• TSRデータインサイト

「ゼロゼロ融資」利用後の倒産 2023年10月は51件 6カ月連続で50件超、累計1,130件に達する

2023年10月「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


 2023年10月の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を利用後の倒産は、51件(前年同月比15.0%減)で、初めて前年同月を下回った。ただ、2023年5月以来、6カ月連続で50件超が続き、依然として高水準で推移している。初めて倒産が確認された2020年7月からの累計件数は、1,130件に達した。
 ゼロゼロ融資は、コロナ禍で中小・零細企業の資金繰りを一時的に緩和した。しかし、副作用として過剰債務を抱えた企業が増加した。会計検査院の2022年度決算検査報告によると、政府系金融機関のゼロゼロ融資などの「新型コロナ特別貸付」で、償却・条件変更中・延滞などの合計が7万2,863件と、全体の6.1%だった。民間金融機関分の返済もピークを迎えるなか、さらなる増加が懸念される。

 2023年10月の産業別は、飲食店(10件)を含むサービス業他が最多の19件(前年同月比5.5%増)で、全体の約4割(構成比37.2%)を占めた。コロナ関連支援の効果が薄れたところに材料や光熱費の高騰、人件費の上昇が追い打ちをかけた。
 負債額別では、負債1億円未満が31件(同60.7%)で、構成比は前年同月(同53.3%)より7.4ポイント上昇した。価格交渉で弱い立場に置かれがちな小・零細企業にとって、これまでの業績不振に加えて、コスト上昇分を価格転嫁することは容易ではなく、倒産増加を鮮明にした。

 全国信用保証協会連合会によると、企業の借入返済を信用保証協会が肩代わりする代位弁済数は、2021年9月以降、25カ月連続で前年同月を上回り、2023年1-9月累計は3万247件に達した。代位弁済の増加は、資金繰りが悪化している企業の多さを示していて、年末にかけて資金需要が高まるなか、小・零細企業を中心に倒産のさらなる増加が見込まれる。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2023年10月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は51件、6カ月連続で50件超

 2023年10月の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は51件(前年同月比15.0%減)だった。最初に倒産が確認された2020年7月以来、初めて前年同月を下回ったが、6カ月連続で50件超と高水準での推移が続く。
 負債総額は、145億5,700万円(前年同月比89.1%増)で、前年同月を大きく上回った。

ゼロゼロ融資利用後の倒産月次推移

【産業別】サービス業他が約4割

 産業別では、飲食店(10件)や医療・福祉サービス等を含むサービス業他が19件(前年同月比5.5%増)で最多、全体の約4割(構成比37.2%)を占めた。
 次いで、建設業11件(前年同月比22.2%増)、卸売業8件(同33.3%減)、小売業6件(同14.2%減)、製造業5件(同44.4%減)、運輸業(同75.0%減)と情報通信業(前年同月ゼロ)が各1件。農・林・漁・鉱業(同ゼロ)と金融・保険業(同ゼロ)、不動産業(同1件)は発生しなかった。
 10産業のうち、3産業で増加、5産業で減少、2産業で横ばいだった。

産業別状況(10月)

【業種別】飲食店が唯一の10件超え

 業種分類別(中分類)では、「飲食店」が10件で最も多く、唯一の二桁台だった。客足の戻りが鈍いなか、材料費や光熱費、人件費の上昇が追い打ちをかけた。飲食関連では、「飲食料品卸売業」も3件で3番目に多かった。
 このほか、「繊維・衣服等卸売業」が3件、「織物・衣服・身の回り品小売業」が2件で、アパレル関連業種も目立った。消費志向の変化に加え、円安の影響を受けた輸入品を中心に仕入コストの上昇が響いた。

業種分類別倒産状況(10月)

【形態別】倒産51件のうち、50件が破産

 形態別の最多は、破産が50件(前年同月比3.8%減)で、ほぼ全体にあたる98.0%を占めた。 
 このほか、再建型の民事再生法が1件(前年同月ゼロ)発生した。
 特別清算(同3件)と取引停止処分(同5件)は発生しなかった。


【従業員数別】5人未満が約6割

 従業員数別の最多は、5人未満の30件(前年同月比3.2%減)で、約6割(構成比58.8%)を占めた。次いで、5人以上10人未満12件(前年同月比7.6%減)、10人以上20人未満(同53.8%減)が続く。
 10人未満の小規模倒産は42件で、8割超(構成比82.3%、前年同月73.3%)を占めた。倒産の小規模化を映し出した。


【地区別】9地区全てで発生

 地区別では、最多は関東の23件(前年同月比35.2%増)。次いで、九州7件(同46.1%減)、東北6件(同57.1%減)、中部(前年同月同数)と中国(前年同月比33.3%増)が各4件、北海道(同33.3%減)と近畿(同60.0%減)、四国(同100.0%増)が各2件、北陸1件(前年同月ゼロ)が続く。9地区全てで発生した。
 都道府県別では、東京都が13件で最も多く、唯一の10件台。以下、福岡県5件、宮城県と静岡県が各4件、 群馬県と埼玉県が各3件で続く。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年1-6月「負債1,000万円未満」倒産 261件 2010年以降で3番目の高水準「破産」が約98%

2024年上半期(1‐6月)の全国企業倒産(負債1,000万円以上)は4,931件で、年間1万件を超えるペースで増勢をたどっている。また、負債1,000万円未満の小規模倒産も261件(前年同期比6.9%増)で、2010年以降では3番目の高水準となった。

2

  • TSRデータインサイト

2024年上半期「バー」「キャバクラ」等の倒産47件 過去10年で最多、コロナ禍と物価高で変わる夜の街

コロナ禍が落ち着き、街にはインバウンド需要で外国人観光客が増え、人出が戻ってきた。だが、通い慣れたお店のドアは馴染み客には重いようだ。2024年上半期(1-6月)の「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の倒産は、過去10年間で最多の47件(前年同期比161.1%増)に急増した。

3

  • TSRデータインサイト

上半期の「飲食業倒産」、過去最多の493件 淘汰が加速し、「バー・キャバレー」「すし店」は2倍に

飲食業の倒産が増勢を強めている。2024年上半期(1-6月)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は493件(前年同期比16.2%増、前年同期424件)で、2年連続で過去最多を更新した。現在のペースで推移すると、年間では初めて1,000件超えとなる可能性も出てきた。

4

  • TSRデータインサイト

2023年の「個人情報漏えい・紛失事故」が年間最多 件数175件、流出・紛失情報も最多の4,090万人分

2023年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は、175件(前年比6.0%増)だった。漏えいした個人情報は前年(592万7,057人分)の約7倍の4,090万8,718人分(同590.2%増)と大幅に増えた。社数は147社で、前年から3社減少し、過去2番目だった。

5

  • TSRデータインサイト

「想定為替レート」 平均は1ドル=143.5円 3期連続で最安値を更新

株式上場する主要メーカー109社の2024年度決算(2025年3月期)の期首の対ドル想定為替レートは、1ドル=145円が54社(構成比49.5%)と約半数にのぼることがわかった。 平均値は1ドル=143.5円で、前期から14.5円の円安設定だった。期首レートでは2023年3月期決算から3期連続で最安値を更新した。

TOPへ