• TSRデータインサイト

「ゼロ・ゼロ融資」利用後の倒産 5月は58件 2020年以降の累計 846件、 10カ月連続で40件超

~ 2023年5月「ゼロ・ゼロ融資後」倒産の状況 ~


 実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)を利用した後の倒産は、 2023年5月は58件(前年同月比28.8%増、判明分)だった。2022年8月から10カ月連続で40件を上回り、2020年7月の発生からの累計は846件に達した。
 コロナ禍の中小・零細企業の資金繰り支援策として実施されたゼロ・ゼロ融資は、倒産抑制に劇的な効果をみせた。だが、副作用として過剰債務をもたらし、追加の資金調達が難しい企業の息切れ倒産が頻発している。

 産業別では、サービス業他が16件(前年同月比14.2%増)で最も多かった。飲食店や美容業など、対面サービス業で三密回避の生活様式が浸透した業種を直撃した。
 形態別では、破産51件(同24.3%増)と特別清算1件の消滅型が52件(同18.1%増)発生、全体の約9割(89.6%)を占めた。一方、民事再生法と会社更生法の再建型倒産は2カ月連続で発生がなかった。過剰債務に陥り、業績改善が見込めない企業が事業継続を断念する傾向が強い。 
 アフターコロナに向かう中、インバウンド需要の回復で景況改善が期待される。だが、一方で、企業を取り巻く環境は、円安、人手不足、物価高などが重くのし掛かっている。
 事業再構築へのハードルは高く、業績改善が遅れ、ゼロ・ゼロ融資などの支援効果も薄れた中小・零細企業の倒産を押し上げている。
 2020年3月に始まったゼロ・ゼロ融資は、2022年12月末時点で利用実績は約249万件に達した。政府は2023年1月、返済開始がピークを迎える夏場を前に、ゼロ・ゼロ融資の返済負担を緩和する新たな借換保証制度「コロナ借換保証」を創設。保証承諾件数は、5月までに3万6,000件に達している。だが、借換保証の利用には経営行動計画書の作成や四半期ごとの進捗確認、金融機関による継続的な伴走支援が必要で、支援が必要な企業をどこまで支えられるか動向が注目される。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


5月の「ゼロ・ゼロ融資」の利用後倒産は58件、月間件数は3番目に多い

 2023年5月の「ゼロ・ゼロ融資」を利用した倒産は58件(前年同月比28.8%増)だった。月間では、2022年10月(60件)に次いで3番目の高水準だった。「ゼロ・ゼロ融資」を利用しながら倒産に追い込まれる企業は、2022年3月からハイペースで推移している。
 負債総額は88億4,900万円で、前年同月(185億7,600万円)から52.3%減と半減した。2023年5月は負債20億円以上の発生がなく(前年同月2件)、3カ月連続で前年同月を下回った。

ゼロ・ゼロ融資後倒産月次推移

【産業別】サービス業他が16件で最多

 産業別は、最多がサービス業他の16件(前年同月比14.2%増)で、全体の約3割(構成比27.5%)を占めた。コロナ禍の直撃を受けた飲食業や美容業などが含まれる。
 次いで、建設業が15件(前年同月比66.6%増)、製造業が10件(同42.8%増)、卸売業が9件(同12.5%増)、運輸業が3件(同25.0%減)で続く。10産業のうち、金融・保険業(前年同月ゼロ)と不動産業(同ゼロ)を除く8産業で発生した。
 前年同月と比べて6産業で増加、減少と同数は各2産業だった。

産業別状況(5月)

【業種別】建設関連業種が1位と2位を占める

 業種分類別(中分類)では、「総合工事業」が7件で最多、2番目に「職別工事業」が6件で続く。工事資材の価格高騰や調達遅れが資金繰りを圧迫し、行き詰まりをみせた。
 次いで、アパレル向け販売員派遣業を含む「その他の事業サービス業」や「飲食店」、「繊維・衣服等卸売業」が各3件で続く。コロナ禍の業況悪化や仕入価格の上昇が経営悪化に結び付いた。

業種分類別倒産状況(5月)

【形態別】2カ月連続で再建型がゼロ

 形態別では、消滅型の破産が51件(前年同月比24.3%増)で、全体の約9割(構成比87.9%)を占めた。特別清算1件と合わせた消滅型は52件だった。
 一方、再建型の民事再生法(前年同月2件)と会社更生法(同ゼロ)は、2カ月連続で発生がなかった。
 このほか、取引停止処分が5件(同1件)発生した。

【従業員数別】10人未満が8割超

 従業員数は、5人未満の32件(前年同月比88.2%増)が最多で、過半数(構成比55.1%)を占めた。次いで、5人以上10人未満が16件(同27.5%)で続き、10人未満の小規模倒産が8割超(48件、構成比82.7%)を占めた。
 このほか、10人以上20人未満が7件(前年同月比12.5%減)、20人以上50人未満が3件(同40.0%減)だった。50人以上300人未満(前年同月2件)と300人以上(同ゼロ)は発生なし。

【地区別】9地区中、8地区で発生

 地区別では、最多が関東の24件(前年同月比41.1%増)で、4割(構成比41.3%)を占めた。
 次いで、九州が11件(同18.9%)、東北7件(同12.0%)、中部5件(同8.6%)、近畿4件、中国と四国が各3件、北海道が1件で続く。北陸を除いた8地区で発生した。

 都道府県別では、東京都が13件で最多。以下、埼玉県が6県、福岡県が5件、福島県が4件、大阪府が3件で続く。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ハンバーガー店の倒産、最多更新 ~ 材料高騰、大手と高級店の狭間で模索 ~

年齢を問わず人気のハンバーガー店が苦境だ。2024年は1件だった倒産が、2025年は8月までに7件に達し、過去最多の2014年の年間6件を上回った。

2

  • TSRデータインサイト

2025年「全国のメインバンク」調査 ~GMOあおぞらネット銀行 メイン社数の増加率2年連続トップ~

「2025年全国企業のメインバンク調査」で、GMOあおぞらネット銀行が取引先のメインバンク社数の増加率(対象:500社以上)が2年連続でトップとなった。

3

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな潮流を契機に、群雄割拠

全国の主な葬儀会社505社は、ブランド力の高い老舗企業を中心に、売上高を堅調に伸ばしていることがわかった。 ただ、新たに設立された法人数が、休廃業・解散や倒産を上回り、市場は厳しい競争が繰り広げられている。

5

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

TOPへ