• TSRデータインサイト

食品の値上げが止まらず、子育て世帯に影響必至 秋はチョコ ・ スナック菓子 、「中華まん」も値上げ

~主要飲食料品メーカー200社の「価格改定・値上げ」調査~


 飲食料品は秋に向けても大手各社の値上げが止まらない。今年の主要メーカー200社の値上げは、出荷分だけで3万1,024品にのぼる。年初は、練り物や缶詰、ハム・ソーセージなどの加工食品に加え、醤油、たれ類など、日々の食卓に欠かせない商品が中心だった。8月から10月にかけては日用食品以外に、菓子類の値上げが相次ぎ、子育て世帯の家計への負担増が懸念されている。
 8月から9月は、年間でも最需要期を迎えるアイスキャンディーなど氷菓の値上げが相次ぎ、冬向け商材では「中華まん」や「餅」の値上げがすでに発表され、季節食材も通年で値上げが続いている。


 東京商工リサーチ(TSR)は国内の主要飲食料品メーカー200社を対象に、2023年1月からの出荷・納品分の価格改定(値上げ)される商品を調査した。
 200社のうち、2023年1月以降の出荷・納品分の値上げ(見込みを含む)を公表したのは164社(構成比82.0%)で、対象品目は3万1,024品に達することがわかった。前回調査(7月、3万797品)から1カ月で227品増えた。長引く円安や上昇が続くエネルギー価格も影響し、輸入食材を中心に、メーカー側では自社でのコスト負担に耐えられず、商品の値上げや内容量の削減を余儀なくされている状態だ。

 8月の値上げは27社・949品で、5月(756品)以来、3カ月ぶりに1,000品目を下回った。だが、9月・10月は各月で公表社数が40社を超え、秋の“値上げの波”が押し寄せる。エネルギー価格高騰も重なり、今秋も家計への負担は拡大しそうだ。

※ 本調査は、国内の主な飲食料品メーカー200社を対象に、2023年1月1日以降出荷・納品分で値上げを表明した商品を開示資料等を基に集計した。本調査の実施は2023年7月に続き8回目。1回の値上げで複数商品の値上げが行われる場合の値上げ幅は、平均値を集計した。値上げ、価格改定は、2023年8月30日公表分まで。



【分類別品目数】品目別は「調味料」がトップ

 値上げが公表された3万1,024品の品目別では、最多は調味料(8,673品、構成比27.9%)で、約3割を占めた。調味料は、醤油や味噌のほか、盛夏に需要が高まる麺つゆで各社が値上げを表明していたが、併せて秋冬商材である鍋つゆ類も値上げされ、通年で食卓へ影響が増している。だし原料の煮干し(カタクチイワシ)、カツオ節、サバ節は2022年秋から継続的に品薄傾向で、2023年内も一段の値上げ表明が懸念される。
 次いで、加工食品(7,943品、構成比25.6%)は、今春に値上げが相次いだハム・ソーセージ類が大手・中堅サプライヤー各社で9月~10月に再値上げを表明したことで、品目数を押し上げた。

分類別の品目数(累計)
月別の価格改定品目数(実施日ベース)

【値上げ理由別】「原材料」がトップで9割超

 値上げ対象の3万1,024品の理由別は、「原材料」高騰が2万9,007品(構成比93.4%)でトップ。次いで、「資源・燃料」が2万5,488品(同82.1%)、「物流」が2万424品(同65.8%)、資材・包材が1万9,299品(同62.2%)と続いた。
 原材料に加え、ガソリン価格をはじめとした燃料、電気代などの高騰が飲食料品メーカーに直接の負担になっている。エネルギー価格の高騰は、資材・包材の価格上昇も招き、メーカーには“二重の負担”となっている。
 こうしたコストアップ要因に加え、長引く円安は小麦、乳製品、肉類など輸入原材料に依存するメーカーには値上げ機運を高める要因となる。エネルギー価格や為替の影響は、時間差でメーカーを直撃するため、今秋以降「原材料」「資材・包材」「為替」などの影響が再び商品価格に反映されそうだ。


値上げ理由別(品目数重複あり)



 主要飲食料品メーカー200社が公表した2023年の出荷・納品分の価格改定は、1月から3万1,024品に達した。月別の値上げを実施した社数は、ピークの2月から4月までは3カ月連続で月40社を超え、品目数も同4,000品超で推移した。6月、7月も2カ月連続で45社・3,500品超と高水準だったが、8月は3カ月ぶりに1,000品を下回った。
 だが、9月は2,387品、10月は4,062品と値上げの波が押し寄せている。品目別では、ハム・ソーセージは大手各社が春の値上げに続いて今年2回目の値上げを予定している。さらに、中堅メーカーも遅れて値上げを表明している。

 9月・10月は菓子類の値上げが目立つ。9月は残暑が厳しい環境のなかで、氷菓需要が見込まれる「ガツン、とみかん」(赤城乳業)や、子供向けの「コアラのマーチ」(ロッテ)、10月は「ミルクチョコレート」(明治)、「ひとくちルマンド」(ブルボン)など定番のチョコレート菓子も値上げや内容量の変更が行われる。
 また、新宿中村屋は、肉まんを始めとした中華まんを、サトウ食品、越後製菓などは正月向け鏡餅や切り餅の値上げを相次いで表明している。今冬も飲食料品の値上げが相次ぎ、家計への影響は厳しさを増しそうだ。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ