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利用状況の把握、枠組み作りも重要 ~ 「事業再生ガイドラインのすべて」執筆者インタビュー(後編) ~

―GL運用開始からすでに数十件程度の支援が完了したとの話がある。ほかの準則型私的整理と違って件数把握、公表の仕組みがない

(横田)政府が事例集を作ろうとしていて(※1)それと同時に大まかな利用件数は見えてくるのではないか。金融機関と意見交換すると今年度はより活用されていると聞く。
(小林)中小企業活性化全国本部のある協議会や事業再生実務家協会がある事業再生ADRなどと違い、GLには1つの機関があるわけではないので、統計が取りにくい面はある。今後、利用件数や活用された事例を取りまとめるための関係者の努力が望まれる。

※1 2023年8月30日公表「挑戦する中小企業応援パッケージ」に記載されている

―GLは企業再生税制が使えない

(小林)企業再生税制を適用する前提として、デューデリジェンスや財産調査が必要になり、負担が重くなりすぎる。このため、盛り込んでいない。
(横田)協議会では、企業再生税制の適用を受ける「中小企業再生支援スキーム」(※2)という手続があるが、例年ほとんど活用されていない。GLは協議会同様にいわゆる無税償却が可能(※3)なので、企業再生税制が使えなくとも実務上支障はないものと考えている。

※2 中小企業活性化協議会実施基本要領別冊3
※3 GLQ&A「Q95~98」参照

―一時停止要請(※4)を受けた金融機関の流動性預金のロックについて議論があると聞く

(小林)通常は預金拘束されないと思うが、預金拘束された場合の弊害が大きいので、預金拘束を行わない実務慣行の確立を願っている。対象債権者には、手続き全体において誠実な対応が求められている。預金をロックするというのは、誠実な対応とは言えない。
 また、中小企業サイドから見ても、預金拘束を警戒し、取引先に対し入金口座の変更を要請する等、多くの負担が生じる。信頼関係の下で、流動性預金はそのままに手続きが進むという実務が確立する方が良いだろう。

※4 金融機関への返済ストップ


インタビューに応じる小林弁護士
インタビューに応じる小林弁護士

―債権放棄を伴う抜本再生への協力姿勢は金融機関ごとに大きく異なる

(小林)金融機関によって、慣れているところと慣れていないところは確かにある。初めてGLを使うような場合は、より丁寧な説明も必要になるかもしれない。一方で、GLの考え方は準則型私的整理手続の共通項のようなものであり、個別のみでなく、一般に対して周知し理解してもらうよう活動していくことも重要だろう。
(横田)先ほどの預金拘束に関する議論等、GLを周知していく上で、理論面で詰めるべきところは当然ある。本書を執筆するにあたって、編集委員の先生方を中心に何度も議論を重ね、相当緻密に文言を詰めていった。実務に携わる方々においては、ぜひそういった記載ぶりも参考にして欲しい。



事業会社の在り方についても聞いた (右が横田弁護士)
事業会社の在り方についても聞いた
(右が横田弁護士)

―GLの主な対象である中小、零細企業と会計面で密に接している税理士との連携は

(小林)適切な情報開示によって金融機関との信頼関係が増していくという点で、税理士の理解も重要。税理士は中小企業の経営をよく見ていて、経営者の相談相手としても、弁護士より身近だろう。経理処理の段階で粉飾がわかったら、金融機関との信頼関係のためにも粉飾はやめましょう、あるいは架空在庫が多くなっているなら正しく直しましょうと指導していただく。そうすれば金融機関も中小企業の実力がはっきりわかって、対応がしやすくなる。それは税理士にとっても付加価値がある仕事になるだろう。

―GL普及について、手ごたえは

(小林)過大な債務の処理を必要としている企業の潜在数は多いが、事業再生が急増しているわけではない。だが、事業再生の先送りの弊害について、金融機関や中小企業の理解も徐々に進んでおり、事業再生のニーズは今後顕在化していくのではないか。当然、その中で利用件数も増えていくだろう。

―取引先が私的整理をしていると分かった際、与信に悩む企業は少なくない

(小林)準則型私的整理では、金融機関の債務を止め、資金繰りを十分に考えた上で、基本的に商取引債権については払い続けていこうとしている。なので、取引先は私的整理に入ったということがわかったとしても、すぐに供給を止めるのではなく、引き続きサイトを保って供給していただきたいと思っている。それが企業が再生できる道になる。

―読者に対するメッセージを

(横田)GLを含め、今回のコロナ禍で整備された各種手続きを踏まえ、地域全体で中小企業支援を最大化していくという目線で議論が進んでほしい。協議会がリニューアルして相談件数も非常に増えている状況で、いかにノウハウの共有をしていくのかは重要だ。協議会のトレーニー研修制度(※5)や「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援強化会議」(仮称)の設置など、政府からもノウハウの共有に向けた前向きな支援策も出ている。
 協議会という地域における中小企業支援のハブからノウハウを貰い、それをGLにも活かしていくという相乗効果は期待できるのではないか。各地域において、中小企業支援の最大化のために何ができるのかの議論を活発化させていきたい。
(小林)過大な債務に悩んでいる方は、早めに専門家に相談してほしい。金融機関の姿勢もあって先送りの風潮があるが、社会的にも中小企業自身にもそれはマイナスだ。先送りした結果、チャンスがなくなり再生できなくなることもある。また、協議会やよろず支援拠点(※6)等の公的機関も活用してほしい。

※5 金融機関等の職員に対して再生支援に関するノウハウを提供するための実習やOJTを行う制度
※6 国によって設置された中小企業・小規模中小企業向けの経営相談所



(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年10月13日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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