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ワタミ・渡邉美樹代表 熾烈な居酒屋業態「鳥メロ、ミライザカの新規出店はしない」 単独インタビュー(前編)

 コロナ禍第7波の新規感染者数は峠を越えたが、コロナ禍は2年半を経過する。
 コロナ禍では、飲食や旅行、宿泊、アパレル関連など、対面型サービス業が大きな打撃を受けた。なかでも、飲食業の倒産は2020年(1-12月)に842件発生し、過去最多を記録した。
 東京商工リサーチ(TSR)は、飲食チェーン大手のワタミ(株)(TSR企業コード:350488649、大田区、東証プライム)の渡邉美樹・代表取締役に、コロナ禍で変化した居酒屋業態や国会議員時代に感じた政治の「違和感」について聞いた。
 渡邉代表はワタミの創業者。議員活動に専念するため経営から離れたが、2019年に代表に復帰した。その直後にコロナ禍に見舞われ逆風が吹き荒れるなか、宅食やテイクアウト事業を加速させ、いまや「居酒屋のワタミ」から宅食へ主軸を移しつつある。


―居酒屋の需要が戻らない。この3年を振り返り、一番つらかった時期は

  コロナ禍の最初の時期が一番厳しかった。休業補償もなく、どんどん赤字になった。その後、厳しい状況にありながらも休業補償などが受けられることになり、営業利益は赤字でも経常利益で帳尻があうところまでもっていけた。居酒屋業界は、2020年は(コロナ関連)融資に支えられたが、今が一番厳しいと思う。ここからさらに厳しくなるかもしれない。

―コロナ前から店舗数を半分以上減らした大手居酒屋チェーンもある

 ワタミの場合は家賃の高い店舗を閉め、物流も見直し、売上がコロナ前の2019年比の7割を確保できれば黒字をあげられる体質になんとか変えてきた。だが、どう頑張ってもそこまで届かない。この状況が続くと、赤字店舗のさらなる閉店も検討せざるを得なくなる。ワタミは、居酒屋関係でもともと約500店舗だったが、今は250店舗になった。

―そのうちの1割ほどが撤退予備軍と聞く

 ただ、10月に各店舗で売上がコロナ前比の7割まで回復すれば、不採算店の撤退も行わずに済むかもしれない。

ワタミ前編

‌コロナ禍での居酒屋業態、宅食業態について語る渡邉代表

―他社になるが、「串カツ田中」や「鳥貴族」のような専門業態は店舗数を概ね維持している

 一つ言えるのは、コロナ禍でお客様が具体的に「何を食べに行くか」を決め、そういう動機で動き始めたことだ。一方で、個人的に感じているのは「もう1度総合居酒屋が来るだろう」ということ。総合居酒屋と言っても「なんでもある」ではなく、「なんでもおいしい」居酒屋。ワタミも新業態の“こだわりのれん街”を出店したが、他の居酒屋業態よりも10~15%ぐらい(売上が)上だ。お客様に支持されている。
 専門店のニーズはあるだろう。ただ、食べたいものが一緒ならいいが、「俺は肉食べたい」「俺は魚食べたい」という時もある。この場合、「のれん街」のような店舗の方が使い勝手が良い。

―「のれん街」の出店は現在、大井町と仙川(ともに東京)だ。次のターゲットは?

 繁華街やオフィス街ではなく、住宅街を狙う。もともとワタミは「家族が使える居酒屋」として広がった。こういう時代だから一気に出店するのは難しいが、今後の出店は「のれん街」の形態だ。ミライザカ、鳥メロの新店は考えていない。広さも40~50坪あれば大丈夫だ。これからの時代、大型店を作ってはいけない。大人数の宴会も入らないが、繁華街の若者の需要はまだある。だが、昔のように20~30人での利用はもちろんないし、せいぜい4人ぐらいまでだろう。

―「からあげの天才」の店舗が一時期に比べ減っている

 直近では、お弁当の販売を始めたり、ゴーストレストランをやったり、ドラマ「六本木クラス」とのコラボメニューを出して訴求を図っている。出店当初の頃のように 「爆当たり」はしていないが、(全国で)90店ぐらいを底にして店舗のスクラップもそろそろ止まる。9月時点で20店ほどの(フランチャイズの)申込みが来ているので、また増えると思う。

―ワタミの飲食全体の店舗数は

 居酒屋は減るかもしれないが、焼肉店は増やす。全体としてはそれほど減らない。

―宅食事業を強化しているが、宅食の中でもミールキットは競合も多い

 ワタミは明確にターゲットを決めている。「PAKU MOGU(ぱくもぐ)」は、2~4歳の子どもを持つ親御さん向けで、味付けもメニューもすべてそういうコンセプトだ。「あっ!とごはん」は、働くお母さんが買い物する手間がないように。あとは仕事で忙しい単身世帯の「家で簡単に作りたい」というニーズ向けだ。それぞれに合わせた味づくりで、価格よりも味で攻めたいと思っている。結果として安ければいいが、それより「どこよりもおいしい」ことを意識している。

―それでも価格は他の大手より安い

 価格はあまり意識していない。これは、もともとのワタミの「仕入れ力」だろう。結果、他社よりも安かったというだけだ。

―今後のワタミの収益構造は、外食よりも宅食事業がメインになるのか

 宅食だろう。居酒屋はもうマーケットが伸びない、守りの状態だ。せめて赤字が出ないくらいお客様が戻ってくれば。利益20~30億円の事業だと思っている。だが、宅食はすでに40~50億円の利益が出る事業。これから2040年まで高齢者は増えるので、それまでは宅食事業を確実に伸ばしたい。

―2021年3月、日本政策投資銀行などのファンドを通じて飲食業、宿泊への資本性資金の特例措置が決まった。菅総理(当時)の意向が働いたと聞くが

 菅総理に「いま、外食産業はこれだけ苦しんでいます」と業界の窮状を伝えた。すると「どうしたらいいの」と(聞かれた)。そこで、私は「外食がいま欲しいのは“融資”ではない。資本である」とお伝えした。資本じゃないと自己資本が薄まってしまうので、自己資本比率が落ちる。救える道は、資本性ローンを政府系(金融機関)が出すしかない、と。
 当時、金曜に私は(菅)総理に電話して、あっという間に閣議決定されたから。すごいスピードだった。その中で、うちがたまたま1号に選ばれた、というだけのこと。1号であったことは菅さんとの関係はまったくない。別のルートで動いていた。

―その支援を業態転換活用したのか

 そう。資本性ローンを活用した企業は、それでなんとか生き残ったのではないか。ただ、これは返す必要があるお金だ。なおかつ金利が高い。我々は120億円を借りたが、毎年4億近い金利を払う。今のゼロ金利の情勢からすると、とても高い金利だ。ワタミは、あと7年で全額を返済する。みなさん「これから返すのが大変だ」という段階に来ている状況だろう。

―返せない会社は出てくるのか

 かなり出てくるだろう。そういうところは、もう10年ジャンプするだろう。ジャンプした場合はもう10年、さらに金利を払い続けることになる。倒産は、今は小康状態だが、増えていくだろう。

(続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2022年10月7日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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