• TSRデータインサイト

空前のペットブームもピークアウトか、売上の二極化が拡大

~ 2022年「ペット・ペット用品小売業」業績調査 ~


 コロナ禍の閉塞感を癒したペットブームに、ピークアウトの兆しが出てきた。国内のペット・ペット用品小売業337社の2022年(1-12月期)決算は、売上高合計が2,906億7,700万円(前年比6.5%増)と増収となったが、最終利益合計は62億5,400万円(同8.2%減)と減益に転じた。円安でペットフード原材料やペット用品の価格が上昇、電気代高騰も直撃するなか、価格転嫁の難しさが足かせになっている。

 コロナ禍の新たな生活様式の浸透で、犬や猫などのペット人気が広がった。同時に、ペット飼育に必要なケージやトイレ、エサなどの需要も喚起し、ペット市場はコロナ禍で成長をたどった。
 コロナ禍前の2019年の売上高合計は2,233億7,300万円だったが、2022年は2,906億7,700万円と1.3倍に伸びた。最終利益合計も2019年(21億700万円)から2.9倍と大幅に拡大した。
 だが、2019年比の売上高伸長率は、増収率10%以上の企業が3割(構成比32.0%)となる一方、減収率10%超の企業も2割超(同24.3%)と、売上高の二極化が加速している。
 環境省自然環境局によると、動物愛護センターや保健所に引き取られた犬・猫は、2019年度の8万5,903頭から2021年度(最新)は5万8,907頭に減少した。これはコロナ禍でのリモートワークなどによるペットと人との関係性の強まりや、動物愛護団体の働きかけなどがあるとみられる。

 今後は経済活動の再開や出社勤務の広がりで飼い主がペットと過ごす時間は減少し、ペットの世話を負担に感じたり、ペットを手放すことを検討する飼い主の増加も懸念される。
 環境省自然環境局の資料によると、ペットの「販売」業者数は、2019年の2万1,069業者から2021年は2万2,258業者に増えたが、2022年は2万2,165業者と減少に転じた。
 一方、ペットホテルやシッターなどの「保管」業者は、2019年の2万7,420業者から、2022年は3万76業者と増加が続いている。
 コロナ禍でペットを飼い始めた人が増え、ペットやケージ、トイレなど基本用品の需要が活発だった。今後はこうした需要は減少し、自動給餌器などの飼育自動化用品やペットホテルなど、飼育負担を軽減する製品・サービスが新たな主力市場になる可能性が見えてきた。アフターコロナを見据えた新たなビジネスモデルへの転換が必要なタイミングかもしれない。

※本調査は、TSR企業データベースから日本標準産業分類の「6096 ペット・ペット用品小売業」を集計対象とした。単体決算で最新期を2022年1-12月期とし、4期連続で売上高が比較可能な337社(最終利益は129社)を対象に抽出、分析した。




増収の一方で、最終損益は減益に

 ペット関連337社の2022年の売上高合計は、2,906億7,700万円(前年比6.5%増)だった。2020年から増収が続き、2022年は2019年(2,233億7,300万円)の1.3倍(30.1%増)に拡大した。
 一方で、増収率は2020年が前年比8.4%増、2021年が同12.6%増と増加幅が拡大したが、2022年は同6.5%増と縮小した。
 2022年の最終利益合計は、62億5,400万円(同8.2%減)だった。コロナ禍前の2019年と比べ、最終利益は2.9倍と大きく増加した。増益率は、2020年に前年比105.9%増で大幅増となったが、2021年は同57.0%増と縮小、2022年は一転し同8.2%減と減益になった。
 ペット需要の高まりで、売上高は伸びているが、仕入価格や電気代の高騰などのコスト増で、直近決算は減益と厳しさをみせている。

ペット・ペット用品小売業337社の業績

売上高伸長率別 コロナ禍前の2019年から二極化が進む

 2022年の売上高伸長率をみると、増収企業は244社(構成比72.4%)に対し、減収企業は93社で約3割(同27.5%)にとどまった。
 2022年とコロナ禍前の2019年の売上高を比較すると、増収企業は214社(同63.5%)だった。ただ、増収率10%以上が108社(同32.0%)と3割だったのに対し、減収率10%超は82社(同24.3%)と2割超を占め、売上高の二極化が鮮明になっている。
 豊富な品揃えを誇る資本金1億円以上の大手は、7社中6社(同85.7%)が増収率10%以上だった。低価格志向・高級志向など様々な消費者ニーズに対応できるかで、売上高の伸びに差が出ているようだ。


ペット・ペット用品小売業 売上高伸長率別

損益別 黒字企業が8割以上を占める

 最終損益別は、4年連続で損益が判明した129社では、2022年の黒字は109社(構成比84.4%)だった。
 黒字企業率は2020年の91.4%がピークで、それ以降は低下をたどり、2021年89.1%、2022年84.4%となった。 

ペット・ペット用品小売業 損益別

最終利益 増益企業率が減益企業率を上回る

 2022年の増益企業率は37.2%で、減益企業率の29.4%を7.7ポイント上回った。
 増益企業率の推移をみると、2020年の32.5%から2021年は39.5%に上昇した。コロナ禍でペット需要が高まり、増益企業が増えた。
 だが、2022年は37.2%と、2021年から2.3ポイント低下した。売上高の伸び以上に、仕入価格や電気代などの上昇のコスト負担が大きいことを示している。

ペット・ペット用品小売業 対前年増減益別

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【TSRの眼】「トランプ関税」の影響を読む ~ 必要な支援と対応策 ~

4月2日、トランプ米国大統領は貿易赤字が大きい国・地域を対象にした「相互関税」を打ち出し、9日に発動した。だが、翌10日には一部について、90日間の一時停止を表明。先行きが読めない状況が続いている。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 インバウンド需要と旅行客で絶好調 稼働率が高水準、客室単価は過去最高が続出

コロナ明けのインバウンド急回復と旅行需要の高まりで、ホテル需要が高水準を持続している。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2024年10-12月期の客室単価と稼働率は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に、前年同期を上回った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年度の「後継者難」倒産 過去2番目の454件 代表者の健康リスクが鮮明、消滅型倒産が96.6%に 

2024年度の後継者不在が一因の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は、過去2番目の454件(前年度比0.8%減)と高止まりした。

5

  • TSRデータインサイト

2025年「ゾンビ企業って言うな!」 ~ 調達金利の上昇は致命的、企業支援の「真の受益者」の見極めを ~

ゾンビ企業は「倒産村」のホットイシューです、現状と今後をどうみていますか。 先月、事業再生や倒産を手掛ける弁護士、会計士、コンサルタントが集まる勉強会でこんな質問を受けた。

TOPへ