• TSRデータインサイト

日本標準産業分類、10年ぶりに改定 コロナ禍を経て「ペストコントロール業」が新設へ

 日本の産業統計の基準になっている総務省の「日本標準産業分類」が、10年ぶりに改定される。2024年4月に施行される予定だ。
 時代の変化とともに産業構造は大きく変化し、新しい産業も生まれる。今回の改定ではコロナ禍などの変化を背景に、ウイルス消毒など「ペストコントロール業」や電気の小売全面自由化による「電気小売業」などを新設する方向で検討が進められている。



 日本標準産業分類は、国勢調査や経済センサスなど公的統計に活用される。東京商工リサーチ(TSR)のデータベースも日本標準産業分類に準拠した「TSR業種コード」に則って蓄積されている。
 現行の日本標準産業分類は、20の大分類、99の中分類、530の小分類、1,460の細分類の4段階構成になっている。例えば、大分類「宿泊業,飲食サービス業」のなかに中分類の「飲食店」があり、小分類に「専門料理店」、さらに細分類には「日本料理店」「ラーメン店」「焼肉店」などがある。
 この分類で、全国にある「焼肉店」の社数や売上高、従業員数を統計として活用することができる仕組みだ。

日本標準産業分類の歴史

 日本標準産業分類が初めて設定されたのは、1949(昭和24)年10月。当時の大分類は、13種類で、大分類の一つ「運輸通信、及びその他の公益事業」は、公益的性格をもつものと位置付けられ、時代的な背景も読み取れる。
 第1回の改定は1951年。そこから改定が重ねられ、最新は2013年の第13回改定だ。

第14回改定案の中身

 改定には想像以上の調整が求められる。総務省は、2020年6月に閣議決定した「公的統計の整備に関する基本的な計画」に伴う調整や検討のため、「産業分類改定研究会」を開催。研究会は、学識経験者や内閣府、経済産業省などの関係府省などで構成される。改定案を検討する「産業分類検討チーム」は、2021年6月の第1回から2023年3月の第15回まで会議を開催し、調整が行われた。
 産業動向の変化に対応するため、改定案には燃焼炉から電気炉への転換を見据えた「電気炉・電熱装置製造業」、これまで明確な位置付けのなかった「ワンプライスショップ」、細菌やウイルスの消毒など「ペストコントロール業」、電力小売の全面自由化に伴う「電気小売業」などが新設される見通しだ。

所管する総務省(TSR撮影)

所管する総務省(TSR撮影)



 「ユーチューバー」についても議論されてきたが、最終的には広告やイベントなどどこから主たる収入を得るのかによって区分される運用となりそうだ。
 経済活動の実態把握に必要な日本標準産業分類の第14回改定では、分類基準や事業所の定義の改定など一般原則も見直される。
 さらに先の第15回の改定では、どんな産業が追加されるのか。日本標準産業分類は、客観的に栄枯盛衰と時代を映す鏡にもなっている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年4月20日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ