破産は2年連続で8万件割れ、人口比は北海道がワースト ~ 2021年「破産新受事件」の状況調査 ~
2021年の人口比で見た都道府県別の自然人の破産率は、北海道(0.0760%)が2015年から7年連続で最も高かった。破産率の上位20位では、九州8県、東北4県、関東1都3県、近畿1府1県、北海道、四国1県で、九州は全県、東北も6県のうち4県が入り、地域間の差が大きかった。
司法統計によると、2021年の全国の地方裁判所で受理した法人や自然人の破産新受事件(以下、破産)は7万3,457件(前年比5.9%減)で、コロナ禍のなかで前年に続いて2年連続で8万件を下回った。新型コロナ感染拡大に伴う資金繰り支援や各種助成金などが奏功し、破産の減少に繋がったとみられる。
- ※本調査は、最高裁判所がまとめた2021年の「司法統計年報」を基に、東京商工リサーチ(TSR)のデータなどを加え、分析した。
破産件数 2年連続減少で8万件を下回る
2021年の全国の地方裁判所で受け付けた破産件数は7万3,457件(前年比5.9%減)で、2017年(7万6,015件)も下回り、コロナ禍を挟んだ5年間で最少だった。
破産の内訳は、自然人が6万8,413件(前年7万1,838件)、法人・その他が5,044件(同6,266件)で、自然人(個人)が93.1%を占めた。また、債務者が申請する自己破産は、自然人が6万8,240件(前年7万1,678件)、法人・その他が4,871件(同6,085件)だった。一方、債権者が申し立てる第三者破産は自然人が173件(同160件)、法人・その他が173件(同181件)で、合計346件(同341件)だった。
破産は、2017年7万6,015件(前年比5.8%増)、2018年8万12件(同5.2%増)、2019年は消費税率引き上げや景気後退もあり8万202件(同0.2%増)と、コロナ前まで増加をたどっていた。
しかし、2020年は新型コロナウイルス感染拡大に伴い企業業績が急激に悪化した。このため、コロナ関連の緊急小口資金や総合支援資金、実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)など、一般家庭や企業向けの資金繰り支援策が次々に施行され、破産は7万8,104件と8万件を下回った。続く2021年はさらに7万3,457件に減少し、2年連続で前年を下回った。
破産の減少率は、2020年の前年比2.6%減から、2021年は同5.9%減と、3.3ポイント拡大した。
都道府県別 企業破産の破産率
2021年の各地方裁判所での破産件数に対するTSR集計の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、破産の構成比を算出した。
構成比が最も高かったのは、京都府で13.6%。次いで、富山県13.3%、岐阜県11.6%、石川県11.1%、和歌山県11.0%の順で、10.00%以上は1都2府6県だった。近畿・北陸が2府4県と大半を占めた。
一方、最も低かったのは宮崎県の2.5%。次いで、岩手県3.0%、北海道3.1%、秋田県3.2%、沖縄県3.6%の順。
- ※破産は法人と自然人があり、個人企業の場合は自然人に含まれる。また、自然人には法人の経営者も入るため、法人倒産とダブルカウントされる可能性があり、この破産率は参考にとどまる。
増加は4県にとどまる
都道府県別では、破産件数が前年を上回ったのは4県、減少が42都道府県、同数が秋田県(秋田地裁)のみだった。
コロナ前の2019年は、増加が24道県、減少が23都府県で、増加が減少を上回っていた。だが、コロナ禍の2020年は増加15県、減少31都道府県と、減少と増加が逆転し、2021年は増加は4県に大幅に減少、政策効果が広がった。
ただ、2022年は円安、資源高、ウクライナ情勢などを背景に、食料品などの物価高に加え、電気・ガスなどの光熱費が上昇する一方、コロナ関連支援策は縮小に向かっている。企業業績の回復や雇用確保などが安定しないと、再び破産が増加に転じる都道府県が増える可能性も出ている。
地区別でみると、9地区すべてが前年を下回った。減少率の最大は、北陸の前年比12.2%減(1,323→1,161件)。次いで、東北の同7.2%減(5,209→4,829件)、四国の同7.13%減(2,089→1,940件)、近畿の同7.11%減(1万4,146→1万3,139件)、九州の同6.5%減(9,746→9,108件)の順。
増加率トップは群馬県の6.8%増
破産の増加率は、群馬県が前年比6.8%増(837→894件)で最大。以下、沖縄県が同4.4%増(768→802件)、千葉県が同3.5%増(3,667→3,796件)、神奈川県が同1.1%増(5,521→5,583件)と続く。2年連続で破産が増加した都道府県はゼロだった。
一方、減少率の最大は、山梨県が同21.0%減(500→395件)。次いで、大分県が同17.8%減(806→662件)、富山県が同17.4%減(436→360件)の順。2年連続で破産が減少したのは26都道府県だった。
人口対比の自然人破産率 北海道が0.0760%でワースト
2020年「国勢調査」に基づく都道府県別の人口に対する自然人の自己破産率は、ワーストが北海道の0.0760%(前年0.0843%)だった。人口522万4,614人に対し、自然人の自己破産は3,971件。以下、大阪府の0.0742%(同0.0774%)、宮崎県0.0678%(同0.0711%)と続く。
一方、最少は富山県の0.0309%(同0.0371%)で、北海道は富山県の2.4倍だった。
全人口に対する自然人の自己破産率0.0541%を上回ったのは、15都道府県だった。
自己破産の割合100.0%は7県
2021年の破産件数7万3,457件のうち、自己破産は7万3,111件(前年比5.9%減)だった。
自己破産の割合が100.0%は7県(構成比14.8%、前年10県)だった。
このほか、「99.0%以上100.0%未満」が37道府県(同78.7%、同36道府県)、「98.0%以上99.0%未満」が2都県(同4.2%、同1都)、「96.0%以上97.0%未満」が1県(同2.1%、同ゼロ)。
自己破産の比率が96.6%で最も低かった和歌山県は、2021年の破産件数480件(前年490件)のうち、自己破産は464件(前年486件、前年構成比99.1%)だった。
あわせて読みたい記事
この記事に関するサービス
人気記事ランキング


銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円
国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。
2

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明
コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。
3

「調剤薬局」 中小・零細はリソース不足で苦戦 大手は戦略的M&A、再編で経営基盤を拡大
調剤薬局の大型再編が加速するなか、2025年1-8月の「調剤薬局」の倒産は20件(前年同期比9.0%減)で、過去最多の2021年同期と2024年同期の22件に迫る多さだった。今後の展開次第では、年間初の30件台に乗せる可能性も高まっている。
4

りそな銀行、メイン取引先数が増加 ~ 大阪府内企業の取り込み加速 ~
関西や首都圏で大企業から中堅・中小企業のメインバンクとして確固たる地位を築くりそな銀行。「2025年全国メインバンク調査」ではメインの取引社数は3メガバンクに次ぐ4位の4万511社だった。東京商工リサーチが保有する全国の企業データを活用しりそな銀行がメインバンクの企業を分析した。
5

メインバンク調査で全国5位の北洋銀行 ~圧倒する道内シェアで地域経済を牽引~
「2025年全国メインバンク調査」で、北洋銀行(2万8,462社)が3メガ、りそな銀行に次ぎ、調査開始の2013年から13年連続で全国5位を維持した。北海道に169店舗、都内1店舗を構え北海道内シェアは約4割(37.9%)に達する。