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自社業界の倒産見通し、「増加する」が57.3% ~ 第28回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査 ~

新型コロナウイルス感染拡大の企業活動への影響について、「すでに収束した」と回答した企業は40.1%で、2020年8月に設問を設定して以来、最高となった。また、今年5月の売上高が「前年以上」となった企業は62.1%にのぼった。5月8日に新型コロナの分類が「5類」へ引き下げられたことで、訪日外国人や人流の増加が促され、経済活動がさらに活性化したことが影響したとみられる。

 政府がコロナ禍で実施した企業向け支援策について、45.1%の企業が「評価する」と回答した。支援策別では、「持続化給付金」や「家賃支援給付金」などの給付型、「実質無利子・無担保(ゼロ・ゼロ)融資」などの貸付型を評価する声が6割近くに達した。一方で、「財源の検証が不十分」との声も多く、効果検証には丁寧な説明も必要になりそうだ。
 現在、直面する経営課題は、「資材高騰」と「人手不足」をあげる企業がともに約6割に達した。ロシアのウクライナ侵攻や円安、生産年齢人口の減少などを背景に、こうした課題は短期的に解消しそうにない。また、今年度(2023年度)の自社業界の倒産見通しについて、「増加する」との回答が57.3%と半数を超えた。
 コロナ禍は5類への移行で一区切りしたものの、今回の調査で構造的な問題から先行き見通しを懸念する企業が多いことがわかった。コロナ禍で見えにくくなっていた課題への対応が企業、国内経済の成長のカギを握っている。
本調査は6月1日~8日にインターネットによるアンケート調査を実施。有効回答6,191社を集計分析した。
前回(第27回)調査は、2023年4月20日公表(調査期間:2023年4月3日~11日)。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義した。

Q1.コロナ禍で政府が実施した企業向け支援策はどのように評価しますか?(択一回答)

「評価する」が45.1%、「評価しない」は19.9%
 コロナ禍の企業向け支援策の評価を聞いた。最多は「ある程度評価する」の39.7%(6,073社中、2,416社)だった。次いで、「どちらともいえない」の34.9%(2,122社)。
 「大いに評価する」と「ある程度評価する」を合計した「評価する」は45.1%(2,742社)、「全く評価しない」と「あまり評価しない」を合計した「評価しない」は19.9%(1,209社)。
 「評価する」と回答した企業を業種別(全企業、中分類、回答母数10以上)でみると、トップはタクシーなどの「道路旅客運送業」の76.9%(13社中、10社)だった。一方、「評価しない」は「広告業」の37.8%(37社中、14社)だった。

評価

Q2. 2022年度(4-3月)の企業倒産は、14年ぶりに全ての産業で前年を上回りました。今年度(2023年度)の貴社業界の倒産動向は、どのように予想しますか?(択一回答)

「増える」が約6割

 自社の属する業界の倒産見通しを聞いた。「増える」は57.3%(4,989社中、2,861社)、「減る」は5.0%(254社)、「変わらない」 は37.5%(1,874社)だった。
 「増える」と回答した企業が多かった業種(全企業、中分類、回答母数10以上)は、アパレル関連がトップ2を占め、「織物・衣服・身の回り品小売業」が86.6%(15社中、13社)、「繊維工業」が81.6%(49社中、40社)だった。
 「減る」と回答した企業が多かったのは、「道路旅客運送業」の27.2%(11社中、3社)、「宿泊業」の20.0%(20社中、4社)、「広告業」の18.5%(27社中、5社)など。

予想

本調査結果の詳細はPDFファイルをご覧ください。

第28回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査[PDF:1.27MB]>

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