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コロナ関連破たん 2023年の累計は9月までで2,429件、2022年の年間件数を上回る

 「新型コロナウイルス」関連破たん 【9月29日現在】


 9月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)が234件判明、全国で累計7,272件(倒産7,066件、弁護士一任・準備中206件)となった。件数は2022年に入って増勢を強め、2022年の年間件数は前年(1,718件)から3割増の2,282件にのぼった。
 2023年に入っても増勢推移は続き、3月はそれまでの最多を大幅に更新する328件を記録。以降は300件を下回り、8月は5カ月ぶりに300件と増加した。
 9月は再び234件と減少し今年最少となったが、2023年の累計は9月までで2,429件となり、2022年の年間件数を上回った。

 倒産集計の対象外となる負債1,000万円未満の小規模倒産は累計357件判明した。この結果、負債1,000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破たんは累計で7,629件に達した。
 国内の企業数(358万9,333社、2016年総務省「経済センサス」)を基にした比率では、コロナ破たん率は0.212%で500社に1社が破たんした計算となる。都道府県別で最も比率が高いのは東京都の0.368%、次いで宮城県の0.317%、福岡県の0.304%、大阪府の0.273%、富山県の0.259%。一方、最低は山梨県の0.097%で、地域によってばらつきもある。

 コロナ関連融資の据え置き期間が終了し、多くの利用企業で返済開始の時期を迎えるなかで、返済資金が確保できずに事業継続を断念するケースが増加している。ただ、ここにきて9月は今年最少となる件数を記録し、一進一退が続いている。人手不足や資材価格の高騰など、不透明な事業環境が続くなかで、引き続きコロナ関連破たんの動向が注目される。




【都道府県別】(負債1,000万円以上) ~ 300件以上は6都府県 ~


 都道府県別では、東京都が1,463件と全体の2割強(構成比20.1%)を占め、突出している。以下、大阪府713件、福岡県384件、愛知県361件、兵庫県319件、神奈川県312件、北海道292件、埼玉県245件と続く。
 300件超えが6都府県、200件~300件未満が2道県、100件~200件未満も9府県に広がっている。一方、10件未満はゼロで、最少は鳥取県の16件だった。






【業種別】(負債1,000万円以上)~最多は飲⾷業の1,175件、建設業、アパレル関連が続く~


 業種別では、コロナ禍での来店客の減少に加え、食材や光熱費高騰の負担も重い飲食業が最多で1,175件に及ぶ。客足は戻っても売上の回復に至らず、経営体力の消耗による破綻や、あきらめ型が多い。
 次いで、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が884件に達した。小売店の休業が影響したアパレル関連(製造、販売)の513件。このほか、飲食業などの不振に引きずられた飲食料品卸売業が295件、食品製造が213件。インバウンドの需要消失や旅行・出張の自粛が影響したホテル,旅館の宿泊業が203件と、上位を占めている。



【負債額別】(負債1,000万円以上)


 負債額が判明した7,216件の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が最多の2,813件(構成比38.9%)、次いで1億円以上5億円未満が2,242件(同31.0%)、5千万円以上1億円未満が1,468件(同20.3%)、5億円以上10億円未満が359件(同4.9%)、10億円以上が334件(同4.6%)の順。
 負債1億円未満が4,281件(同59.3%)と半数以上を占める。一方、100億円以上の大型破たんも17件発生しており、小・零細企業から大企業まで経営破たんが広がっている。



【形態別】(負債1,000万円以上)


 「新型コロナ」関連破たんのうち、倒産した7,066件の形態別では、破産が6,400件(構成比90.5%)で最多。次いで取引停止処分が256件(同3.6%)、民事再生法が220件(同3.1%)、特別清算が162件、内整理が22件、会社更生法が6件と続く。
 「新型コロナ」関連倒産の9割超を消滅型の破産が占め、再建型の会社更生法と民事再生法の合計は1割未満にとどまる。業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺すかたちで脱落するケースが大半。
 先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっている。




【従業員数別】(負債1,000万円以上)


 「新型コロナ」関連破たんのうち、従業員数(正社員)が判明した7,060件の従業員数の合計は6万2,318人にのぼった。平均すると1社あたり約9人となる。
 7,060件の内訳では従業員5人未満が4,206件(構成比59.5%)と、約6割を占めた。次いで、5人以上10人未満が1,342件(同19.0%)、10人以上20人未満が833件(同11.7%)と続き、従業員数が少ない小規模事業者に、新型コロナ破たんが集中している。
 また、従業員50人以上の破たんは2021年上半期(1-6月)で17件、下半期(7-12月)で15件。2022年は上半期で24件に増加し、下半期も31件判明。2023年上半期は27件、下半期は現時点で22件判明している。



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