• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

2022年の「休廃業・解散」4.9万件、2年ぶり増加 コロナ支援縮小のなか、黒字率が過去最低の54% ~ 2022年「休廃業・解散企業」動向調査 ~

 2022年(1-12月)の「休廃業・解散」企業(以下、休廃業企業)は、全国で4万9,625件(前年比11.8%増)で2年ぶりに増加した。2000年に調査を開始以降、2020年の4万9,698件にほぼ並ぶ、過去2番目の高水準となった。2022年は企業倒産も3年ぶりに増加に転じている。このため、コロナ関連支援策の希薄化と同時に、先行きの見通しが厳しい場合、市場退出を決断する経営者が増えている。

 コロナ禍での政府や自治体、金融機関の手厚い資金繰り支援が奏功し、2021年は休廃業・解散、倒産はそろって前年を大幅に下回った。なかでも持続化給付金や雇用調整助成金など「給付型」支援は一時的な資金繰り改善だけでなく、コロナ禍で事業環境が激変するなかで債務に類しないキャッシュインとして資金繰り緩和に大きな効果をみせた。ただ、その一方で事業継続の判断の先送りにも繋がり、2021年に休廃業・解散が減少した一因となった。
「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を含むコロナ関連支援策は順次縮小し、コロナ禍の出口戦略のなかで経営の自立・自走が求められることで、企業は決断を迫られている。 

休廃業・解散1


休廃業・解散2

  •   ※本調査は、東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースから、「休廃業・解散」が判明した企業を抽出した。「休廃業・解散」は、倒産(法的整理、私的整理)以外で、事業活動を停止した企業と定義した。

業歴別 業歴20年以上の休廃業・解散が目立つ

 業歴別の構成比は、最多は10年以上20年未満の22.6%(前年21.6%)だった。次いで多かったのは、30年以上40年未満の16.7%(同15.8%)だった。
一方、業歴10年未満は24.1%で、前年(26.6%)を2.5ポイント下回った。業歴の長い企業の休廃業・解散が目立つ結果となった。

産業別 10産業すべて増加

 産業別では、10産業すべてで増加した。
最多は、飲食業や宿泊業、非営利的団体などを含むサービス業他の1万5,876件(構成比32.0%、前年比12.8%増)だった。以下、建設業8,079件(同16.3%、同6.7%増)、小売業5,559件(同11.2%、同4.9%増)と続く。
産業を細分化した業種別(45分類)では、出版社や広告制作などが含まれる情報サービス・制作業が2,765件(前年比31.3%増、前年2,105件)、飲食業が1,899件(同15.6%増、同1,642件)と大幅に増加した。

休廃業・解散4

損益別 黒字率が過去最低

 休廃業する直前期の決算は、2022年は当期損益(最終利益)の黒字は54.9%だった。
2000年に調査を開始以降、黒字率が初めて60%を割り込んだ2021年(56.5%)を1.6ポイント下回り、過去最低を更新した。
黒字率は、2000年が70.0%で、2001年には73.0%に達した。その後、緩やかに下降をたどり、2010年以降は60%台前半で推移していた。
2017年から4年連続で61%台だったが、2021年は一気に60%を割り込み、2022年はさらに下落した。
コロナ禍の経営環境の激変に加え、原材料価格の高騰や人件費上昇など、様々な要因が損益に大きな影響を与え、休廃業の決断を促した可能性が浮かび上がる。

  •   ※直前期は、休廃業・解散から最大2年業績を遡り、最新期を採用した。


    休廃業・解散

代表者年齢 60代以上の構成比が過去最高

 休廃業企業の代表者の年齢別(判明分)は、70代が最も多く42.7%を占めた。以下、80代以上が22.5%、60代が21.2%と続き、60代以上は全体の86.4%を占めた。60代は前年比2ポイント以上減少したが、60代以上の構成比は前年より0.4ポイント増加し、過去最高を更新した。
休廃業企業の代表者の平均年齢は71.6歳(前年71.0歳)、中央値は73歳(同72歳)だった。
事業承継への支援強化もあり、60代までの事業承継が進んでいるようだ。だが、70代以上は事業継承への時間的制約に加え、業績低迷などで事業譲渡先が見つからないケースも多く、廃業以外の選択肢を失っている可能性もある。

地区別 5地区で増加

 地区別では9地区のうち、5地区で増加した。
増加幅が大きかったのは、関東の24.1%増(2万3,985件)。以下、北海道の11.4%増(2,316件)、近畿の4.8%増(6,449件)、中部の4.1%増(5,759件)と続く。関東は、2021年は前年比14.4%減と減少率トップだったが、一転して大幅に増加した。
一方、中国の9.6%減(2,168件)、北陸の4.4%減(1,035件)など4地区では減少した。



 2022年の「休廃業・解散」企業は4万9,625件で、2021年から11.8%増加した。2021年は各種コロナ支援で企業の市場からの退出が抑制されたが、支援策の縮小の影響が表れた格好だ。
2022年の休廃業企業の黒字率は54.9%(前年56.5%)と過去最低を更新した。赤字が慢性化すると事業を畳む際にすべての債務を支払えず、廃業を指向しても破産など法的手続きを選択せざるを得ないケースもある。そういった意味でも、休廃業企業の黒字率低下(赤字率上昇)は、廃業と倒産の垣根が限りなく近付きつつある実態を示すものとして注目される。
黒字率低下は、コロナ禍での最大規模の資金繰り支援の負の側面を映し出している可能性がある。外部環境が大きく変化するなかでの資金給付や貸付は、事業再構築や早期の抜本再生、事業承継などのインセンティブを低下させた面も否めない。
コロナ禍で緊急避難的な措置が求められた事情はあるが、中長期的な事業価値の向上に向けた取り組みを描かないまま、資金繰り支援に依存して時間が経過した企業も少なくない。
政府はコロナ支援の出口戦略として、1月10日からゼロ・ゼロ融資などの返済負担の軽減のため、新たな信用保証制度の「コロナ借換保証」を開始した。金融機関と対話して「経営行動計画書」を作成し、継続的な伴走支援を受けることを条件に借入時の信用保証料を引き下げることが出来る。こうした施策は単なる「返済先送り」でなく、次のステップに向けた取り組みにすべきだろう。
休廃業・解散は地方ほど地域経済への影響が避けられない。経営者年齢が上昇するなか、ステークホルダーと一体となり、事業再構築や事業承継などそれぞれの企業に適した未来を選択できる継続支援が求められる。

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ