• TSRデータインサイト

企業のSNSアカウント、大企業でも半数が「運用せず」 さらに運用企業の3割が「効果得られない」  2023年「企業のSNS運用に関するアンケート」調査

 製品の紹介から採用活動、イメージアップなどで幅広く活用される“ソーシャルネットワークサービス“(SNS)。BtoC業態の企業を中心に活用が広がるが、半数以上の54.8%の企業がSNSを“運用していない”ことがわかった。従業員の多い大企業(資本金1億円以上)でも、半数以上(53.1%)が運用しておらず、運用にかかるリソースやノウハウ不足、運用時のリスクマネジメントも課題になっているようだ。
 東京商工リサーチは8月1日~9日、全国の企業を対象に「自社のSNS運用に関する」アンケート調査を実施した。その結果、全体の54.8%がSNSを「運用していない」と回答した。さらに、SNSを活用している企業でも、約3割(29.3%)が「効果は得られなかった」と回答した。
 販売促進や人材採用など、SNSに取り組む目的は多様だ。だが、SNSはコンテンツそのものが直接売上に直結するツールではなく、メディアごとの特徴も異なるだけに、運用のあり方やリスク対応など企業によって空気感は大きな差がある。

※ 本調査は、2023年8月1日~9日、全国の企業を対象にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答4,947社を集計、分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1.SNSのうち、自社でどのサービスのアカウントを現在、運用していますか?(複数回答)

LINEとFacebookがそれぞれ2割超、「運用していない」も半数


 SNSの用途は年々、広がっている。自社や商品の認知向上、セールスだけでなく、SNSを通じ学生やその保護者らに事業活動や社員の働く様子をPRして新卒採用に活用するなど、多岐にわたる。だが、「運用していない」企業は54.8%(2,715社)と半数を占める。
 活用されているSNSでは、トップは「LINE」で21.7%(1,077社)。僅差で、「Facebook」20.2%(1,004社)、「Instagram」19.6%(973社)が続く。
 従業員数別は、300人以上の企業で「YouTube」29.4%、「Instagram」29.0%が他のレンジに比べ高かった。動画や画像に掛かる編集などのコストは小・零細企業にはリソース面での負担が大きい。こうした費用対効果が不透明な分野への取り組みに消極的な企業は少なくない。





Q2. SNS運営による効果は次のどれですか?(複数回答)

トップは「イメージが向上した」32.2%、一方で29.3%の企業が「効果得られなかった」


 SNSを運営している企業(有効回答数2,044社)に、運営後の効果について訊いた。
 最多は、「会社のイメージが向上した」32.2%(660社)。次いで、「自社の製品・サービスのイメージが向上した」26.7%(547社)、「社員間のコミュニケーションが活発になった」24.5%(501社)と続き、社内外への情報の訴求効果を評価している。
 一方、「従業員採用の応募者が増加した」は7.9%(163社)と1割未満にとどまった。対外的なイメージアップやサービスの認知には、効果を実感できている企業が一定数あった半面、人材採用への効果は限定的だった。
 新卒採用などで業務紹介ツールにSNSを使用する企業も散見される。だが、企業規模を問わず効果は限定的で、同業他社とのコンテンツ制作の差別化は不可避となりそうだ。
 また、「特に効果は得られなかった」が29.3%(599社)と約3割を占めた。業種別は、製造業が26.3%(158社)で最多。次いで、卸売業20.7%(124社)、サービス業他18.7%(112社)、建設業14.6%(88社)と続く。一方、小売業は5.8%(35社)にとどまった。



 自社のSNSアカウントを持ち、運用している企業は45.1%(2,232社)で、半数近くを占めた。ただ、一方で、半数以上(54.8%)の企業はSNSを運用しておらず、大企業でも53.1%(299社)が運用していなかった。業種問わず、SNSで人材採用などの活用が進む一方で、運用について「BtoB企業のため対外発信は限定している」(卸売業)、「ホームページがあるので、SNSを始める必要は感じられない」(製造業)といった声も寄せられた。
 また、効果が明確である企業がある一方で、約3割(29.3%)の企業は「特に効果は得られなかった」と回答しており、SNSでの情報発信の方法を模索している企業は少なくない。
 近年、広がりを見せる企業の公式SNSだが、運用は企業により様々で、菓子、清涼飲料水などの飲食料品製造のBtoC企業では、企業の公式アカウントのほか、商品それぞれに単体のアカウントを設け、キャンペーンや新商品等の告知を行い「ファンづくり」に余念がない。
 ただ、過激な表現やSNS担当者の私情、差別的な発言などの発信による不祥事も後を絶たない。大企業やBtoC業態では、ホームページと複数のSNSの併用もみられる。同時に、PRの場が多岐にわたり、各メディアの特性を生かした効果的な情報発信が求められるが、運用に掛かる編集や管理などへの人的リソースもネックになっている。
 活用が広がると思われるSNSだが、実態は効果を生むノウハウに加え、人員など投入できる経営資源などで、企業の取り組みに大きな格差があることが改めて浮き彫りになった。
 

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

約束手形の決済期限を60日以内に短縮へ 支払いはマイナス影響 約4割、回収では 5割超がプラス影響

これまで120日だった約束手形の決済期限を、60日に短縮する方向で下請法の指導基準が見直される。約60年続く商慣習の変更は、中小企業の資金繰りに大きな転換を迫る。 4月1~8日に企業アンケートを実施し、手形・電子記録債権(でんさい)のサイト短縮の影響を調査した。

2

  • TSRデータインサイト

「早期・希望退職者」募集は年間1万人超ペース 空前の賃上げの裏側で加速する構造改革

4月23日現在、「早期・希望退職者」の募集が判明した国内の上場企業は21社で、前年同期の16社を5社上回った。対象人数(国内)は3,724人(前年同期1,236人)で、前年同期の3倍に達した。すでに2023年(3,161人)の年間実績を563人上回り、構造改革の促進で年間1万人超のペースで推移している。

3

  • TSRデータインサイト

今年の“大型連休” 6割の企業が5連休 大企業の2%が10連休超、中小企業は2割が4連休以下

2023年春のゴールデンウィーク(GW)は何連休? 東京商工リサーチ(TSR)が4月3日から11日に実施したアンケート調査で、最多はカレンダー通りの5連休で全体の6割を占めた。

4

  • TSRデータインサイト

2024年の「中堅企業」は9,229社 企業支援の枠組み新設で、成長を促進し未来志向へ

東京商工リサーチの企業データベースでは、2024年3月時点で「中堅企業」は9,229社(前年比1.2%増、構成比0.7%)あることがわかった。うち2023年の中小企業が、2024年に「中堅企業」に規模を拡大した企業は399社だった。一方、「中堅企業」から「中小企業」へ規模が縮小した企業も311社みられた。

5

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】テックコーポレーションと不自然な割引手形

環境関連機器を開発していた(株)テックコーポレーションが3月18日、広島地裁から破産開始決定を受けた。 直近の決算書(2023年7月期)では負債総額は32億8,741万円だが、破産申立書では約6倍の191億円に膨らむ。 突然の破産の真相を東京商工リサーチが追った。

TOPへ