• TSRデータインサイト

「飲食業倒産」上半期(1-6月) 過去30年間で最多の424件

~ 2023年上半期(1-6月)「飲食業の倒産動向」調査 ~


 2023年上半期(1-6月)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は424件(前年同期比78.9%増、前年同期237件)と大幅に増えた。上半期では2020年の418件を超え、過去30年間の最多を更新した。
 飲食業は、コロナ禍で休業・時短協力金や各種支援金などの手厚い支援に支えられた。だが、その後も売上は十分に戻らず、支援策の終了と同時に押し寄せた電気、ガス料金の値上げや物価高、人件費の上昇で、苦境が鮮明に浮かび上がってきた。
 2023年上半期の飲食業の「新型コロナ関連」倒産は288件(前年同期比104.2%増、構成比67.9%)で、このうち「ゼロ・ゼロ融資利用後」倒産は52件(前年同期21件)だった。


 業種別では、コロナ禍で参入が相次いだ「宅配飲食サービス業」が前年同期比210.0%増(10→31件)、「持ち帰り飲食サービス業」も同137.5%増(8→19件)と大幅に増加した。三密回避の浸透で、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」も同47.5%増の90件発生した。
 資本金別では、個人企業を含む「1千万円未満」が364件(前年同期比90.5%増)で、前年同期の191件から大幅に増加した。飲食業倒産の85.8%を占め、小・零細企業の苦戦が続いている。
 東京商工リサーチ(TSR)の6月調査で、コロナ禍で人員削減を実施したすべての飲食店が「人手不足」に陥っていることがわかった。アフターコロナで人流は回復してきたが、十分に人手を確保できず、営業機会を喪失する飲食業者は少なくない。また、物価高での食材費や電気代の高騰によるコストアップも重く、2023年の飲食業倒産は過去最多を更新する可能性も出てきた。

※本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2023年上半期(1-6月)の倒産を集計、分析した。


倒産が急増、上半期は過去30年で最多の424件

 2023年上半期(1-6月)の「飲食業」倒産は424件(前年同期比78.9%増)と急増、上半期では1994年以降の30年間で最多を記録した。このペースで推移すると、8月にも2022年の年間倒産件数(522件)を超える可能性が出てきた。
 コロナ禍の当初は、営業の自粛・制限や行動様式の変化で飲食業倒産が急増し、2020年は年間最多の842件発生した。しかし、2021年以降はコロナ対応の各種支援策が打ち出され、2022年は2004年以来、18年ぶりの500件台にとどまった。
 だが、支援の終了・縮小やコロナ禍での生活様式の変化の浸透で、飲食業倒産は2022年11月から2023年6月まで8カ月連続で増加。さらに、原油高や原材料高の影響によるコスト上昇も追い打ちをかけ、飲食業倒産は増勢を一段と強めている。

飲食業コロナ関連倒産推移

業種別 宅配、持ち帰り、食堂,レストランで前年から倍増

 業種別の最多は、「食堂,レストラン」の110件(前年同期比115.6%増)。次いで、「専門料理店」93件(同97.8%増)、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」90件(同47.5%増)の順。
 増加率の最大は、「宅配飲食サービス業」の31件(同210.0%増)だった。以下、「持ち帰り飲食サービス業」19件(同137.5%増)、「食堂,レストラン」の順。
 業種別のコロナ関連倒産の構成比は、「そば・うどん店」(85.7%、コロナ関連倒産6件)と「酒場,ビヤホール」(81.1%、同73件)の2業種で8割を超え、突出している。
 コロナ禍で好調だった宅配や持ち帰りが一転して苦戦するなど、飲食業倒産は業種による差が広がりつつある。

2023(令和5)年上半期飲食業 業種小分類別倒産状況

原因別 「事業上の失敗」が前年の3倍に急増

 原因別では、「販売不振」が最多の350件(前年同期比85.1%増)だった。次いで、「既往のシワ寄せ」25件(同47.0%増)、「他社倒産の余波」21件(同75.0%増)と続く。
 増加率では、「事業上の失敗」が前年同期比200.0%増(4→12件)で最大。
 飲食業は自治体などの積極的な創業支援により、小資本の業者も多い。そうした業者は、資産背景も脆弱で、コロナ禍での厳しい状況を乗り切れなかったケースも少なくない。

資本金別 小・零細規模で急増、「1百万円未満」は前年同期の3倍以上

 資本金別では、個人企業を含む「1千万円未満」が364件(前年同期比90.5%増)で、飲食業倒産の85.8%を占めた。内訳は、「1百万円以上」172件(同100.0%増)、「個人企業他」118件(同93.4%増)、「5百万円以上」39件(同18.1%増)、「1百万円未満」35件(同218.1%増)。
 経済活動や人流が回復する一方で、小・零細規模を中心に、長期にわたるコロナ禍で疲弊し体力の限界を迎える企業が増加しつつある。

都道府県別 増加34、減少6、同数7

 都道府県別では、増加が34都道府県、減少が6府県、同数が7県。
 件数が10件以上では、増加は愛知280.0%増(10→38件)、広島225.0%増(4→13件)、静岡120.0%増(5→11件)、北海道114.2%増(7→15件)、兵庫100.0%増(12→24件)、千葉100.0%増(6→12件)、福岡90.9%増(11→21件)、神奈川90.0%増(10→19件)、大阪82.7%増(29→53件)、新潟66.6%増(6→10件)、東京30.4%増(46→60件)。減少は、京都20.0%減(15→12件)のみ。
 地区別では、9地区すべてで前年同期を上回った。増加率の最大は、九州の138.8%増(18→43件)。


2023(令和5)年上半期飲食業 都道府県別倒産状況

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

コメ農家の倒産・休廃業が過去最多 ~ コメ作りの「あきらめ」、さらに増加も ~

コメ価格の高騰が止まらない。農水省が18日に発表した3月の米価格(相対取引価格)は2万5,876円で、1年前の約2倍の高値だ。 政府は備蓄米を放出したが、小売業者にはなかなか届かず、韓国産やアメリカ産の輸入拡大も検討されている。

2

  • TSRデータインサイト

パン屋の倒産が急減、コメ高騰でパンに注目 ~ 高級パンブームや小麦高騰の影響も一巡 ~

コメ価格の高騰が食卓と倒産に変化を及ぼしている。高級パンブームが崩壊したことに加え、小麦粉の価格上昇でパン屋さんの倒産が増加していたが、ここにきて急激に減少していることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

2025年4月「人手不足」倒産 最多の36件 人材の流動化が進み、「求人難」「従業員退職」が急増

2025年4月の「人手不足」が一因の倒産は、36件(前年同月比44.0%増)で、4月としては2013年以降では過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

パナソニックHDの早期希望退職募集 2012年以降の国内募集で最大規模、13年ぶり募集5,000人台

パナソニックホールディングス(株)(TSRコード:570191092)は5月9日、国内外で1万人規模の人員削減を発表した。国内は5,000人規模の見込み。

5

  • TSRデータインサイト

「人材派遣業」倒産、1-3月は過去最多の29件 ~ 「円高」、「トランプ関税」でさらに増加も ~

人手不足で人材の獲得競争が厳しさを増すなか、人材派遣会社(労働者派遣業)の倒産が急増している。

TOPへ