• TSRデータインサイト

「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」の倒産が6倍に コスト上昇が負担、お好み焼き店は過去最多の9件

~ 2023年度上半期(4-9月)「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店の倒産動向」調査 ~


 老若男女に人気の「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」の倒産が急増している。 2023年度上半期(4-9月)の「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」の倒産は12件(前年同期比500.0%増)で、前年同期の6倍に増えた。年度上半期では、2010年と2014年に並び、2015年の13件に次ぐ過去2番目の高水準となった。このうち、「新型コロナ」関連倒産は年度上半期では過去最多の6件で、「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」倒産の半数(50.0%)を占めた。

 2023年度上半期に倒産した「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」の12件は、すべて資本金が「1千万円未満」、従業員数は「5人未満」で、形態別では「破産」が占めた。コロナの5類移行でインバウンド需要も回復し、街には人が増えたが、客足が戻らない小・零細規模の「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」の苦戦が鮮明になっている。

 通称「粉もん」と言われる「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」に欠かせない小麦や卵などの食材が円安で値上がりし、さらに光熱費など種々のコストアップが利益を圧迫している。コロナ禍で一時的に緩和した人手不足も顕在化し、10月からは最低賃金が全国加重平均1,000円を超える。これまでアルバイトに頼ってきた小規模店舗ほど、人件費上昇やコスト負担が増している。

 東京商工リサーチが2023年4月に実施したアンケートでは、価格転嫁できていない「飲食店」は4社に3社(構成比76.4%)だった。コスト増に歯止めがかからず、適正な価格転嫁も進まなければ、「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」の倒産、廃業が今後も続くことが懸念される。

※本調査は、日本産業分類の「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」の2023年度上半期(4-9月)に発生した倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。


「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」倒産が急増

 2023年度上半期(4-9月)の「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」倒産は12件(前年同期比500.0%増)で、前年同期の6倍に急増した。店舗別では、「お好み焼き屋」が9件と全体の75.0%を占めた。次いで、たこ焼き屋が2件、その他1件で、お好み焼き屋の急増が目立つ。
 コロナ禍の2020年度上半期の「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」倒産は8件だったが、持続化給付金など飲食業へのコロナ関連支援の効果で2年連続で減少、2022年度同期は過去15年間で最少の2件に激減した。しかし、2023年度はコロナ関連支援の縮小・終了に加え、ロシアのウクライナ侵攻や円安などで食材価格が高騰したところに人件費上昇も重なり、倒産が大幅に増えた。
 2023年度上半期の「新型コロナ」関連倒産は6件(前年同期1件)で、「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」倒産に占める構成比は半分を占めた。

お好み焼き・焼きそば・たこ焼き店の倒産 年度上半期推移

原因別 4社に3社が『不況型』倒産

 原因別は、最多が「販売不振」の7件(前年同期比600.0%増、前年同期1件)で、構成比は約6割(58.3%)を占めた。
 以下、「他社倒産の余波」(前年同期1件)と「既往のシワ寄せ」(同1件)が各2件(構成比16.6%)、「その他」が1件(構成比8.3%、前年同期ゼロ)だった。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は9件(前年同期比350.0%増、同2件)で、構成比は75.0%と、「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」倒産の4社に3社を占めた。

2023(令和5)年度上半期 お好み焼き・焼きそば・たこ焼き店 原因別倒産状況

資本金別 すべて「1千万円未満」

 資本金別では、12件すべてが「1千万円未満」だった。内訳は、「個人企業他」(前年同期1件) と「1百万円以上5百万円未満」(前年同期ゼロ)がそれぞれ5件(構成比41.6%)、「5百万円以上1千万円未満」が2件(構成比16.6%、前年同期1件)だった。
 「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」は少資本でも創業できる反面、倒産する企業は経営体力がぜい弱な個人企業を中心とする小・零細規模がほとんどで、コロナ禍での客足減少の影響が長期化している可能性がある。

2023(令和5)年度上半期 お好み焼き・焼きそば・たこ焼き店 資本金別倒産状況

地区別 関東が最多の7件

 地区別では、最多が関東の7件(構成比58.3%、前年同期ゼロ)だった。以下、近畿が4件(同33.3%、同2件)、九州が1件(同8.3%、同ゼロ)の順。関東は、年度上半期として初めて5件を上回り、2010年の4件を超えて過去最多を更新した。
 「お好み焼き・焼きそば・たこ焼店」の倒産は、粉もん文化が定着し、店舗も多い近畿が中心だったが、コロナ禍で様子が変わったのか関東が5年ぶりに近畿を上回った。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「人手不足」企業、69.3%で前年よりも悪化 建設業は8割超が「正社員不足」で対策急務

コロナ禍からの経済活動の再活性化で人手不足が深刻さを増し、「正社員不足」を訴える企業が増加している。特に、2024年問題や少子高齢化による生産年齢人口の減少などが、人手不足に拍車をかけている。

2

  • TSRデータインサイト

「食品業」倒産 2年連続増加の653件 原材料やエネルギー価格、人件費上昇が負担

歴史的な円安が続くなか、歯止めが掛からない食材の価格上昇、人件費などのコストアップが食品業界の経営を圧迫している。2023年度(4-3月)の「食品業」の倒産(負債1,000万円以上)は653件(前年度比16.3%増)で、2年連続で前年度を上回った。

3

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】テックコーポレーションと不自然な割引手形

環境関連機器を開発していた(株)テックコーポレーションが3月18日、広島地裁から破産開始決定を受けた。 直近の決算書(2023年7月期)では負債総額は32億8,741万円だが、破産申立書では約6倍の191億円に膨らむ。 突然の破産の真相を東京商工リサーチが追った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年の「中堅企業」は9,229社 企業支援の枠組み新設で、成長を促進し未来志向へ

東京商工リサーチの企業データベースでは、2024年3月時点で「中堅企業」は9,229社(前年比1.2%増、構成比0.7%)あることがわかった。うち2023年の中小企業が、2024年に「中堅企業」に規模を拡大した企業は399社だった。一方、「中堅企業」から「中小企業」へ規模が縮小した企業も311社みられた。

5

  • TSRデータインサイト

「経営者保証」 75%の企業が「外したい」 保証料率の上昇、金融機関との関係悪化を懸念する声も

資金調達時の経営者(個人)保証について、「外したい」と回答した企業が75.5%にのぼり、経営者保証に拠らない融資へのニーズが大きいことがわかった。ただ、保証料率の上乗せや金融機関との関係悪化を懸念して経営者保証を外すことに慎重な企業も多い。

TOPへ