• TSRデータインサイト

「調達遅れ」74.5%、「全額転嫁」5.8% ~原材料・資材の「調達難・コスト上昇に関するアンケート」調査~

 コロナ禍やウクライナ情勢、円安進行などで企業の原材料調達や生産体制に支障が生じている。 
原油・原材料価格の高騰に伴うコストアップを販売価格に「転嫁できていない」企業は46.0%あり、全額を転嫁できている企業は5.8%にとどまった。また、原材料・部品の調達遅れが生じている企業は74.5%に達し、依然として物価上昇の影響が尾を引いていることがわかった。
東京商工リサーチ(TSR)は10月3日~12日、企業活動への影響に関するアンケートを実施した。
世界規模でサプライチェーンが形成される自動車関連などでは95%を超える企業が「調達遅れが生じている」と回答した。
調達価格の高騰分を「転嫁できていない」企業は46.0%だった。前回調査(8月)の48.5%からは2.5ポイント改善したが、まだ半数近い企業が転嫁できない。また、価格転嫁できた割合を「10割」(全額転嫁)と回答した企業は5.8%(前回調査5.5%)にとどまり、コロナ禍のなかで円安やエネルギー価格の上昇、原材料高騰などの複合要因に、国内企業は翻弄されている。

  • 本調査は、2022年10月3日~12日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,214社を集計・分析した。
    前回調査は、2022年8月22日公表(アンケート期間:8月1日~9日)。
    資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。

Q1.世界的な原材料不足に伴い、貴社の商品・サービスの生産・販売に関して、必要となる原材料や部品の調達遅れは生じていますか?(択一回答)


「調達遅れが生じている」が 74.5%

最も多かったのは、調達遅れが「生じており、昨年より悪化している」の31.3%(5,214社中、1,634社)。また、「昨年と変わらず生じている」は26.8%(1,402社)、「生じてはいるが、昨年に比べて正常化しつつある」は16.2%(849社)だった。これらを合計した「調達遅れが生じている」は74.5%にのぼる。
「生じている」と回答した企業を業種別で分析した(業種中分類、回答母数20以上)。
構成比が最も高かったのは、「機械器具小売業」の97.1%(71社中、69社)だった。

(全企業6,230社)

Q2.Q1で「生じており、昨年より悪化している」、「昨年と変わらず生じている」、「生じてはいるが、昨年に比べて正常化しつつある」と回答した方に伺います。原材料や部品の円滑な調達に向けて、現在どのような対応策を取っている(取る予定)ですか?(複数回答)


「国内回帰」は2.8%

Q1で、調達遅れが「生じている」とした企業のうち、3,649社から回答を得た。
最多は、「調達先の分散」の49.6%(1,811社)だった。以下、「在庫の積み増し」の41.2%(1,504社)、「代替的な原材料、部品への切り替え」の36.6%(1,338社)と続く。
また、「生産拠点の変更」の回答も目立ち、「国内回帰」は2.8%(103社)、「国内回帰以外」3.6%(135社)だった。
一方、「対策は取っていない」は16.3%(598社)だった。このうち、大企業は12.0%(465社中、56社)、中小企業は17.0%(3,184社中、542社)で5ポイントの開きがあった。
その他は、「提供できる商材のみで対応」(事務機械器具小売業、資本金1億円未満)、「早期の発注」(木造建築工事業、資本金1億円未満)など。 

「調達先の分散」が最多

Q3.世界的な原油・原材料価格の高騰によって、貴社は調達コスト増加の影響を受けていますか?(択一回答)


すでに「調達コストが増加」、8割超

「影響を受けている」が80.6%(5,325社中、4,294社)、「現時点で受けていないが、今後影響が見込まれる」が10.9%(582社)で、合計91.5%の企業が調達コストの増加に言及した。前回調査では90.7%だった。
規模別では、調達コストの増加に言及した企業は、大企業91.8%(702社中、645社)、中小企業91.5%(4,623社中、4,231社)。前回調査では、それぞれ91.0%、90.6%だった。

(全企業5,325社)

Q4.Q3で「影響を受けている」と回答された方に伺います。原油・原材料の高騰に伴うコスト増のうち、何割を価格転嫁できていますか?


約5割が「転嫁できていない」

「転嫁できていない」は46.0%(3,306社中、1,524社)とほぼ半数に達した。一方、「10割」(全額転嫁)は5.8%(194社)にとどまった。前回調査では、それぞれ48.5%、5.5%だった。
規模別では、「転嫁できていない」は大企業が45.7%(354社中、162社)に対し、中小企業は46.1%(2,952社中、1,362社)だった。
「転嫁できていない」と回答した企業を産業別でみると、受託開発ソフトウェアや情報提供サービスが含まれる「情報通信業」は80.0%(80社中、64社)だった。役務提供の業種は、価格転嫁が難しいようだ。
一方で、「卸売業」は30.5%(791社中、242社)、「製造業」は36.8%(1,182社中、436社)だった。BtoBが主体の業種で価格転嫁が進んでいる。

「転嫁できていない」

 今回の調査で、必要な原材料・部材の「調達遅れが生じている」と回答した企業は74.5%で、前回調査(8月)の74.3%を僅かに上回った。コロナ禍やウクライナ情勢、加速する円安などによるサプライチェーンへの影響が依然として大きいことがわかった。
「調達遅れが生じている」と回答した企業の割合が高い業種をみると、上位には自動車関連や製造業が並ぶ。一方で、「設備工事業」91.2%、「農業」90.9%なども9割を超えており、影響は幅広い業種に及んでいる。
また、原油・原材料価格の高騰で調達コスト上昇による「影響を受けている」と回答した企業は80.6%にのぼる。将来的な影響見込みを含めると91.5%に達し、前回調査の90.7%を0.8ポイント上回った。
「影響を受けている」と回答した企業のうち、価格転嫁が「10割」(全額転嫁)と回答した企業は5.8%にとどまっている。価格転嫁が進まない背景には、可処分所得が上がりにくいことや過当競争など、企業が最終製品(サービス)への価格転嫁に慎重にならざるを得ない状況もありそうだ。転嫁が進まないとサプライチェーンに属する企業間で痛み分けの構図が続くが、川下産業で体力の乏しい中小企業ほど痛手が大きくなりがちだ。倒産や廃業など市場からの退出に繋がりかねず、対応は緊急の課題だ。

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「建設コンサルタント」 の業績拡大 ~ 災害対策や老朽化修繕など、安全対策が寄与 ~

2025年1月に埼玉県八潮市で発生した下水道管の破損による大規模な道路陥没事故から1年が経過した。事故を機に普段何気なく利用するインフラの老朽化を身近に感じた人も多いだろう。工事を直接担うのは建設会社だがその裏で設計監理する土木工事の「建設コンサルタント」の業績が好調だ

2

  • TSRデータインサイト

病院経営の法人、採算悪化で赤字法人が5割に迫る 収入は微増、利益はコロナ禍から1兆円以上の大幅減

全国で「病院」を経営する6,266法人の直近決算は、約半数にのぼる3,021法人(構成比48.2%)が赤字だったことがわかった。赤字法人率はコロナ禍以降、3年連続で上昇した。

3

  • TSRデータインサイト

2月の「人手不足」倒産 「求人難」が3.3倍に急増 従業員の採用と賃上げで中小企業は苦悩強まる

2026年2月の「人手不足」倒産は47件(前年同月比147.3%増)で、2025年9月の48件以来、5カ月ぶりに40件台に乗せた。2026年1-2月累計は83件(前年同期比45.6%増)で、同期間では調査を開始した2013年以降、最多だった前年の57件を大きく上回り、増勢を強めている。

4

  • TSRデータインサイト

2月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は27件 返済開始の最後のピークを控え、今後増勢の懸念も

2026年2月の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用した企業の倒産は、27件(前年同月比18.1%減)で、2カ月連続で前年同月を下回った。

5

  • TSRデータインサイト

2月の「税金滞納」倒産は10件、3カ月ぶりに減少 10件すべて破産、税金滞納が経営再建の障害に

2026年2月の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、10件(前年同月比33.3%減)だった。3カ月ぶりに前年同月を下回り、2月としては2年連続で減少した。

TOPへ