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城南信用金庫・川本恭治理事長 単独インタビュー(後編)

~ 問題を解決する場としての金融機関へ ~


―とはいえ、賃上げの原資となる価格転嫁が難しい企業は多い

 確かに価格転嫁で苦労している声を多く聞く。例えば、飲食店では、事業を続けるには値上げ以外に手段はないが、値上げをすると客足が減るジレンマがある。最近は卵の不足や価格高騰で、メニューを削らざるを得ない状況も出てきた。
 その中でも、60年ほど続いてきたある中華料理店は、昨年11月で閉店した。コロナ禍の間、客数が減り続けるなかで苦労しつつもなんとか乗り切ってきたが、原材料の高騰で、やればやるほど赤字になってしまうようになった。かといって値上げすれば客離れに繋がる、という板挟みで疲弊して店を閉じた。
 中小・零細企業は、賃上げどころか事業継続も難しくなりつつあるのが現実だ。

―価格転嫁を進めるには何をすべきか

 今まで常に、上から値下げしろと言われ続けてきたのが(下請の)中小企業なので、これまで値上げを要求した経験がない。このため、どう交渉していいかわからない。そういう声は多くある。
 ただ、なかには価格転嫁できた事業者もいる。どうしてできたかといえば、やはり独自の技術や製品を持っている。
 当たり前だが、他で作れないものや他にない技術があれば、相手は強気の価格交渉でも聞いてくれる。だから、お客様に伝えているのは、誰でも出来ることではなく、独自の技術や製品を持つようにしましょう、ということだ。
 そういう企業は収益も上がるため、賃上げができる数少ない企業でもある。これは良いサイクルが生まれていると思う。やはり独自性を持つことこそ重要ではないだろうか。飲食店でも、ここでしか食べられない、美味しいとなれば少々値上げしても客は減らない。

―コロナ融資の返済も本格化するなか、企業業績を回復させるためには

 コロナ融資に関しては、すでに大半のお客様は返済がスタートしている。返済が難しいため猶予してほしいというお客様もいることはいるが、今のところは大きな問題にはなっていない。
 売上の面では、多くが1、2年前に比べて回復してきた。だが、肝心の利益が出ないというのが現状だ。価格転嫁ができるかどうかにかかっている。
 ただ、我々がお客様に代わって価格交渉するわけにはいかないので、プロの講師を呼んで価格転嫁の交渉の仕方のセミナーなども開催している。これには参加希望が殺到した。『城南なんでも相談プラザ』という相談窓口で随時相談を受け、価格転嫁のアドバイスをさせてもらっている。

―先行きが厳しい企業への対応や支援は

 単独ではなかなか難しい部分もあるので、全国の信用金庫や環境省、県や自治体、マスコミ、大学などと連携協定を結んでネットワークを作り、なんとかこの大変な状況を乗り切っていこうと活動している。
 具体的には、『よい仕事おこしフェア』というイベントだ。昨年12月、3年ぶりに20回目を通常通り開催した。2日間の実施で447ブース、約4,700商談、約2万5,000人が来場した。一人では解決できない問題も、多くの人が集まることで新たな技術や商品に変わることがある。
 インターネット上での情報交換のサイトも作成した。日々、売りたい・買いたい、こんなことで困っている、こんな技術を探している、こんな材料を探しているという情報を、全国の企業と交換している。
 城南信金のお客様だけでは解決できなくても、別の地域の信用金庫のお客様であれば解決できることも多くある。そういう方を繋いで課題を解決し、収益改善、売上増に繋げるような取り組みを進めている。
 我々は金融機関なので、金融以外の分野ではたいしたことはできない。だが、人や企業同士を繋ぐ機会を作り、実際に繋ぐことはできる。それが最大の役目かもしれない。

取材に応じる「城南信用金庫」川本理事長
取材に応じる「城南信用金庫」川本理事長


 また、こうした取り組みを進めるなかで、面白いことも起きた。コロナ禍の3年間で、城南信金は新規のお客様が9,668社増えた。融資先全体では約5万1,000社だが、そのパイのなかで約1万社も新たにお客様になっていただいた。
 我々の取り組みが伝わり、皆さんに知ってもらえ、相談先の選択肢となった結果が如実に表れている。
 城南信金ではこれまで融資金利が下がってきて、収益も十分とはいえなかった。だが、今、金利は若干だが上がっている。
 城南信金に行けば相談に乗ってくれるし、解決してくれる。金利は普通でも構わないという傾向になっているのかなと感じている。
 これまでは長らく(金融機関の間で)金利競争が続いてきた。だが、特にコロナ禍になって、問題を解決してくれる金融機関を選ぼうという風潮が出てきた。これこそ差別化といえないだろうか。この点、我々の取り組みは正解だったという手ごたえはある。

―今後の展開は

 大きな銀行では、支店や社員を減らして利益を出そうとしている。だが、我々はそういうことは一切考えない。確かに来店するお客様は減り、機械も省スペース化してきているので、我々の支店も空きスペースは増えた。 
 このため、空いたスペースを地域の方に寛いでいただくための場に転換している。
 例えば、支店のスペースの半分をドトールコーヒーにしてみたり、支店の1階を保育園に貸してみたり、地域の要望に従って、リニューアルに取り組んでいる。
 城南信金に来ると色んな相談にも乗ってもらえるし、色んな人にも会える。そう思ってもらえるよう、地域の皆さんのためのコミュニティの場を作るのも、我々の役目と考えている。
 こうしたこともすべて、過去20回にわたり地域の皆さんの声を聞くなかで出てきたアイディアだ。我々が独りよがりのことをやったところで、何の意味もない。
 いま、地域の方がどんな状態で、どのようなことに苦しんでいるか、何を要求しているのかをまず知ることこそ重要と考えている。



(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年3月24日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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