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「望ましい円相場」1ドル=120円以上125円未満 円安は製造業・宿泊業などで「プラス」も  ~ 2022年12月 「円安に関するアンケート」調査 ~

 10月21日に一時、1ドル=150円台まで円安が加速した。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速への言及などで、11月末の円相場は1ドル=138円前後まで円高が進んだ。12月14日には、FRBが政策金利の引き上げ幅を0.5%に決定したことで、 1ドル=135円とやや円高に振れた。年初の1ドル=115円前後には及ばないが、急速に進んだ円安はここにきて落ち着きをみせている。

 東京商工リサーチが12月1日~8日に実施したアンケート調査で、11月末の「1ドル=138円前後」の円安が、経営に「マイナス」と回答した企業は47.4%だった。
 「1ドル=143円前後」の水準だった前回調査(10月)の54.1%からは6.7ポイント改善した。これは「1ドル=137円前後」だった8月調査の48.7%とほぼ同水準で、為替変動が経営に直結していることを示している。
 規模別では、「マイナス」は中小企業が47.9%、大企業は44.0%だった。前回調査からそれぞれ6.8ポイント、6.2ポイント改善し、円安の落ち着きに伴い影響にも若干の緩和がみられる。
 業種別では、「マイナス」とした上位10業種は、食品関連やアパレル企業が多くを占めた。一方、「プラス」の影響では上位10業種は製造業が中心だったが、入国制限の緩和と円安によるインバウンドの増加を見込んだ「宿泊業」もランクインした。
 「望ましい円相場」の最多レンジは、「120円以上125円未満」で4社に1社(25.9%)を占めた。

  • 本調査は、2022年12月1日~8日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答4, 567社を集計、分析した。
    資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
    前回調査は、2022年10月17日発表。

Q1.今年11月末(1ドル=138円前後)の為替水準は貴社の経営にとってプラスですか?マイナスですか?(択一回答)


「マイナス」影響の企業、6.7ポイント改善

 1ドル=138円前後の円安が経営に及ぼす影響について、「マイナス」と回答した企業は47.4%(4,567社中、2,166社)だった。前回調査(10月、1ドル=143円)の54.1%と比べ、6.7ポイント改善した。1ドル=137円前後だった8月調査(48.7%)との差は1.3ポイントで、為替水準と企業への「マイナス」影響が連動していることがわかる。
 「プラス」は3.5%(163社、前回調査2.5%)、「影響はない」は28.6%(1,308社、同23.4%)だった。
 規模別では、「マイナス」は大企業が44.0%(635社中、280社)に対し、中小企業は47.9%(3,932社中、1,886社)で、中小企業が3.9ポイント上回った。
 前回調査からは、それぞれ6.2ポイント、6.8ポイント「マイナス」影響の割合が低下した。

円安アンケート


業種別 食品関連やアパレル企業で円安による「マイナス」影響続く

 Q1で「プラス」、「マイナス」と回答した企業をそれぞれ業種別(業種中分類、回答母数20以上)で分析した。
 「プラス」の業種トップは「電子部品・デバイス・電子回路製造業」の14.2%(42社中、6社)だった。以下、「その他の製造業」11.7%(51社中、6社)、「業務用機械器具製造業」11.6%(43社中、5社)と続く。
 上位11業種中8業種を輸出企業の多い製造業が占めた。また、入国制限の緩和に伴い、「宿泊業」の11.1%(27社中、3社)が円安の恩恵を受けた。
 一方、「マイナス」の業種トップは「家具・装備品製造業」の82.6%(23社中、19社)。次いで、「繊維・衣服等卸売業」79.5%(49社中、39社)、「食料品製造業」76.2%(139社中、106社)、「飲食店」76.0%(25社中、19社)の順。ワースト4業種で「マイナス」企業が7割を超えた。
 食品に関連した業種やアパレルなどを中心に「マイナス」の割合が高く、円安による製品や原材料の輸入コスト上昇が企業業績に影響を与えていることがわかる。

円安アンケート


Q2. 貴社にとって望ましい円相場は1ドルいくらですか?(択一回答)


希望レート「120円以上125円未満」が初めて最多レンジに

 望ましい円相場について、2,278社から回答を得た。
 最多レンジは、「120円以上125円未満」の25.9%(591社)だった。前回調査(10月)の25.5%から0.4ポイント上昇し、定期的な調査を始めた2022年4月以降で初めて最多レンジとなった。以下、「110円以上115円未満」の24.9%(569社)、「130円以上」の14.8%(338社)、「115円以上120円未満」14.0%(321社)と続く。
 希望レートを「130円以上」と回答した企業の割合は、前回調査の8.1%から6.7ポイント上昇した。「1ドル=130円以上」の為替相場が長期化し、円安への企業の対応も進みつつあるとみられる。
 最頻値はすべての規模で120円だった。

円安アンケート



Q3.今年に入ってからの為替変動の影響について伺います。貴社は、商品や部材の輸出量を昨年より変化させましたか?(択一回答)


輸出量「増加」、輸出企業の3割

 輸出を手掛ける818社から回答を得た。
 「増加させた」は15.2%(125社)、「現時点で変化ないが、今後増加させる」は15.8%(130社)で、合計31.1%が輸出量の「増加」に言及した。円安進行が落ち着いたことで、前回調査の38.0%からは6.9ポイント低下した。
 輸出量「増加」の業種別(中分類、母数5以上)では、「飲料・たばこ・飼料製造業」が85.7%(14社中、12社)で前回調査(10月、100.0%)と同様に最多だった。
 上位10業種のうち、6業種が製造業だった。


Q4.今年に入ってからの為替変動の影響について伺います。貴社は、商品や部材の輸入量を昨年より変化させましたか?(択一回答)


輸入量「減少」は1.2ポイント低下の23.0%

 輸入を手掛ける1,351社から回答を得た。
 「減少させた」は13.9%(188社)、「現時点で変化ないが、今後減少させる」は9.1%(124社)で、合計23.0%が輸入量の「減少」に言及した。前回調査の24.2%からは1.2ポイント低下した。代替先確保の難しい輸入企業は、輸出企業に比べて為替変動による扱い量の変化は小さい傾向にあるようだ。
 輸入量「減少」の業種別(中分類、母数5以上)は、「物品賃貸業」の66.6%(6社中、4社)が最多だった。

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