• TSRデータインサイト

コロナ禍の「影響継続」は過去最低、販売先の廃業で51.7%が「売上減」 ~ 2023年8月「経営環境に関するアンケート」調査 ~

 新型コロナウイルス感染拡大の企業活動への影響について、「継続している」と回答した企業は34.4%で、2020年8月以降では最低となった。しかし、今年7月の売上高が「コロナ禍前(2019年)以上」の企業は50.0%と半数にとどまる。また、コロナ禍で取引先の廃業を37.5%の企業が経験し、このうち約3割の企業では焦付も生じている。新型コロナの分類が「5類」に移行し、インバウンド需要も活性化してきたが、コロナ禍以前の業績に戻すのは容易ではないようだ。
 今回のアンケートでは、新型コロナ以外の経営環境についても聞いた。
 経営者の年齢が年々上昇し、コロナ禍後の事業承継や円滑な廃業も注目されるが、直近1年間で取引先が廃業した企業は37.5%に達した。「仕入先(外注先)の廃業」を経験した企業のうち、46.4%は代替の新規取引先を開拓している。廃業企業との関係性にもよるが、仕入先(外注先)の廃業は発注側の業務プロセスに影響を与え、取引に新たなコスト負担も生じる。4割近い企業が取引先の廃業に直面しており、すでに本格的な「廃業時代」が到来している。企業のサプライチェーン維持に向けた取り組みは、緊急課題でもある。
 また、販売先(得意先)の廃業」を経験した企業のうち、51.7%が売上減に直面し、28.2%で焦付が生じている。廃業は「販売機会の喪失」が大きいが、焦付が生じるケースも少なくないことがわかった。取引先管理は、倒産だけでなく廃業まで視野に入れることが必要になっている。
 ※本調査は8月1日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施。有効回答5,940社を集計分析した。
 ※前回(第28回)調査は、2023年6月21日公表(調査期間:2023年6月1日~8日)。
 ※資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義した。

Q1.新型コロナウイルスの発生は、企業活動に影響を及ぼしていますか?(択一回答)

「影響が継続」は34.4%、過去最低
 「影響が継続している」は34.4%(5,940社中、2,047社)だった。前回調査(6月)の36.4%より2.0ポイント改善し、過去最低を更新した。「影響が出たがすでに収束した」は39.2%(2,333社)だった。
 規模別では、「影響が継続している」は、大企業が30.2%(746社中、226社)、中小企業が35.0%(5,194社中、1,821社)だった。前回は、それぞれ過去最低の34.3%、36.7%だったが、いずれも更新した。
 本設問を設定した2020年8月以来、「影響が継続」は全企業、大企業、中小企業ともに過去最低となった。

Q2.直近1年間で取引先(仕入先・外注先、または販売先・得意先)の廃業はありましたか?廃業は倒産(破産や民事再生、手形の不渡りなど)以外で事業を停止することを指します。(複数回答)

「廃業があった」は37.5%
 「仕入先(外注先)の廃業があった」が23.2%(5,213社中、1,213社)、「販売先(得意先)の廃業があった」が22.4%(1,171社)だった。取引先(仕入先・販売先の一方または両方)に廃業があった企業は37.5%(1,955社)にのぼる。
 取引先に廃業があった企業の業種別(全企業、業種中分類、回答母数10以上)で分析すると、最も多かったのは「織物・衣服・身の回り品小売業」と百貨店やミニスーパー(食料品メインは除く)などの「各種商品小売業」の70.0%(ともに10社中、7社)だった。

Q3.Q2で「販売先(得意先)の廃業があった」と回答した方に伺います。廃業は貴社にどのような影響を与えましたか?直近1年間で廃業が複数あった場合には、一番影響が大きかったケースでご回答ください。(複数回答)

「売上減少」が5割超
 販売先(得意先)が廃業した際の対応を聞いた。Q2で「販売先(得意先)の廃業があった」と回答した企業のうち、1,040社から回答を得た。
 最多は「売上高が減少した」の51.7%(538社)だった。また、「貸し倒れ(焦付)が発生した」は28.2%(294社)にのぼった。倒産ではなく廃業でも焦付リスクがあることが浮き彫りになった。
 規模別でみると、「売上高が減少した」は大企業で34.6%(124社中、43社)、中小企業で54.0%(916社中、495社)だった。販売先(得意先)企業数が相対的に少ない中小企業にとって取引先の廃業は死活問題になりかねない。
 また、「貸し倒れ(焦付)が発生した」は大企業で37.9%(47社)だったのに対し、中小企業では26.9%(247社)だった。大企業では少額債権の管理に改善の余地がありそうだ。

本調査結果の詳細はPDFファイルをご覧ください。

第29回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査[PDF:1.15MB]>

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ