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2024年全国の“周年企業” 100周年は2,519社 100年超は4万5,189社、最長は1000周年が1社

 2024年は辰年。活力旺盛な年に「朱宮神仏具店」(山梨県)が全国で唯一、創業1000周年(1024年創業)を迎える。また、創業100周年(1924年創業)は2,519社確認され、空調機のダイキン工業や紙商社の国際紙パルプ商事、菓子メーカーのブルボン、産業用機械メーカーの前川製作所など、業界を代表する名門企業が並ぶ。2024年に創業100年を超える企業は、全国で4万5,189社を数える。

 第1回冬季オリンピックがフランスで開催された1924年。現在の阪神甲子園球場が完成し、囲碁の日本棋院も創立された。だが、世相は第一次世界大戦後の不況に加え、前年に関東大震災が発生するなど、厳しい年だった。さらに、第二次世界大戦や度重なる不況、未曾有の災害を乗り越えて創業100年以上の老舗企業は2024年に4万5,189社に達する。

 1000周年に次いで、1624年創業の400周年も8社判明。カステラで有名な「福砂屋」と製造部門の「カステラ本家福砂屋」(長崎)のほか、酒類販売「四方」(東京)などの老舗だ。

 1724年創業の300周年は、結婚式場の「伊勢甚本社」(茨城)や浦霞醸造元の「佐浦」(宮城)など5社。1824年創業の200周年は、建築工事の「大和屋」(埼玉)や鞄販売の「エンドー鞄」(兵庫)など、6社がそれぞれ確認された。
 一方、戦後生まれの創業50周年(1974年創業)は全国で2万2,018社ある。アフラック生命保険やディスカウント店のトライアルカンパニー、三井ホーム、ハウスメイトパートナーズ、東建コーポレーション、ゴールドマン・サックス証券、コスモスイニシア、大阪いずみ市民(生協)などが2024年に50周年を迎える。

※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約330万社)から、2024年に創業(創立)100周年などの「周年」を迎える企業(個人企業・各種法人を含む)を抽出し、分析した。50周年以外は、100年単位でまとめた。



主な100周年 売上上位企業

周年企業 100周年は2,519社

 2024年に周年(50周年および100年単位)を迎える企業は、全国で2万4,557社ある。
 最古の周年企業は、1024(万寿1)年創業の朱宮神仏具店(山梨)で1000周年を迎える。同社によると、京都で神仏具製造を始め、1880(明治13)年に甲府で神仏具販売に携わり、1000年の歴史を紡いできた。
 400周年は、「福砂屋のカステラ」の福砂屋(長崎)と製造部門のカステラ本家福砂屋(長崎)のほか、シングルモルトや輸入ワイン、地酒など幅広い酒類販売を手掛ける四方(東京)など、8社がある。
 300周年は、ブライダルなど伊勢甚本社(茨城)、酒造の佐浦(宮城)、紙製品販売の紙の杉山(香川)、玩具の増田屋コーポレーション(東京)、日本酒蔵の奥羽自慢(山形)の5社。
 200周年は、建築工事の大和屋(埼玉)、鞄のエンドー鞄(兵庫)、事務機器の荒惣(新潟)、印刷などの少國民社(山梨)、屋根工事のキクスイルーフ(徳島)、日本酒造の八幡川酒造(広島)など。

周年企業数

産業別周年企業 最多は100周年が製造業、50周年は建設業

 周年企業の産業別では、創業50周年は建設業が8,051社(構成比36.5%)が最多。次いで、サービス業他4,152社(同18.8%)、製造業2,657社(同12.0%)の順。
 100周年の最多は、製造業の593社(同23.5%)で、小売業の491社(同19.4%)、卸売業の488社(同19.3%)、建設業の402社(同15.9%)と続く。
 200周年は、建設業と製造業、卸売業が各2社(同33.3%)、300周年は製造業と卸売業が各2社(同40.0%)など、400周年はサービス業他の5社(同62.5%)ほか。1000周年は小売業の1社だった。

地区別 100周年は関東が最多

 地区別では、50周年は関東の7,640社(構成比34.7%)が最多。次いで、近畿が3,195社(同14.5%)、中部が2,875社(同13.0%)と続く。
 100周年も最多は、関東の1,003社(同39.8%)だった。次いで、近畿の436社(同17.3%)、中部が374社(同14.8%)の順。
 都道府県別では、50周年は東京都が2,707社(同12.2%)、大阪府が1,536社(同6.9%)と続く。100周年も、東京都529社(同21.0%)が最多で、大阪府222社(同8.8%)、愛知県150社(同5.9%)、神奈川県134社(同5.3%)の順だった。

都道府県別 周年企業数

創業100年超の老舗企業 2024年は全国で4万5,189社

 2024年の創業100年超の老舗企業は、100周年を迎える2,519社を含め、4万5,189社にのぼる。宗教法人などを除く最古は、現存する企業では世界最古といわれる578年創業で、社寺建築を手がける金剛組(大阪)が業歴1446年でダントツの輝きをみせる。
 次いで、587年創業の華道「池坊」の池坊華道会(京都)、705年に開湯された世界最古の宿とギネスに認定された西山温泉慶雲館(山梨)、717年創業の温泉旅館の古まん(兵庫)、718年創業の旅館の善吾楼(石川)と温泉宿が続く。業歴1000年を超える企業は新たに朱宮神仏具店が加わり、8社に増える。


 2024年に周年を迎える企業は、多くの困難を克服し事業承継や業態変更などで柔軟に対応してきた模範の企業だ。急成長企業や優良企業も、業歴は毎年1年ずつしか重ねることができない。それだけに50周年、100周年の大きな壁を乗り越えないと迎えることは難しい。

 50周年は2万2,018社だが、60周年は半分の1万1,867社、70周年は1万60社と減少し、第二次世界大戦中に創業した80周年は1,280社と一気に社数が少なくなる。
 業歴100年超の4万5,189社は二度にわたる世界大戦、不況、関東大震災、オイルショック、バブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナウイルス、物価高騰など、100年に一度の歴史的な不況や災害を乗り越えてきた老舗企業だ。さらに、事業承継や事業展開など多くの問題を解決し、名実ともに「老舗企業」を名乗ることができている。
 2023年は、コロナ禍がようやく落ち着き、経済活動も活発化したが、円安や物価高、人手不足などの問題が顕在化した1年だった。2024年は、100周年など新たな周年企業を主役に、日本経済が飛翔する年になることを祈りたい。

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