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「新型コロナウイルス」関連破たん状況【10月31日現在】

 10月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)が259件判明、全国で累計7,531件(倒産7,328件、弁護士一任・準備中203件)となった。件数は2022年に入って増勢を強め、2022年の年間件数は前年(1,718件)から3割増の2,282件にのぼった。2023年に入っても増勢推移は続き、3月はそれまでの最多を大幅に更新する328件を記録。その後、一進一退で推移しながらも10月は259件発生した。
 倒産集計の対象外となる負債1,000万円未満の小規模倒産は累計367件判明した。この結果、負債1,000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破たんは累計で7,898件に達した。
 国内の企業数(358万9,333社、2016年総務省「経済センサス」)を基にした比率では、コロナ破たん率は0.220%で500社に1社が破たんした計算となる。都道府県別で最も比率が高いのは東京都の0.384%、次いで宮城県の0.322%、福岡県の0.316%、大阪府の0.282%、富山県の0.262%。一方、最低は鳥取県と高知県の0.099%で、地域によってばらつきもある。
 全体の倒産件数が増勢傾向を強めるなか、コロナ関連融資を利用した多くの企業が返済開始を迎えている。ただ、経営回復が進まない企業は、返済資金が確保できずに事業継続を断念するケースも増えている。コロナ関連破たんは依然として月間250件前後の高水準で推移しており、引き続き動向が注目される。



コロナ破たん 月別件数(負債額1000万円以上)



【都道府県別】(負債1,000万円以上) ~ 300件以上は7都道府県 ~

 都道府県別では、東京都が1,530件と全体の2割強(構成比20.3%)を占め、突出している。以下、大阪府735件、福岡県401件、愛知県379件、兵庫県330件、神奈川県322件、北海道311件、埼玉県251件と続く。
 300件超えが7都道府県、200件~300件未満が1県、100件~200件未満も11府県に広がっている。一方、10件未満はゼロで、最少は鳥取県の16件だった。


コロナ破たん 都道府県別(負債額1000万円未満含む)



【業種別】(負債1,000万円以上)~最多は飲⾷業の1,219件、建設業、アパレル関連が続く~

 業種別では、コロナ禍での来店客の減少に加え、食材や光熱費高騰の負担も重い飲食業が最多で1,219件に及ぶ。客足は戻っても売上の回復に至らず、経営体力の消耗による破綻や、あきらめ型が多い。

 次いで、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が915件に達した。小売店の休業が影響したアパレル関連(製造、販売)の530件。このほか、飲食業などの不振に引きずられた飲食料品卸売業が305件、食品製造が220件。インバウンドの需要消失や旅行・出張の自粛が影響したホテル,旅館の宿泊業と貨物自動車運送業が同数の209件で、上位を占めている。




【負債額別】(負債1,000万円以上

 負債額が判明した7,475件の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が最多の2,918件(構成比39.0%)、次いで1億円以上5億円未満が2,327件(同31.1%)、5千万円以上1億円未満が1,508件(同20.1%)、5億円以上10億円未満が368件(同4.9%)、10億円以上が354件(同4.7%)の順。
 負債1億円未満が4,426件(同59.2%)と半数以上を占める。一方、100億円以上の大型破たんも22件発生しており、小・零細企業から大企業まで経営破たんが広がっている。



【形態別】(負債1,000万円以上)

 「新型コロナ」関連破たんのうち、倒産した7,328件の形態別では、破産が6,635件(構成比90.5%)で最多。次いで取引停止処分が266件(同3.6%)、民事再生法が231件(同3.1%)、特別清算が168件、内整理が22件、会社更生法が6件と続く。
 「新型コロナ」関連倒産の9割超を消滅型の破産が占め、再建型の会社更生法と民事再生法の合計は1割未満にとどまる。業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺すかたちで脱落するケースが大半。
 先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっている。



【従業員数別】(負債1,000万円以上)

 「新型コロナ」関連破たんのうち、従業員数(正社員)が判明した7,331件の従業員数の合計は6万5,429人にのぼった。平均すると1社あたり約9人となる。
 7,331件の内訳では従業員5人未満が4,374件(構成比59.6%)と、約6割を占めた。次いで、5人以上10人未満が1,399件(同19.0%)、10人以上20人未満が854件(同11.6%)と続き、従業員数が少ない小規模事業者に、新型コロナ破たんが集中している。
 また、従業員50人以上の破たんは2021年上半期(1-6月)で17件、下半期(7-12月)で15件。2022年は上半期で24件に増加し、下半期も31件判明。2023年上半期は27件、下半期は現時点で31件判明し、増加傾向となっている。


コロナ破たん率(負債額1000万円未満含む)

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