• TSRデータインサイト

10月の負債1,000万円未満の倒産は47件 すべてが破産で、6カ月連続で前年同月を上回る

2023年10月「負債1,000万円未満」倒産状況


 2023年10月の負債1,000万円未満の企業倒産は、47件(前年同月比30.5%増)で、5月から6カ月連続で前年同月を上回った。また、10月では3年ぶりに前年同月を上回り、2009年以降の15年間では、2010年の52件に次いで3番目の多さとなった。
 企業倒産は負債1,000万円以上も793件(同33.0%増)と増加し、企業規模を問わず増勢を強めている。なお、 「新型コロナ」関連倒産は、13件(前年同月9件)発生した。 

 産業別では、最多がサービス業他の28件(前年同月比33.3%増)。次いで、卸売業5件(同16.6%減)、建設業4件(同±0.0%)と続く。
 原因別は、販売不振が34件(同78.9%増)と7割(構成比72.3%)を占め、小・零細企業の業績回復の遅れが倒産に繋がりつつある。
 資本金別は、1千万円未満(個人企業他を含む)が44件(前年同月比33.3%増)で、9割以上(構成比93.6%)になった。
 形態別は、47件すべてが消滅型の「破産」だった。負債1,000万円未満の倒産がすべて「破産」になるのは7月以来で、今年6度目。

 負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業が中心で、人的・資金的に制約がある。業績回復が遅れ、過剰債務を抱えるなかで経営再建は難しく、事業継続をあきらめるケースが多い。
 実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が始まっているが、物価高や人手確保のための人件費上昇などコストアップが資金繰りに大きな負担となっている。政府は、借換え融資や資本性劣後ローン、REVICの活用などの支援策を打ち出すが、実際は経営再建の可能性のある企業が対象になっている。このため、小・零細企業はこうした支援の恩恵をなかなか享受できないのが実情で、細やかな支援策が必要だ。

※本調査は、2023年10月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


10月の倒産47件、10月では3年ぶりに前年同月を上回る

 2023年10月の負債1,000万円未満の倒産は47件(前年同月比30.5%増)で、10月では3年ぶりに前年同月を上回った。
 負債1,000万円未満は2023年5月より6カ月連続で前年同月を上回り、同1,000万円以上も2022年4月より19カ月連続で前年同月を上回っていて、負債の規模に関わらず、企業倒産は増勢を強めている。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格化するなか、物価高や人件費上昇などのコストアップも強まり、資金負担が重く圧し掛かっている。
 負債1,000万円未満の1-10月の累計件数は394件(前年同期比17.6%増、前年同期335件)と、11月には前年の年間件数(410件)を超える可能性が高い。

負債1,000万円未満の倒産 件数推移

【産業別】最多がサービス業他で、約6割を占める

 産業別は、最多がサービス業他の28件(前年同月比33.3%増)で、10月では3年ぶりに前年同月を上回った。構成比は59.5%(前年同月58.3%)だった。
 このほか、小売業が3件(前年同月比50.0%増)で、4年ぶりに前年同月を上回った。また、前年同月ゼロだった農・林・漁・鉱業が3件で3年ぶり、製造業3件と運輸業1件が2年ぶりに、それぞれ発生した。
 一方、卸売業が5件(同16.6%減)で、3年ぶりに前年同月を下回った。また、金融・保険業(前年同月1件)が2年ぶり、情報通信業(同2件)が2009年以降の15年間で初めて、それぞれ発生がなかった。建設業は前年同月と同件数の4件、不動産業は2年連続で発生がなかった。
 
 業種別では、持ち帰り飲食サービス業(前年同月ゼロ)と訪問介護事業(同2件)が各3件、野菜作農業(同ゼロ)、土木工事業(同1件)、経営コンサルタント業(同1件)が各2件。花き作農業、舗装工事業、複合肥料製造業、娯楽用具・がん具製造業、一般貨物自動車運送業、食肉卸売業、酒類卸売業、婦人服小売業、洋品雑貨・小間物小売業、荒物小売業、広告業、すし店、エステティック業、フィットネスクラブ、スポーツ・健康教授業、看護業、職業紹介業、警備業などが各1件で、前年同月を上回った。

「負債1,000万円未満」倒産 産業別(10月)

【形態別】3カ月ぶりにすべてが消滅型の破産

 形態別では、47件すべてが「破産」だった。すべてが破産なのは、2023年に入り、1月、2月、5月、6月、7月に次いで、6度目。
 10月としては、2年連続で破産が100.0%だった。
 負債1,000万円未満の倒産はほとんどが小・零細企業のため、人的・資金的な面で制約があり、経営再建よりも事業継続を断念して破産を選択せざるを得ない。
 一方、再建型の民事再生法は2年連続、会社更生法は2009年以降の15年間では、それぞれ発生がなかった。
 また、特別清算は2年連続、取引停止処分は6年連続で、それぞれゼロだった。

【原因別】販売不振が7割超

 原因別は、最多が「販売不振」の34件(前年同月比78.9%増)で、10月では3年ぶりに前年同月を上回った。構成比は72.3%(前年同月52.7%)だった。
 このほか、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が2件、代表者の病気や死亡を含む「その他」が3件で、それぞれ前年同月と同件数だった。
 一方、「事業上の失敗」(前年同月比20.0%減)と「他社倒産の余波」(同33.3%減)が各4件で、3年ぶりに前年同月を下回った。
 また、「信用性低下」(前年同月1件)が、2年ぶりに発生しなかった。
 負債1,000万円未満の倒産は、ほとんどが小・零細企業で、一度、販売不振に陥ると、その状況から抜け出すことが難しい。

【資本金別】1百万円以上5百万円未満が4割超

 資本金別は、最多が「1百万円以上5百万円未満」の21件(前年同月比5.0%増)で、構成比は44.6%(前年同月55.5%)だった。以下、「個人企業他」の11件(前年同月比83.3%増)、「1百万円未満」の8件(同166.6%増)、「5百万円以上1千万円未満」の4件(同±0.0%)の順。
 1千万円未満は、44件(同33.3%増)で、10月では3年ぶりに前年同月を上回った。構成比は93.6%で、前年同月(91.6%)より2.0ポイント上昇した。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が前年同月と同件数の3件だった。
 また、「5千万円以上1億円未満」が2年連続、「1億円以上」が2009年以降の15年間では、それぞれ発生がなかった。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年1-6月「負債1,000万円未満」倒産 261件 2010年以降で3番目の高水準「破産」が約98%

2024年上半期(1‐6月)の全国企業倒産(負債1,000万円以上)は4,931件で、年間1万件を超えるペースで増勢をたどっている。また、負債1,000万円未満の小規模倒産も261件(前年同期比6.9%増)で、2010年以降では3番目の高水準となった。

2

  • TSRデータインサイト

2024年上半期「バー」「キャバクラ」等の倒産47件 過去10年で最多、コロナ禍と物価高で変わる夜の街

コロナ禍が落ち着き、街にはインバウンド需要で外国人観光客が増え、人出が戻ってきた。だが、通い慣れたお店のドアは馴染み客には重いようだ。2024年上半期(1-6月)の「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の倒産は、過去10年間で最多の47件(前年同期比161.1%増)に急増した。

3

  • TSRデータインサイト

上半期の「飲食業倒産」、過去最多の493件 淘汰が加速し、「バー・キャバレー」「すし店」は2倍に

飲食業の倒産が増勢を強めている。2024年上半期(1-6月)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は493件(前年同期比16.2%増、前年同期424件)で、2年連続で過去最多を更新した。現在のペースで推移すると、年間では初めて1,000件超えとなる可能性も出てきた。

4

  • TSRデータインサイト

2023年の「個人情報漏えい・紛失事故」が年間最多 件数175件、流出・紛失情報も最多の4,090万人分

2023年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は、175件(前年比6.0%増)だった。漏えいした個人情報は前年(592万7,057人分)の約7倍の4,090万8,718人分(同590.2%増)と大幅に増えた。社数は147社で、前年から3社減少し、過去2番目だった。

5

  • TSRデータインサイト

「想定為替レート」 平均は1ドル=143.5円 3期連続で最安値を更新

株式上場する主要メーカー109社の2024年度決算(2025年3月期)の期首の対ドル想定為替レートは、1ドル=145円が54社(構成比49.5%)と約半数にのぼることがわかった。 平均値は1ドル=143.5円で、前期から14.5円の円安設定だった。期首レートでは2023年3月期決算から3期連続で最安値を更新した。

TOPへ