• TSRデータインサイト

飲食料品の値上げ、1万5,000品目超に 「たまご不足」理由が6社 主要食品メーカー200社の「価格改定・値上げ」調査

 飲食料品の値上げは、社数、品目数ともに増加を続けている。2023年の出荷分で主要食品メーカー200社で、価格改定の対象品目がすでに1万5,000品目を超えた。価格改定を公表した企業は115社(構成比57.5%)に及び、半数以上の企業が原材料のコスト高に加え、パッケージや包材などの資材価格や物流費、エネルギー価格の上昇など、あらゆる要因から値上げを公表している。3月、4月は各月50社前後の値上げが行われる予定で、長期化する値上げの波は今後も継続しそうだ。

東京商工リサーチ(TSR)は国内の主要食品メーカー200社を対象に、2023年1月以降の出荷・納品分で価格改定を公表した商品について調査した。
200社のうち、2023年1月以降の出荷・納品分で値上げを公表したのは115社(構成比57.5%)と6割弱に及ぶ。115社の値上げの対象商品は、1万5,012品と2023年1月の前回調査分(1万36品)から4,976品増えた。
値上げの要因では、マヨネーズや練り物などの商品で、原材料の「たまご」の不足を理由に挙げる企業が6社あった。供給不足から、小売店でも品薄感が続くたまごだが、企業・業界によっては不足の長期化の懸念から、たまごを使用する商品の減産を検討するなど、ひっ迫した原材料の調達環境が続く。

  • 本調査は、国内の主な食品メーカー200社を対象に、2023年1月1日以降出荷・納品分で値上げを表明した商品を文書、ウェブ、開示資料等を基に集計した。本調査の実施は2023年1月に続き2回目。値上げ、価格改定は、2023年2月16日公表分までを対象に集計。


【値上げ率】「5%以上10%未満」が最多

 各社の値上げ対象の商品から代表的な商品を抽出し、その値上げ幅を算出した。
2023年1月以降に出荷・納品の商品のうち、値上げ率「5%以上10%未満」が最多の6,684品(構成比44.5%)だった。次いで、「5%未満」が4,314品(同28.7%)だった。
一方、「10%以上」は1,461品(同9.7%)だったが、2023年1月の前回調査(同5.3%)から4.4ポイント上昇し、値上げ幅の大きい商品の価格改定が拡がった。

0221値上げ率

【値上げ理由別】「原材料」の影響が最多

 値上げ対象の1万5,012品の理由別では、「原材料」が1万4,389品でトップで、9割以上(構成比95.8%)だった。次いで、「資源・燃料」の1万3,905品、「資材・包材」が1万2,184品と続いた。
「人件費」は1,861品(同12.3%)で最下位だが、構成比では前回調査(11.9%)から0.4ポイント上昇した。製造業や情報通信業を中心に、物価高を背景とした賃上げも拡大が見込まれるなか、「人件費」を理由とした商品の値上げは今夏にかけて増加する可能性も高い。 

0221値上げ理由

【分類別】 加工食品がトップ 一方、「だし」原料の高騰を背景に調味料が急増

 価格改定の対象となる1万5,012品の分類別では、最多が加工食品の4,614品(構成比30.7%)で全体の3割を占めた。
次いで、調味料が3,105品(同20.6%)と2割を占めた。調味料は前回調査(同17.4%)から、品目数が1,350品、構成比が3.2ポイント上昇した。とくに「だし」関連商品の原料となる煮干し、さば、かつおなどは「供給不足で、だしの生産に影響する」(調味料メーカー)という。
また、マヨネーズや練り物類などの商品では、たまごの不足が深刻で、調味料、加工食品を取り扱う6社が値上げ理由としていた。 

0221値上げ分類


 主要食品メーカー200社で、2023年1月以降の出荷・納品分で価格改定を表明した商品は1万5,012品となった。月別では、ピークの2月で39社・5,447品だが、すでに4月分が49社・4,736品の価格改定を予定しており、今後増加し、単月での品目数を更新する可能性もある。
原材料の価格上昇を理由とした値上げが9割以上とほとんどを占めるなか、マヨネーズ等を扱う調味料メーカーや練り物を主力に扱う加工食品メーカーでは、たまごの供給不足が、値上げにとどまらず、自社商品の販売数量の制限といった影響にまで波及している。練り物商品を扱う企業では、「たまご不足の長期化が懸念されるため、年末出荷予定の伊達巻や来冬シーズンのおでん商品の減産を検討している」とし、たまごに発端する価格・生産体制の見直しは、さらに深刻化する可能性もある。
年初時点では原材料の高騰や円安による調達コスト増、エネルギー、資材価格の上昇を中心に増加していた飲食料品の値上げだが、人件費の負担に加え、原材料の供給不足など新たな課題も山積し、今後も増加ペースは高い水準で推移しそうだ。

0221値上げ総合


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ