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港区の6.6人に1人が社長 社長が住む街トップは 「港区赤坂」~ 2023年全国「社長の住む街」調査 ~

 2023年に全国で最も多くの社長が住む街は、前回(2021年調査)に続き、東京都「港区赤坂」だった。港区は日本の政治・経済・文化の中心地で、「六本木」、「南青山」、「芝浦」、「高輪」も上位に入る。港区の人口に占める社長比率は15.1%(前回13.8%)で、住人の6.6人に1人が社長だ。
 市区郡別の20位までに東京23区のうち、18区が入った。東京都以外では、13位に埼玉県川口市、20位に千葉県船橋市、21位に大阪府東大阪市、22位に千葉県市川市、23位に兵庫県西宮市などが上位に入る。都市圏のベッドタウンや中小企業の集積地に社長が多く住んでいる。
 人口減少の一方、東京や大阪など都心部ではタワーマンションの販売が好調だ。コロナ禍前から社長の「職住近接」は進んでおり、今後も若い社長を中心に都心への集中が続くとみられる。
※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約400万社)から、社長(個人企業を含む)の居住地を抽出し、ランキングにまとめた。前回調査は2021年12月発表。
※ 社長居住地の最小単位は「町」ベースで、 「丁目」は区分していない。
※ 同一人物が複数の企業で社長を務めている場合、売上高が大きい企業を採用し、重複企業を集計対象外とした。
※ 人口比社長率の算出に使用した人口は、総務省公表「令和5年住民基本台帳人口(2023年1月1日現在)」に基づく。


全国トップは不動の「港区赤坂」

 全国で社長が住む街のトップは、前回に続き東京都「港区赤坂」で、唯一、4,000人台の4,099人が住んでいる。「赤坂」は都市型の商業施設や繁華街がある一方、高級マンションが建ち並ぶ閑静な住宅地も多い。米国大使館など各国大使館も点在し、大使館員や外資系企業の社員も多い。
 2位は、東京都「新宿区西新宿」の3,395人。世界一の乗降客数を誇るJR新宿駅西側に位置し、都庁など高層ビル群が副都心を形成する。近年はタワーマンション建設が進み、アクセス至便で富裕層の人気を集めている。
 3位は、赤坂に隣接する東京都「港区六本木」の3,241人。ひと昔前に流行した「ヒルズ族」で知られる六本木ヒルズが街のランドマークで、若者に人気の街だ。次いで、4位の東京都「港区南青山」、5位の東京都「渋谷区代々木」まで上位5位の順位は前回と変わらなかった。

2023年 社長の住む街ランキング(町村ベース)

6位以下はベイエリアの追い上げが著しい

 6位には東京都「港区芝浦」が2,871人で、前回8位から浮上した。かつては工場や倉庫が並び、バブル期はディスコが若者を集めたウォーターフロントだったが、再開発で大きく変貌を遂げ、東京湾の夜景を望むタワーマンションやオフィスビルの供給が進んだ。
 臨海都心エリアでは、前回11位の「江東区豊洲」(2,734人)が9位に入った。東京駅や銀座に近く、タワーマンションが林立し、公園や病院、学校、商業施設も充実している。2018年に築地から移転した豊洲市場が注目を集め、交通網の拡充など利便性アップも背景にあるようだ。

100位までに大阪府は2エリア

 東京都以外では、神奈川県の「三浦郡葉山町」が1,496人で、58位(前回57位)に入った。三浦半島の別荘地で、マリンスポーツやゴルフなどを楽しめ、観光客に人気の鎌倉にも近い。
 次いで、大阪府「大阪市西区南堀江」が1,418人で65位(前回70位)。古い街並みと2000年代以降に増加したタワーマンションが混在し、オフィス街にも隣接している。
 87位には、同じく大阪府「大阪市福島区福島」が前回100位から浮上した。大阪都心部の「梅田」に近く、住宅街もあり、近年は高層マンションの建設が相次いでいる。

東京都以外の上位町村

市区郡別 東京都世田谷区が唯一の5万人超でトップを維持

 市区郡別では、トップ10を東京23区が独占した。最多は、東京都「世田谷区」の5万4,262人。前回調査以来、唯一、5万人を超えている。23区では人口、世帯数ともに最多で、91万人超が暮らしている。閑静な住宅地として知られ、高級住宅街の「成城」、「奥沢」、「深沢」の3エリアが町村別の22位から24位に並ぶ。
 2位は東京都「港区」の3万9,516人。人口に占める社長比率は15.1%(前回13.8%)と断トツで、“社長だらけ”の街といえる。高級マンションの供給が続き、町村別でもトップ10に6エリアがランクインしている。
 3位は東京都「渋谷区」が2万9,090人で、前回5位から浮上した。若者の流行の発信地として全国的に知名度が高く、国内外の観光客を集めるが、落ち着いた住宅地も併せ持つ。町村別で5位に入った「代々木」のほか、「広尾」、「恵比寿」、「神宮前」が14位から16位に並ぶ。社長比率は12.6%で、港区に次いで2番目に高い。
 社長比率の3位は、東京都「千代田区」(58位、8,307人)の12.2%だった。皇居を中心に、日本有数のビジネス街「大手町」や「丸の内」、官公庁が集まる「霞が関」があり、正に日本の中枢といえる。社長数は1万人を切るが、人口も67,911人とコンパクトなため、社長比率が高い。

2023年社長の住む街ランキング(市区郡ベース)

東京都以外の社長比率では大阪市が上位に

 東京都以外では、埼玉県「川口市」の2万427人が前回と同じ13位で、初めて20,000人を超えた。首都圏では、20位(前回20位)の千葉県「船橋市」1万4,389人、22位(同21位)の同「市川市」1万4,147人、28位(同28位)の同「松戸市」1万2,523人などで多い。
 首都圏以外では、大阪府「東大阪市」が21位(同22位)、兵庫県「西宮市」が23位(同25位)、鹿児島県「鹿児島市」が24位(同23位)で上位に入った。
 社長比率では、大阪府「大阪市中央区」が8.5%で全国5位。次いで、大阪府「大阪市西区」が6.4%、大阪府「大阪市北区」が6.2%、大阪府「大阪市天王寺区」が6.1%と続く。

東京都以外の上位市区郡

都道府県庁所在地の「社長比率」 東名阪のほか福岡、京都が健闘

 都道府県庁の所在地別で人口に占める社長比率は、企業数と社長数が圧倒的に多い東京23区が5.2%でトップ。なかでも、「港区」15.1%、「渋谷区」12.6%、「千代田区」12.2%が10%超で、この3区は人口の8人に1人以上が社長だ。また、都庁が建つ「新宿区」は8.3%だった。
 次いで、2位に大阪市3.8%、3位に福岡市3.1%(前回4位)、4位に京都市3.05%(同5位)、5位に名古屋市3.04%(同3位)が続き、3位以下は僅差で順位変動が激しい。上位5位までが3%を超えた。
 一方、社長比率が最も低い47位は山口市1.5%、46位は三重県津市の1.74%だった。山口県には下関市、三重県には四日市市など、有力な地銀や大手企業が本社を置く都市が県庁所在地とは別にあり、社長が住む街も分散されたため、社長比率が抑えられたようだ。

社長の住む街ランキング(都道府県庁所在地)


 「社長の住む街」では、閑静な高級住宅地が根強い人気を集める一方、職場や取引先が集まる利便性の高い都心部での「職住近接」も一段と強まっている。グレードの高い居住空間や設備、セキュリティ機能など、富裕層のニーズを背景に、社長数全国1位の東京都「港区」では、「麻布台ヒルズ」や「三田ガーデンヒルズ」など、大規模な高級住宅施設の供給が予定されている。
 コロナ禍で急速にリモートワークが広がったが、アフターコロナに向け職場勤務に再びシフトしている。通勤時間と住環境へのこだわりは各自で異なるが、社長はビジネスの現場で先頭に立ち、指揮を執ることが求められる。このため、住環境を優先する階層と、「職住近接」を志向する階層に二分されながらも、若い社長を中心に都心部への集中が進むとみられる。

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