• TSRデータインサイト

人材関連業(紹介・派遣)の倒産 9年ぶり高水準 強まる売り手市場、小・零細企業は人材不足で逆風

 深刻な人手不足を背景に、人材市場は活況をみせている。だが、その一方で、職業紹介業や人材派遣業の倒産が増加している。2023年1-7月の「職業紹介・労働者派遣業」の倒産は48件(前年同期比50.0%増)に達し、過去10年間では2014年同期に次ぐ、2番目に多い水準となった。このうち、コロナ関連倒産は20件(同81.8%増)で、全体の4割(構成比41.6%)を占めた。

 原因別では、最多は「販売不振」の38件(前年同期比65.2%増)で、全体の約8割(79.1%)を占めた。形態別では、「破産」が97.9%と圧倒的に多い。業績低迷から先行きを見通せずに消滅型の破産を選択せざるを得ない状況がうかがえる。
 また、負債額別は、1億円未満が41件(同78.2%増)で全体の85.4%を占め、小・零細規模の企業を中心に、倒産が増加していることを示している。
 TSR企業データベースで、職業紹介業や人材派遣業の売上高伸長率を資本金別にみると、資本金1億円以上は伸長率5%以上が71.2%に対し、1億円未満は同36.6%と約半分にとどまる。企業規模で売上の伸びに顕著な差があることがわかる。コロナ禍での急激な市場縮小で、企業が人員削減に動き、職業紹介業や人材派遣業の業績は低迷した。コロナ禍もようやく出口が見えてきたが、今度は失った人材が戻らず、人材業界も深刻な「人手不足」により格差が広がっている。
 小・零細規模の職業紹介業や人材派遣業ほど、人材不足が経営の根幹を揺さぶっている。取引先の幅が広く交渉力のある大手は、高度な専門知識の保有者や能力の高い人材を囲い込む。だが、取引先が限られ、経営資源にも制約のある小・零細企業は抜本的な施策がとれず、熾烈な競争からの脱落が相次いでいる。人材市場ではますます売り手市場の勢いが強まるなか、小・零細企業はこれまで以上に淘汰の波にもまれる可能性が高まっている。
※本調査は、負債1千万円以上の倒産集計から日本標準産業分類「91職業紹介・労働者派遣業」の2023年(1-7月)を抽出し、分析した。売上高伸長率は、TSR企業データベースから単体決算で最新期を2022年度(2022年4月期-2023年3月期)とし、3期連続で売上高が比較可能な4,241社を対象とした。


倒産件数は48件 1-7月では9年ぶり高水準

 2023年1-7月の職業紹介・労働者派遣業の倒産は48件(前年同期比50.0%増)と前年同期の1.5倍増と大幅に増えた。内訳は、職業紹介業が8件(同166.6%増)、労働者派遣業が40件(同37.9%増)で、労働者派遣業が全体の83.3%を占める。ただ、職業紹介業も急増しており、2004年以降の過去20年間では最多件数を更新した。

 派遣業では、製造業などへの作業員派遣の倒産が目立つ。コロナ禍による経済活動の停滞や半導体不足などで工業の稼働率が落ち込み、人員抑制の波が直撃したことが主な要因だ。だが、経済活動の再開で需要は戻しても、受注に応える人材確保が進まず、業績を回復できずに資金繰りに行き詰まる企業が多い。

職業紹介・労働者派遣業の倒産推移

2022年度の売上高伸長率 資本金の規模で格差が拡大

 単体決算で最新期を2022年度(2022年4月期-2023年3月期)とし、3期連続で売上比較が可能な4,241社の売上高伸長率を算出した。
 資本金別の売上高伸長率は、伸長率5%以上の構成比は「1億円以上」が71.2%(前期58.6%)で突出している。次いで、「5千万円以上1億円未満」も50.7%(同41.5%)と半数を超えた。
 一方、資本金が小さいほど伸長率5%以上の構成比が縮小し、企業規模で売上高の伸びに顕著な差が出ている。
 人材関連業は、コロナ禍での一時的な市場縮小で業績悪化が目立ったが、ここにきて経済活動の再開による急激な人手不足で、市場は活況を呈している。ただ、その裏側では少子化もあって同業者間の競争は激しさを増している。人材のスキルなどで大手に劣る小・零細企業は、コロナ禍で悪化した業績の立て直しに出遅れ、市場から淘汰されるケースが増えている。

「職業紹介・労働者派遣業」 売上高伸長率別

【原因別】「販売不振」が約8割

 原因別は、最多が「販売不振」の38件(前年同期比65.2%増)で、全体の約8割(79.1%)を占めた。次いで、「事業上の失敗」(前年同期2件)と「他社倒産の余波」(前年同期同数)が各3件、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が2件(前年同期同数)だった。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は、40件(前年同期比60.0%増)で全体の8割(構成比83.3%)を占めた。

原因別倒産状況

【形態別】破産が9割超

 形態別は、破産が47件(前年同期比56.6%増)で、全体の97.9%と大半を占めた。再建型は、民事再生法の1件(前年同期ゼロ)にとどまり、業績低迷から経営を立て直せないまま、消滅型を選択せざるを得ない実態を浮き彫りにしている。

形態別倒産状況

【資本金別】1千万円以上5千万円未満が半数以上

 資本金別は、「1千万円以上5千万円未満」が26件(前年同期比44.4%増)で最多となり、全体の半数以上(構成比54.1%)を占めた。次いで、「1百万円以上5百万円未満」(前年同期比12.5%増)と「5百万円以上1千万円未満」(同80.0%増)が各9件、「1百万円未満」が2件(前年同期ゼロ)で続く。

資本金別倒産状況

【負債額別】1億円未満が41件で8割超

 負債額別は、1億円未満が41件(前年同期比78.2%増)で全体の8割超(構成比85.4%)を占め、小規模倒産が中心だった。内訳は、「1千万円以上5千万円未満」が30件(前年同期比76.4%増)、「5千万円以上1億円未満」が11件(前年同期比83.3%増)だった。
 負債1億円以上は7件(同22.2%減)と減少したが、前年同期に発生がなかった「5億円以上10億円未満」が1件発生した。

負債額別倒産状況


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2023年度の運送業倒産345件に急増 人手不足・燃料高で採算悪化

 2023年度の道路貨物運送業の倒産は、件数が345件(前年度比31.1%増、前年度263件)で、3年連続で前年度を上回った。年度で件数が300件台に乗ったのは2014年度以来9年ぶりとなる。

2

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】テックコーポレーションと不自然な割引手形

環境関連機器を開発していた(株)テックコーポレーションが3月18日、広島地裁から破産開始決定を受けた。 直近の決算書(2023年7月期)では負債総額は32億8,741万円だが、破産申立書では約6倍の191億円に膨らむ。 突然の破産の真相を東京商工リサーチが追った。

3

  • TSRデータインサイト

借入金利「引き上げ」、許容度が上昇 日銀のマイナス金利解除で企業意識に変化

3月19日、日本銀行はマイナス金利解除やイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の撤廃を決めた。マイナス0.1%としてきた短期の政策金利を、0~0.1%へ変更し、利上げに踏み切った。 東京商工リサーチは4月1~8日に企業アンケートを実施し、企業の資金調達への影響を探った。

4

  • TSRデータインサイト

2023年度の飲食業倒産、過去最多を更新し930件に 「宅配・持ち帰り」「ラーメン店」「焼肉店」「居酒屋」が苦境

コロナ禍が落ち着き、人流や訪日外国人も戻ってきたが、飲食業はゼロゼロ融資の返済や食材価格・光熱費の上昇、人手不足などが押し寄せ、コロナ禍前より厳しさを増している。

5

  • TSRデータインサイト

「お花見、歓迎会・懇親会」の開催率29.1% 慣習的な開催は限界? 訪日外国人と仲間うちが活況

新型コロナの5類移行からほぼ1年。今年の桜開花には人が押し寄せ、各地でコロナ前の賑やかなお花見が戻ったように見えたが、実際は様子が異なる。 4月上旬に実施した企業向けアンケート調査で、2024年の「お花見、歓迎会・懇親会」の開催率は29.1%で3割に届かなかった。

TOPへ