で上昇し、株式会社、合同会社、医療法人、個人企業で低下、一般社団法人は前年と同水準だった。
「老舗」企業の構成比の最高は、合資会社の65.0%(前年58.3%)で、3年ぶりに上昇した。次いで、2006年5月に会社法の改正により廃止された有限会社が49.2%(前年47.0%)、株式会社が29.4%(同31.8%)と続く。
一方、「新興」企業の構成比では、有限会社に代わり新たに創設された合同会社が87.5%(同92.1%)で突出。以下、一般社団法人73.9%(同84.6%)、個人企業36.9%(同39.3%)の順。
平均寿命では、最高が合資会社の45.6年(前年42.3年)で、最低は合同会社の5.5年(同5.0年)で、その差は40.1年(同37.3年)。
「新興」企業で構成比が最高となった合同会社は、株式会社に比べ設立の手続きが簡素化されている。ただ、その分、小規模事業者が多く、資産背景も乏しいため、コロナ禍の支援で過剰債務に陥り、新たな資金調達が難しく資金繰りに行き詰まる企業が多かった。
地区別 老舗企業は北陸が2年連続でトップ
2023年倒産の「老舗」企業の地区別は、9地区のうち上昇が3地区、低下が6地区だった。
最高が北陸の51.4%で、前年の47.1%より4.3ポイント上昇。2009年以降の15年間で、初めて50.0%を超えた。
次いで、四国42.6%(前年45.7%)、中国42.1%(同42.8%)、東北37.6%(同37.3%)、中部35.7%(同38.1%)と続く。
最低は九州の25.9%(同31.3%)で、前年より5.4ポイント低下した。
「老舗」企業の構成比トップの北陸は、福井県が60.0%(同48.1%)で3位、富山県が49.1%(同44.2%)で8位、石川県が48.8%(同50.0%)で9位と、上位10位にランクイン。
「新興」企業の構成比では、九州が38.0%で、前年の31.1%より6.9ポイント上昇し、2年ぶりに、トップとなった。次いで、近畿31.5%(同27.3%)、関東31.2%(同31.2%)、東北27.6%(同29.0%)、中部26.6%(同28.4%)の順。9地区のうち、九州、近畿(前年比4.2ポイント上昇)、北陸(同0.1ポイント上昇)の3地区で構成比が前年を上回った。
都道府県別 老舗企業の構成比は最高が鳥取県71.4%
2023年倒産の「老舗」企業の構成比を都道府県別でみると、トップは鳥取県の71.4%(前年40.0%)だった。次いで、島根県61.2%(同47.8%)、福井県60.0%(同48.1%)、徳島県56.7%(同58.0%)、新潟県53.9%(同53.2%)と続く。全国平均の32.1%以上は34道府県(前年全国平均33.7%、30府県)だった。
一方、「老舗」企業の構成比の最低は、滋賀県の18.0%(前年26.6%)で、「新興」企業の構成比では34.4%(同42.2%)と8番目に高かった。
「老舗」企業の構成比が前年より上昇したのは24道県(前年23道府県)だった。上昇幅の最高は鳥取県の前年比31.4ポイント上昇(40.0→71.4%)。次いで、高知県が同17.0ポイント上昇(30.0→47.0%)、山梨県が同14.5ポイント上昇(33.3→47.8%)、島根県が同13.4ポイント上昇(47.8→61.2%)、秋田県が同12.2ポイント上昇(38.8→51.0%)の順。「老舗」企業の構成比が前年より最も低下したのは、愛媛県の同18.7ポイント低下(51.3→32.6%)だった。