生存率26.7%、「再建型」が有名無実に ~「民事再生法」適用企業の追跡調査(2000-2022年)~
2000年4月、和議法に代わる再建型倒産法として「民事再生法」が施行された。だが、適用企業の生存率は26.7%と3割に届かないことがわかった。 基本的に従来の経営陣が残り、再建計画の可決要件の緩和など「使い勝手の良い」倒産法としてスタートしたが、私的整理が広がるなかで運用は曲がり角にきている。
東京商工リサーチは、2000年4月1日~2022年12月31日までに負債1,000万円以上を抱え民事再生法の適用を受けた1万963社のうち、個人企業等を除く7,988社を追跡調査した。同一企業で事業継続が確認されたのは、26.7%(2,133社)と4分の1にとどまった。
民事再生法は、破産や特別清算の「消滅型倒産手続き」に対し、会社更生法と同様に事業再建を目指すため「再建型倒産手続き」と呼ばれる。債務超過に陥っていなくても活用できる点が大きな特徴だ。ただ、再生計画を立案できず申請が棄却されたり、認可決定を受けても履行できず破産に移行するケースもある。スポンサー企業への事業譲渡や他社との合併、解散・廃業などにより、適用企業が消滅することもある。
また、手続き保証の観点から公告されるため、取引打ち切りや与信限度額の縮小、採用活動への悪影響など、事業価値の毀損に繋がることもある。民事再生法の施行から22年が経過するが、事業再生の在り方を検証する時期を迎えているようだ。
※ 本調査は、2000年4月1日~2022年12月31日に民事再生法の適用を受けた1万963社のうち、個人企業等を除く7,988社を対象に、同一企業での事業継続の有無を調査した。
※ 消滅率・生存率は、合併・解散、破産、特別清算、休廃業、再倒産等の発生状況を基に算出した。
申請企業の生存率は26.7%
民事再生法の適用を受けた7,988社のうち、事業継続を確認できたのは2,133社(26.7%)にとどまった。申請条件が緩い一方で、再建型倒産手続きの厳しい現実を示している。
申請年別では、2000年(4月1日~)の生存率は17.0%で、以降は2017年まで20%台が目立つ。2018年以降の生存率は40%を超えるが、認可決定から3年を経過しておらず、手続きが終結していない企業が大半を占める。時間の経過とともに消滅する可能性が高い。
負債総額が大きなケースでは、2008年9月申請のリーマン・ブラザーズ証券(株)は、2013年に再生手続きが終結したが、2019年8月に清算結了し消滅した。また、流通大手として一時代を築いた(株)マイカルは、2001年9月に申請した後、同年11月に会社更生法の適用を申請。2005年12月の更生手続き終結後、2011年3月にイオンリテール(株)に吸収された。
一方、自動車部品のタカタ(株)は、2017年6月に申請し、2021年6月に再生手続きが終結。現在は商号をTKJP(株)に変更し、エアバッグインフレータのリコール品回収・廃棄を担っている。また、カルソニックカンセイ(株)を源流とするマレリホールディングス(株)は事業再生ADRで再建を模索したが調整がつかず、2022年6月に民事再生法を申請した。簡易再生手続きを経て、現在に至っている。
消滅企業でも、事業は他社へ譲渡され、存続するケースもある。近年、私的整理を活用した債務整理に向けた動きが活発だが、透明性の高い法的手続きで債務を圧縮して同一企業で事業を存続するか、他社に事業譲渡するか。あるいは、私的整理の枠組みで事業を継続するか。現実的な再建や社会的な便益に配慮した選択肢は増えている。レピュテーションによる事業価値の毀損は避けるべきだが、私的整理で再建に伴うリストラや取引契約の見直しなどが頓挫すると、中長期的な企業価値は再生局面の初期に法的手続きを採っていた方が上回ることも想定される。また、企業の債務は、相手方の資産であり、資産には保険や保証がついているケースもある。債務整理は多様なステークホルダーの権利変更を伴うことを再度確認し、多面的な議論が必要だ。
※消滅・生存企業の選定方法
「消滅企業」は民事再生手続の進捗が確認できた7,988社(個人企業を除く)のうち、①合併・解散・破産・特別清算などにより消滅した企業、②廃業や休業などで同一法人で事業継続が確認できない企業、③事業実態が確認できない企業、と定義した。
「生存企業」は、「消滅企業」以外のものとした。