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知床観光船事故からまもなく1年  旅客船事業者の不振続く、5割が赤字に

~ 2022年 「旅客船事業者79社の業績動向」調査 ~


 知床観光船の事故から、まもなく1年。政府は旅行支援などで、落ち込んだ旅行需要の喚起を促している。だが、乗船客数の回復の遅れに燃料費高騰や事故による風評が追い打ちをかけ、全国の旅客船事業者79社の半数が2022年決算が赤字だったことがわかった。
 2021年は7割の事業者が赤字でそこからは改善したが、依然として低迷が続いている。国土交通省は安全性確保の対策を進めているほか、新型コロナの5類移行など、乗船客増加の期待材料はあるが、旅客船事業者の業績が回復するか真価が問われている。


 東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(390万社)から2022年1-12月期を起点に3期連続で業績が比較可能な79社の「旅客船事業者」を抽出し、分析した。

 旅客船事業者79社の2022年決算の売上高合計は899億3,500万円(前期比7.5%増)と増加した。だが、コロナ禍前や拡大当初の2020年と比較すると約1割(11.4%)落ち込み、まだコロナ前には回復していない。また、2022年決算の利益(当期純利益)合計は46億4,000万円の赤字だった。2021年の70億1,400万円の赤字から赤字幅は縮小したが、黒字化への道のりは険しい。
 旅客船事業者は、地域密着の小規模運営会社が多い。79社のうち、売上高5億円未満が74.6%、従業員数50人未満が77.2%、資本金1億円未満が84.8%と、小・零細事業者が大半を占めている。業績悪化が長引くと廃業、倒産など、地域経済や雇用、観光資源への影響も危惧される。
 国土交通省は4月4日、浸水が広がらないように小型旅客船に「水密隔壁」や「水密全通甲板」の設置を義務付ける方針を示した。また、対策が難しい船や既存船には浸水警報装置や排水設備の設置、水没しないことの確保などを求め、安全性確保の対策が進められている。


※本調査はTSR企業データベース(390万社)から、主業種が「沿海旅客海運業」「港湾旅客海運業」の企業を「旅客船事業者」と定義し、抽出した。調査は旅客海運が対象で、川や湖の「河川水運業」「湖沼水運業」は除いた。
※2022年(2022年1月期-12月期決算)、2021年(同)、2020年(同)の3期で売上高、利益が比較可能な79社を対象とした。今回で2回目の調査(前回は2022年5月23日)。対象数の相違は休廃業や倒産、業績非開示などのため。


2022年決算は46億4,000万円の赤字

 旅客船事業者79社の2022年決算の売上高合計は、899億3,500万円(前期比7.5%増)と回復に転じた。外出自粛要請の緩和や全国旅行支援の実施などが寄与したようだ。
 しかし、売上水準は低く、2020年(1,015億4,000万円)と比べると116億500万円減(11.4%減)で、復調ペースは鈍い。
 また、2022年決算の利益は、合計46億4,000万円の赤字(前期70億1,400万円の赤字)だった。助成金も赤字縮小に寄与したとみられるが、2期連続の大幅赤字は小・零細企業への負担は軽くないと思われる。


旅客船事業者79社の業績

5割の事業者が赤字

 2021年は59社(構成比74.6%)が赤字だったが、2022年は41社(同51.8%)に減少した。
 2022年は増益が50社(同63.2%)に戻したが、減益は25社(同31.6%)あり、厳しい採算状況の事業者も多いことを示している。


旅客船事業者79社の損益別

7割強が増収

 売上高の増減収別では、2022年は60社(構成比75.9%)が増収、16社(同20.2%)が減収、横ばいが3社(同3.7%)と増収が7割を超えた。
 コロナ禍の影響が強かった2021年は、増収が12社(同15.1%)にとどまり、減収が58社(同73.4%)、横ばいが9社(同11.3%)で、構成比がほぼ逆転した。
売上高5億円未満が7割超す
 79社の売上高別では、2022年は1億円未満が38社(構成比48.1%)と過半近くを占め、地域に根ざした小・零細事業者が多い。次いで、1億円以上5億円未満が21社(同26.5%)で、5億円未満が計59社(同74.6%)と7割を上回った。
 一方、100億円以上は3社、50億円以上100億円は1社にとどまった。


旅客船事業者79社 対前年増減収別

小・零細事業者が大半を占める

 資本金別では、最多は資本金1千万円以上5千万円未満の36社(構成比45.5%)。次いで、1百万円以上1千万円未満が15社(同18.9%)と続く。
 1億円以上は12社(同15.1%)にとどまる一方、1億円未満は67社(同84.8%)と8割超を占める。

 従業員数別では、10人以上50人未満が35社(同44.3%)で最多だった。次いで、5人以上10人未満の15社(同18.9%)、5人未満の11社(同13.9%)、100人以上の10社(同12.6%)、50人以上100人未満の8社(同10.1%)の順だった。
 従業員50人未満が61社(同77.2%)と約8割が小・零細事業者だった。



 TSRの取材によると、各地の旅客船事業者では知床観光船の事故後、イメージがダウンし、一時的にキャンセルが相次いだという。業界の信頼回復には、安全対策の徹底が必須だ。
 国土交通省は4月4日、小型旅客船を運行する全国1,646事業者へのハッチカバーに関する点検結果を公表した。それによると1,565者は特段の問題が確認されず、29者は自ら是正し、不備の7者には国から是正指示、3者には発行前検査の徹底指導を行った。国交省は、隔壁の水密化など沈没リスクを抑える対策を義務付け、さらなる安全性確保の対策に動いている。
 だが、コロナ禍と知床沖の事故の影響などで、経営が悪化した事業者は多い。ゴールデンウィークや夏休みに需要回復の期待が高まるが、燃料費高騰や人手不足など課題も山積しており、資金余力の乏しい事業者には、国、自治体、業界から安全対策への支援が必要だろう。
 大海原に浮かぶ船のデッキから望む景色は、日ごろの喧騒を忘れて心が洗われる。地域観光の起爆剤でもある旅客船観光の復活を待ち望む声は多い。

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