• TSRデータインサイト

相次ぐコンプラ違反、注目される「取引先ガバナンス」=2023年を振り返って(5)

 2023年は「コンプライアンス」違反問題が多く話題にのぼった。6月に東証プライム上場(当時)の(株)三栄建築設計(TSR企業コード:293216029)が、元代表による暴力団組員への利益供与の疑いで、東京都公安委員会から暴力団排除条例に基づく勧告を受けた。同社は当初、「(上場廃止にならないように)最善の努力をしていく」としていたが、金融機関から期限利益の喪失通知を受けて状況が一変した。そして、自力再建が厳しくなり、(株)オープンハウスグループ(TSR企業コード:294451536)による公開買付けで11月に上場廃止となった。
 7月には中古車販売大手の(株)ビッグモーター(TSR企業コード:750059338)が、保険金不正請求問題に関する記者会見を開き、兼重宏行社長と兼重宏一副社長の辞任を発表した。ビッグモーターは会見に先立ち、特別調査委員会による調査報告書を公表したが、そのなかで板金部門での修理代金の水増しなど保険金の不正請求が多く指摘された。
 9月には芸能プロダクションの(株)ジャニーズ事務所(当時、TSR企業コード:291723497)の屋台骨が根底から揺らいだ。創業者のジャニー喜多川氏による性加害問題を認め、今後、同社は被害者への補償業務に専念し、同業務の終了後は廃業する。マネジメント業務は新会社に任せることを公表した。
 大手企業によるコンプライアンス違反の発覚と経営陣の退任が相次ぎ、取引先の対応にも注目が集まった。TSRのデータベースでは、ジャニーズ事務所の取引先の1割強(構成比13.2%)が上場企業だったが、所属タレントの広告起用の見直しでスポンサー各社は対応に追われた。
 TSRが10月に実施したアンケートでも、コンプライアンス違反企業への対応方針について、3社に1社(構成比32.4%)が「取引の打ち切りや縮小を検討する」と回答している。業種別で「打ち切りや縮小」に言及した割合が最も高かったのは「自動車整備業」の56.0%だった。以下、「不動産取引業」の54.0%、「保険業」と「電気業」がそれぞれ50.0%と続く。まさに渦中の業界で、影響の波及を恐れて自社のコンプライアンス遵守を示したい企業が多かったとみられる。
 企業のコンプライアンス遵守意識が高まるなか、取引先による「ガバナンス」は適時開示義務のない未上場会社でも一定の効果を上げることが期待される。
 上場企業では株主によるガバナンスが一定程度働くが、未上場企業に対して機能していた「デッドガバナンス」はメインバンク制の衰退とともに鳴りを潜めた。時代の移り変わりのなかで、「取引先ガバナンス」の重要性が高まっている。


ビッグモーターに立入検査に入る金融庁職員(9月)
ビッグモーターに立入検査に入る金融庁職員(9月)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「建設コンサルタント」 の業績拡大 ~ 災害対策や老朽化修繕など、安全対策が寄与 ~

2025年1月に埼玉県八潮市で発生した下水道管の破損による大規模な道路陥没事故から1年が経過した。事故を機に普段何気なく利用するインフラの老朽化を身近に感じた人も多いだろう。工事を直接担うのは建設会社だがその裏で設計監理する土木工事の「建設コンサルタント」の業績が好調だ

2

  • TSRデータインサイト

病院経営の法人、採算悪化で赤字法人が5割に迫る 収入は微増、利益はコロナ禍から1兆円以上の大幅減

全国で「病院」を経営する6,266法人の直近決算は、約半数にのぼる3,021法人(構成比48.2%)が赤字だったことがわかった。赤字法人率はコロナ禍以降、3年連続で上昇した。

3

  • TSRデータインサイト

2月の「人手不足」倒産 「求人難」が3.3倍に急増 従業員の採用と賃上げで中小企業は苦悩強まる

2026年2月の「人手不足」倒産は47件(前年同月比147.3%増)で、2025年9月の48件以来、5カ月ぶりに40件台に乗せた。2026年1-2月累計は83件(前年同期比45.6%増)で、同期間では調査を開始した2013年以降、最多だった前年の57件を大きく上回り、増勢を強めている。

4

  • TSRデータインサイト

2月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は27件 返済開始の最後のピークを控え、今後増勢の懸念も

2026年2月の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用した企業の倒産は、27件(前年同月比18.1%減)で、2カ月連続で前年同月を下回った。

5

  • TSRデータインサイト

2月の「税金滞納」倒産は10件、3カ月ぶりに減少 10件すべて破産、税金滞納が経営再建の障害に

2026年2月の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、10件(前年同月比33.3%減)だった。3カ月ぶりに前年同月を下回り、2月としては2年連続で減少した。

TOPへ