売上高はコロナ前に近づく、利益は8割が黒字に ~ 2021年度全国「ゴルフ場経営会社」業績調査 ~
新型コロナ感染拡大のなか、『巣ごもり』や『リモートワーク』など非日常の生活が広がった。
そこで運動不足やコミュニケーション不足、ストレス解消に三密を避けた健康的なスポーツとしてのゴルフが認識され、人気が高まった。
全国の「ゴルフ場経営会社」757社の2021年度(2021年4月期-2022年3月期)の売上高合計は、4,883億5,700万円(前年度比11.1%増)と2年ぶりに増収を果たし、コロナ前の2019年度(2019年4月期-2020年3月期)の5,002億1,200万円にあと一歩まで回復した。
最終損益が判明した508社では、421社(構成比82.8%)と8割が黒字だった。ゴルフ人気を背景にプレーフィーなどが上昇したほか、レストランの売上も伸び、大手ゴルフ場経営会社を中心に黒字決算の企業が増えた。
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によると、ゴルフ場の利用者数は2021年度は1,028万5,659人(前年度比13.3%増)と大幅に増加し、コロナ前の2019年度(929万7,325人)も超えた。2021年度はコロナ禍の影響で、営業自粛もあり利用者数が大幅に減少したが、屋外のゴルフが三密回避のスポーツとして注目され、ゴルフ人口の回復を促した。
ゴルフ場利用者はコロナ禍の広がった2020年夏頃から徐々に戻り始めた。コロナ対応でアルコール販売ができず飲食部門の売上は落ち込んだが、リモートワークや行動制限、外出控えなどでの運動不足の解消を目指してゴルフ人気が再燃。首都圏近郊のゴルフ場では、稼働率がバブル期並みに高まったゴルフ場もある。また、海外メジャー大会での日本人プロゴルファーの活躍が人気を後押ししており、人気がコロナ禍の一過性か底辺拡大の安定期に入ったのか動向が注目される。
- ※本調査は国内のゴルフ場経営会社を対象にして、単体決算で2021年度(2021年4月期-2022年3月期)を起点に、3期連続で業績が比較可能な757社(最終損益は508社)を抽出し、分析した。
売上高、コロナ前水準にほぼ回復
2021年度のゴルフ場経営会社757社の売上高合計は、4,883億5,700万円(前年度比11.1%増)と2年ぶりに増収に転じた。コロナ禍前の2019年度の5,002億1,200万円に及ばなかったが、ほぼコロナ前の水準まで回復した。
当期利益の合計は、2020年度は5億6,500万円の黒字(前年度比90.0%減)と苦戦したが、2021年度はプレーフィーなどで収入が伸びた大手ゴルフ場を中心に急回復し、171億3,300万円(同2932.3%増)と30倍増を果たした。
損益別、黒字企業が8割以上
最終損益では、2021年度は黒字企業の構成比が82.8%と8割を超え、2020年度の58.7%から24.1ポイント上昇した。
一方、2021年度の赤字企業は17.1%で、コロナ前の2019年度から8.5ポイント改善した。
PGMグループやアコーディアグループ、太平洋クラブなど、業界大手が軒並み大幅黒字を計上したほか、中堅クラスでもゴルフ場入場者数が増加し、利益が改善した企業が多かった。
2021年度は約7割のゴルフ場が増収、利用者数の増加が後押し
増減収別では、2021年度は約7割にあたる520社(構成比68.6%)が増収だった。2020年度112社(同14.8%)と比べ408社増えた。一方、減収企業は92社(同12.1%)で、前年度より449社減少し、構成比は59.3ポイント改善した。
売上高伸長率では、最多は10~100%未満が300社(構成比39.6%)、次いで0~5%未満が242社(同31.9%)、5%~10%未満が122社(同16.1%)だった。
従業員「50人未満」が7割超
従業員数別(判明分751社)では、10~50人未満が441社(構成比58.7%)で最多。50人未満は584社(同77.7%)と中堅規模の事業者が7割超を占めた。次いで、50~100人未満が138社(同18.3%)、100人以上が29社(同3.8%)と続く。
また、業歴別(判明分651社)では50~100年未満が330社(構成比50.6%)と半数以上を占めた。次いで10~50年未満が307社(同47.1%)、5~10年未満が8社(同1.2%)と続く。業歴100年以上も5社(同0.7%)ある。
公益財団法人日本生産性本部の「レジャー白書2022」によると、2021年のゴルフ場の市場規模は8,340億円で、2020年(7,180億円)から急回復した。ただ、ピークの1992年の1兆9,610億円と比べると回復はまだ道半ばとなっている。
日本には2,207カ所のゴルフ場があり、2021年の年間の利用者数は延べ8,969万人にのぼっている。だが、ゴルフ場数はピークの2002年に比べ253カ所減少し、利用者数もピークの1992年に比べ約1,263万人減少している(2021年一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会調べ)。
一方、2022年のゴルフ場経営会社の倒産は、愛知県の(株)秋葉ゴルフ倶楽部(TSR企業コード:512030723、新城市)など、10件発生している。2019年以降、ゴルフ場倒産は1ケタ台で推移していたが、2022年は2018年(19件)以来、4年ぶりに2ケタ台に乗せた。まだ預託金の償還問題を抱えたゴルフ場もあり、コロナ禍の業績好調も手放しで喜ぶことはできない。
ゴルフ愛好者の中心層である団塊世代が2023年に後期高齢者となり、ゴルフ人口の減少が懸念されていたが、コロナ禍で若年層の愛好者が増えたほか、40代以降にもゴルフ熱が広がっている。
また、コロナ禍の行動制約で、むしろ健康やレジャー志向への意識を高く持つ熱心なゴルファーも増えてきた。
今後、ゴルフを楽しむ若い世代や女性ゴルファーに、どれだけ充実したサービスを提供できるかが問われている。ただ、ゴルフ場だけでなく、アウトドアの練習場が減少するなか、ビル内のインドアゴルフ練習場は急増しており、ゴルフ用具など周辺産業への波及効果も期待される。