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コロナ禍から業績が急回復 「遊園地・テーマパーク運営企業の業績動向」調査

客足回復と値上げや変動価格制などが寄与

 2023年5月、新型コロナの5類感染症への移行により、国内だけでなく、インバウンド需要も回復し、各地の遊園地やテーマパークには客足が戻ってきた。各地の遊園地・テーマパークは、コロナ禍で営業自粛や営業時間の短縮、収容人数の制限、イベントの縮小や延期などで客足が遠のき、2020年度の主要運営企業182社の業績は大幅に落ち込んだ。2021年度もやや売上高は回復したが、2期連続で赤字を計上した。
 2022年度は入場規制が緩和され、入場料の値上げや変動価格制の導入など、客単価をあげる施策で業績が大きく改善し、利益は赤字から抜け出した。

 東京商工リサーチは、国内の主な遊園地・テーマパークを運営する182社の業績を調査した。
 182社の2022年度の売上高合計は7,602億5,100万円(前年比48.7%増)で、売上高は前年度の1.5倍増となった。増収は145社(構成比79.6%)と約8割に達し、利益は134社(判明分)のうち、黒字が102社(同76.1%)と7割超となった。

 2023年7月に東京商工リサーチが実施した「主な遊園地・レジャー施設の価格改定・値上げ調査」では、遊園地の76.1%、テーマパークも52.6%が値上げを実施した。コロナ禍の規制緩和によりインバウンド(訪日外国人観光客数)も増え、売上増が期待される反面、急激な需要回復で従業員不足への対応も急務になっている。

※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(390万社)から、日本産業分類(小分類)「遊園地、テーマパーク経営企業」から、2022年4月期~2023年3月期を最新期とし、3期連続で売上高と当期純利益が比較可能な182社(利益は134社)を抽出し、分析した。



売上高が急回復

 主な遊園地・テーマパークを運営する182社の2022年度の売上高は7,602億5,100万円(前年比48.7%増)で、2年連続で増収となった。
 2022年度はコロナ禍の制限緩和などで、入場者数が戻り、大手テーマパークを中心に売上高が急回復した。
 一方、2022年度の当期純利益は820億2,300万円の黒字(2021年度12億8,100万円の赤字)で、3年ぶりに黒字転換した。

遊園地・テーマパークの業績

約8割が増収

 182社の2022年度の売上高の増減収は、増収は145社(構成比79.6%)と約8割に達し、前年度の117社から大幅に増えた。一方、減収は23社(同12.6%)で、前年度の47社から半減した。
 売上高の伸長率は、「10~100%未満」が107社(構成比58.7%)で最も多く、約6割に達した。以下、「0~5%未満」が26社(同14.2%)「5~10%未満」が18社(同9.8%)の順。また、「100%以上」も6社(同3.2%)あった。

遊園地・テーマパーク 対前年増減収別

遊園地・テーマパーク 売上高伸長率別
 

2022年度は約8割が黒字

 利益が判明した134社の2022年度の最終損益は、黒字が前年度より29社増え102社(構成比76.1%)と、8割近くを占めた。一方、赤字は32社(同23.8%)で、前年より34社減少した。
 黒字企業は、入場者数の増加に加え、直営の食堂、売店などの利用者数が増加。客単価が上昇するなどで利益を上乗せし、黒字を計上した企業が多かった。

遊園地・テーマパーク 損益別
 

売上高トップは(株)オリエンタルランド

 売上高トップは(株)オリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)の4,105億3,200万円(前年比77.7%増)。入場者数の上限引き上げで、2022年度の来場者数は2,208万9,000人(同83.2%増)まで回復。ゲスト一人あたりの売上高は1万5,748円と過去最高水準となった。
 次いで、(株)バンダイナムコアミューズメント(ナムコ・ナンジャタウン)の795億7,900万円(同21.8%増)、富士急行(株)(富士急ハイランド)の225億1,100万円(同10.2%増)の順。

遊園地・テーマパークの売上高ランキング

中国地区が増収率トップ

 地区別では、増収率が高かったのは中国92.3%(社数12社)、四国85.7%(同6社)、近畿84.6%(同22社)、東北81.8%(同9社)、関東80.0%(同37社)で、5地区で増収率が8割を超えた。
 一方、減収率が高かったのは北陸33.3%(同1社)、九州15.6%(同5社)、近畿15.4%(同4社)、四国14.3%(同1社)と続く。

遊園地・テーマパーク 地区別売上高増減


 

  経済産業省が2023年10月10日に発表した2023年8月の特定サービス産業動態統計によると、遊園地・テーマパークの売上高は前年同月比33.9%増の799億円で、増加は22カ月連続となった。コロナ禍の行動制限が解除され、外出機会が増えたことで、入場者数や施設利用料金収入が大幅に伸びた。

 2023年5月の新型コロナ5類移行で、遊園地・テーマパークは通常営業に戻してきたが、まだコロナ禍の影響を完全に払しょくするまでには至らず、売上高はコロナ前の水準には及ばない。
 一方、急激なエネルギー高騰や人手不足に見舞われている。このため、人件費や電気代などの運営コスト上昇を吸収するため、大手テーマパークでは変動価格制を導入し、混雑期の入場料金を値上げしており、客足の復活で売上高の回復を見込んでいる。

 2023年6月、「としまえん」跡地に「ワーナーブラザーズスタジオツアー東京-メイキング・オブ・ハリー・ポッター」がオープンした。明るい話題が続く遊園地・テーマパーク業界だが、その一方で、サービス価格を値上げできない中小の遊園地・テーマパークも多い。大手が積極的なアトラクション開設や設備の拡充に動くなか、集客力に限界を抱える地方の遊園地・テーマパークは、地域の人口減少や少子高齢化で業績の二極化が進んでいる。



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