• TSRデータインサイト

6月のコロナ破たん 299件で過去2番目の件数

 6月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)が299件判明、全国で累計6,492件(倒産6,297件、弁護士一任・準備中195件)となった。
 件数は2022年に入って増勢を強め、9月以降は200件台が続き、2022年の年間件数は前年(1,718件)から3割増の2,282件にのぼった。2023年に入っても増勢推移は続き、3月はそれまでの最多を大幅に更新する328件を記録。6月も299件に達し、これに次いで過去2番目の件数だった。
 倒産集計の対象外となる負債1,000万円未満の小規模倒産は累計329件判明した。この結果、負債1,000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破たんは累計で6,821件に達した。
 国内の企業数(358万9,333社、2016年総務省「経済センサス」)を基にした比率では、コロナ破たん率は0.190%で500社に1社近くが破たんした計算となる。都道府県別で最も比率が高いのは東京都の0.329%、次いで宮城県の0.287%、福岡県の0.262%、大阪府の0.249%、富山県の0.227%。一方、最低は山梨県の0.087%で、地域によってばらつきもある。

 繁華街や行楽地の賑わいが戻り、インバウンド需要も含めた消費の回復にも期待がかかる。だが、企業業績が回復基調に向かう一方で、コロナ関連破たんは逆に増勢を強めている。コロナ関連融資の返済や運転資金の需要増に対応できずに行き詰まるケースが増えているためだ。コロナ禍を通じて経営体力が疲弊した企業の脱落やあきらめ型を中心に、コロナ関連破たんは当面、高水準で推移するとみられる。

月別 判明件数

【都道府県別】(負債1,000万円以上) ~ 100件以上は17都道府県に ~

 都道府県別では、東京都が1,308件と全体の2割強(構成比20.1%)を占め、突出している。以下、大阪府651件、福岡県330件、愛知県321件、神奈川県283件、兵庫県277件、北海道256件、埼玉県220件と続く。
 300件超えが4都府県、200件~300件未満が4道県、100件~200件未満も9府県に広がっている。一方、10件未満はゼロで、最少は鳥取県の16件だった。

都道府県別破たん状況

【業種別】(負債1,000万円以上)~最多は飲⾷業の1,037件、建設業、アパレル関連が続く~

 業種別では、コロナ禍での来店客の減少に加え、食材や光熱費高騰の負担も重い飲食業が最多で1,037件に及ぶ。行動様式の変化で客足が戻らず、経営体力の消耗やあきらめにより、飲食業の新型コロナ破たんはさらに増加する可能性が高まっている。
 次いで、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が768件に達した。小売店の休業が影響したアパレル関連(製造、販売)の471件。このほか、飲食業などの不振に引きずられている飲食料品卸売業が279件。インバウンドの需要消失や旅行・出張の自粛が影響したホテル,旅館の宿泊業が196件と、上位を占めている。

【負債額別】(負債1,000万円以上)

 負債額が判明した6,288件の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が最多の2,476件(構成比38.4%)、次いで1億円以上5億円未満が2,032件(同31.5%)、5千万円以上1億円未満が1,298件(同20.1%)、5億円以上10億円未満が319件(同4.9%)、10億円以上が311件(同4.8%)の順。
 負債1億円未満が3,774件(同58.6%)と半数以上を占める。一方、100億円以上の大型破たんも17件発生しており、小・零細企業から大企業まで経営破たんが広がっている。

【形態別】(負債1,000万円以上)

 「新型コロナ」関連破たんのうち、倒産した6,297件の形態別では、破産が5,687件(構成比90.3%)で最多。次いで取引停止処分が224件(同3.5%)、民事再生法が210件(同3.3%)、特別清算が148件、内整理が22件、会社更生法が6件と続く。
 「新型コロナ」関連倒産の9割超を消滅型の破産が占め、再建型の会社更生法と民事再生法の合計は1割未満にとどまる。業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺すかたちで脱落するケースが大半。
 先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっている。

【従業員数別】(負債1,000万円以上)

 「新型コロナ」関連破たんのうち、従業員数(正社員)が判明した6,254件の従業員数の合計は5万6,187人にのぼった。平均すると1社あたり約9人となる。
 6,254件の内訳では従業員5人未満が3,700件(構成比59.1%)と、約6割を占めた。次いで、5人以上10人未満が1,189件(同19.0%)、10人以上20人未満が751件(同12.0%)と続き、従業員数が少ない小規模事業者に、新型コロナ破たんが集中している。
 また、従業員50人以上の破たんは2021年上半期(1-6月)で17件、下半期(7-12月)で15件。2022年は上半期で24件に増加し、下半期も31件判明。2023年は現時点で25件判明している。


コロナ破たん率 都道府県別

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

コロナ破たん累計が1万件目前 累計9,489件に

4月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)が244件(前年同月比9.9%減)判明した。3月の月間件数は2023年3月の328件に次ぐ過去2番目の高水準だったが、4月は一転して減少。これまでの累計は9,052件(倒産8,827件、弁護士一任・準備中225件)となった。

2

  • TSRデータインサイト

堀正工業(株) ~約50行を欺いた粉飾、明細書も細かく調整する「執念」 ~

東京には全国の地域金融機関が拠点を構えている。今回はそれら金融機関の担当者が対応に追われた。最大54行(社)の金融機関やリース会社から融資を受けていた老舗ベアリング商社の堀正工業(株)(TSR企業コード:291038832、東京都)が7月24日、東京地裁から破産開始決定を受けた。

3

  • TSRデータインサイト

インバウンド需要で「ホテル経営」が好調 8割のホテルが稼働率80%超、客室単価の最高が続出

コロナ禍の移動制限の解消と入国審査の緩和で、ホテル需要が急回復している。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の客室単価と稼働率は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に、コロナ禍前を上回った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年4月の「円安」関連倒産 1件発生 発生は22カ月連続、円安の影響はさらに長引く可能性も

2024年4月の「円安」関連倒産は1件発生した。件数は、3カ月ぶりに前年同月を下回ったが、2022年7月から22カ月連続で発生している。 3月19日、日本銀行はマイナス金利解除を決定したが、じりじりと円安が進み、4月29日の午前中に一瞬34年ぶりに1ドル=160円台に乗せた。

5

  • TSRデータインサイト

約束手形の決済期限を60日以内に短縮へ 支払いはマイナス影響 約4割、回収では 5割超がプラス影響

これまで120日だった約束手形の決済期限を、60日に短縮する方向で下請法の指導基準が見直される。約60年続く商慣習の変更は、中小企業の資金繰りに大きな転換を迫る。 4月1~8日に企業アンケートを実施し、手形・電子記録債権(でんさい)のサイト短縮の影響を調査した。

TOPへ