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休廃業・解散相次ぐ「制服屋さん」、問題山積の業界の悲鳴

 学生服の販売をめぐり、採寸して学生服を仕立てる 「制服屋さん」の経営環境が厳しさを増している。少子化で制服を必要とする生徒数は年々減少する一方、制服は多様化している。従来の収益モデルが成り立たなくなっている。こうしたことも背景に休廃業は後を絶たず、業界の先行きには暗雲が立ち込めている。
 今年4月、都内の制服販売会社がメーカーからの納品遅れやコロナ禍での物流の乱れなどで、数十名の新入生が入学式までに制服を受け取ることが出来なかった。このケースは広く報道され、会社側が記者会見して謝罪する事態にまで発展した。
 当事者へのインタビューや関係データを辿ると、制服屋さんを取り巻く状況と課題が浮き彫りとなってきた。


   

休廃業・解散は2010年代以降高止まり

 2000年以降の「制服屋さん」の休廃業・解散は、2008年まで1桁台で推移していた。2009年に一時的に増加し、その後は再び1桁台の低水準だったが、2015年以降は2017年を除いて10件台での高水準で推移している。
 2000年~2021年までの累計件数でみると、最も多かった愛知県(14件)を除き、兵庫県(10件)、京都府(7件)、群馬県、佐賀県、香川県、徳島県、福岡県(各6件)と西日本での休廃業が目立つ。

「制服屋さん」の休廃業・解散推移

「過酷な納品スケジュール」

 制服屋さんの繁忙期は、例年、中学・高校の合格発表が始まる1月下旬から徐々に突入する。忙しさは2月以降加速し、私立高校の2次募集の合格が発表される3月下旬にかけて集中する。とくに発表の遅いケースでは、合格発表から10日ほどで入学式を迎えるケースもある。首都圏の中学・高校の合格発表スケジュールは、おおむね私立中学が2月初旬。その後、都立の中高一貫校が2月上旬、私立高校が2月下旬、3月の初旬に都立高校の順だ。
 このため、制服屋さんは社内に相応の在庫を抱える必要がある。(株)ムサシノ商店(TSR企業コード:290415373、武蔵野市)の田中秀篤社長は、「昔と比べて学校説明会や合格発表が遅くなり、時代の流れとともに進学先選びの考え方も変わってきた。1校だけに絞らず、いろいろな学校を進学先として考える生徒が増え、以前に比べ、先々の受注状況が年々読みにくくなっている」と現状の厳しさを説明する。
 どこの学校にどれほど入学するのか。制服の多様化や私立高校の実質無償化、学校の入試制度の変更も絡み合い、以前は予測しやすかった各校入学者の男女比も流動的になった。これは在庫の見積りを困難にしており、この傾向は年々加速しているという。「余剰在庫のメーカーへの返品が効かない」(業界関係者)という業界の慣例がある一方で、学校ごとの入学者数を予測することが難しい早い時期に発注する必要に迫られる。
 「予測が外れるということは、店に制服の在庫がないということ。お客様への納品スケジュールは、さらにタイトになってしまう」田中社長は現状を訴える。
 夫婦だけで経営しているような零細規模の制服屋さんでは、期日までの納品が困難なために、新入生からの受注をストップする業者もあるほどだという。さらに、硬直化した業界構造に先行きを見出せず、事業継続を断念する制服屋さんも少なくない。

生徒数20年で2割減、しかし学校数は・・・

 少子化も大きな悩みの種となっている。文部科学統計要覧によると、2000年に836万957人だった全国の生徒数(中学校、高校、現在の特別支援学校、中等教育学校の生徒)は、2021年に641万6,910人へ減少した。21年間で194万4,407人、率にすると2割以上(23.2%)減った。ただ、学校数(中学校、高校、現在の特別支援学校、中等教育学校)は2000年の1万7,673校から2021年は1万6,148校で、1,525校(8.6%)減と1割弱の減少にとどまる。
 私立高校は、2000年では1,318校だったが、2021年は1,320校と増加している。さらに2020年には、私立高校も授業料が実質無償化されたことで、生徒にとっては学校の選択肢が拡がった。一方で、制服屋さんは「多種類・少ロット」を余儀なくされ、利益を生み出しにくい環境が出来上がってしまった。
 さらに、「かわいい」「格好良い」制服は進学先を選択する重要な要素となっており、制服屋さんの悩みは尽きない。

全国の学校数と生徒数の推移

入学前の「納品トラブル」も発生

 こうした状況もあり今年4月、東京都西部(三多摩地区)と神奈川県北部を商圏に展開するムサシノ商店で、入学式前日までに手元に制服が届かない事態が発生した。新入生らの不安の声がSNSに投稿され、瞬く間に拡散し、問題化した。この事例は、長年続いて来た学生服業界の慣例の「限界」を露呈した。
 コロナ禍による輸送体制の混乱に加え、学生服メーカーの工場で感染者が相次いだことなどから、商品が従来通りのスケジュールで到着しない事態が発生。田中社長は「これまで通り、ぎりぎり制服が届くスケジュールで受注していたが、トラブルが重なって納品が困難となった」と振り返る。
 結局、入学式当日までに数十名の顧客に制服が届かなかった。

「制服屋さん」だけの責任か

 製造メーカーの出荷遅れが直接の原因となったケースだが、こうした事態に対応できないムサシノ商店の流通システムの脆さも事態を深刻にした。同社の対象エリアは、西東京地域など一部に限られ、繁忙期が2カ月間と限定される商材を扱う事業の性質上、こうしたシステム投資の対応が難しい面もある。
 ムサシノ商店ではこの夏、長引くコロナ禍や変容する外部環境への適応に向けて、再発防止策を講じたという。メーカーとの協力体制を構築し、店舗で抱える在庫数を適正化する仕組みを整えた。また、自社の物流体制の再構築を目的に、地場の物流会社とタッグを組んで納品スペースを拡大したことに加え、繁忙期にムサシノ商店の商品を保管できる物流拠点や人材を期間限定で確保できる体制を敷いた。
 「通年で納品スペースや人材を確保するのは難しい。繁忙期だけピックアップ作業をしてくれる会社があり、大変助かった」と田中社長は自信をみせる。
 3カ月後に迫った来春の納品は真価が問われる場面だ。


 制服屋さんを取り巻く事業環境が年々厳しさを増すなか、彼らの努力だけで乗り越えられるものなのだろうか。このまま放置しておけば、来年以降またどこかで同様の納品遅れが発生してしまう可能性もある。とくに、ムサシノ商店のような企業は、地場で長い実績を持ち、相応の規模を誇るため、小規模店舗であれば期日に間に合わないような急場の注文に対応する「受け皿」としての側面も持つ。
 さらに、制服の価格には学校の意向が強く反映される。2020年、高校授業料が実質無償となったが、学びの場で活用する教材や制服に関しては、自治体の定める収入制限を下回る対象世帯以外、行政からの助成金はない。しかも、助成基準は自治体によって異なり、都心部の平均的な収入の世帯では、子供1人の進学時に十数万円を要するケースは稀ではない。原材料高や物流費が高騰している中、制服の値上げは容易ではなく、制服屋さんの経営を苦しめている。
 少子化が加速化する中で、生徒とその家庭同様に、「制服文化」を支える仕組みづくりも求められそうだ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2022年11月22日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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