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11月の飲食料品の値上げ公表は14社、795品目 円安が理由の値上げ 品目数の約7割まで上昇

主要飲食料品メーカー200社の「価格改定・値上げ」調査


 円安や原材料の高騰を起因とする値上げが深刻化している。11月に値上げが判明した品目数は795品で、このうち533品(構成比67.0%)が円安や世界的な原材料高騰・調達難による値上げだった。
 また、11月に値上げを公表した社数は14社で、このうち10社(構成比71.4%)が円安、輸入原材料の高騰を理由にあげた。ドル円相場は夏場以降も、一時150円台をつける円安基調で推移。輸入原材料の高騰を招く円安は、当面続くとみられることから、値上げ等の店頭価格への影響は年明け以降も続きそうだ。
 東京商工リサーチ(TSR)は国内の主要飲食料品メーカー200社を対象に、2023年1月以降の価格改定(値上げ)商品を定点観測している。2023年1月以降の出荷・納品分の値上げ(見込みを含む)が公表された商品は、2023年分は3万2,159品に達し、2024年分も960品が判明している。
 飲食料品の価格改定は、ハム・ソーセージ、だし類などで1年に2回以上の価格改定が行われた商品もあり、メーカー各社は物価上昇の対応を迫られている。年初から春は、国内外の「原材料の不足感」から来る値上げが大半だった。円安による値上げは6月(公表ベース、品目数)の8.4%を底に低い水準で推移していたが、8月以降は9月を除き40%を超える水準に上昇。11月分は67.0%と初めて半分以上を占めた。政府による輸入売渡価格が引き下げられた小麦を除き、果物やオリーブオイル、牛の飼料など、あらゆる輸入原料の価格が高騰しており、家計に与える影響は当面厳しい展開が続きそうだ。

※本調査は、国内の主な飲食料品メーカー200社を対象に、2023年1月1日以降出荷・納品分で値上げを表明した商品を開示資料等を基に集計した。本調査の実施は2023年10月に続き11回目。1回の値上げで複数商品の値上げが行われる場合、値上げ幅は平均値を集計した。値上げ、価格改定は、2023年11月29日公表分まで。



【値上げ理由別】原材料高騰がトップ

 2023年1—11月の値上げ対象の3万2,159品の理由別は、「原材料」が2万9,995品(構成比93.2%)でトップ。次いで「資源・燃料」が2万6,446品(同82.2%)、「物流」2万1,231品(同66.0%)と続く。
 原材料は、飼料価格の急騰でバター類を12月に乳製品大手・中堅が各社値上げを行う。円安の長期化による影響も深刻化し、「為替」の構成比は13.0%と前月(12.6%)から0.4ポイント上昇、3カ月連続で拡大している。「為替」を要因とする値上げは、今後も増加するとみられる。




【海外・為替要因の値上げ割合】急激な円安進行で夏場以降、高水準で推移

 円安や海外からの調達コスト上昇(飼料含む)を主要因とした値上げの割合は8月以降、上昇している。11月判明分では、社数の71.4%、品目数の67.0%と、ともに半数を超えた。
 1月はロシアのウクライナ侵攻による世界的な流通コストの上昇や小麦価格の上昇が大半を占めたが、ドル円相場が1ドル=145円台を付けた8月中旬以降、国内の原材料調達や物流コスト以上に、海外からのコスト高を要因とした値上げが深刻化。具体的な品目では、オリーブやごまなどの食用油原料、乳製品の生産に係る飼料、調味料の原料となるトマトやジュースに使用する果実類など、食卓に身近な原料の調達コストの増加が顕著となっている。



 

【分類別】「調味料」がトップの9,000品超、輸入品で調達コスト増

 2023年値上げ分の3万2,159品の分類別では、最多は調味料(9,327品、構成比29.0%)で、約3割を占めた。調味料は、ドレッシングや業務用スープ類に加え、原材料を輸入品に頼る中華調味料、香辛料などが目立つ。2024年もトマトの輸入コストの上昇でケチャップやパスタソースの値上げが2月以降に予定されている。
 次いで、加工食品(8,002品、同24.8%)、飲料・酒(5,760品、同17.9%)が続いた。飲料・酒は、来春には一部の洋酒で輸送費の増加や現地メーカーからの引き渡し価格の変更に伴う値上げも行われ、同業各社が追随する可能性もある。



 主要飲食料品メーカー200社が公表した2023年の出荷・納品分の価格改定は、3万2,159品に達した。2024年実施分もすでに960品が判明している。ただ、これまでの値上げがひと息つき、実施ペースは11月・12月と1,000品を下回る水準で落ち着いている。
 一方、海外からの調達コスト(飼料含む)や円安を主要因とした値上げは、11月に公表した14社中、10社(構成比71.4%)、品目数では795品中、533品(同67.0%)まで拡大した。為替変動による価格転嫁は、メーカー各社の対応に委ねられており、海外からの調達コスト上昇を要因とした値上げは2024年も高い割合で推移しそうだ。また、商品パッケージに係る包材や資材も輸入原料やエネルギー価格が上昇しており、2023年に価格改定された商品の再値上げもありそうだ。



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