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「過剰債務」の中小企業、約3割が「事業再構築の意向なし」 ~ 第8回「過剰債務に関するアンケート」調査 ~

 東京商工リサーチは8月1日~9日にかけて、債務の過剰感についてアンケート調査を実施した。
 「コロナ前から過剰感がある」は11.6%、「コロナ後に過剰となった」は17.8%で、合わせて29.5%の企業が「過剰債務」と回答した。「過剰債務」と回答した企業は、前回調査(2022年4月)の32.0%から2.5ポイント改善した。
 ただ、「道路旅客運送業」の85.0%、「宿泊業」の81.2%、「飲食店」の77.1%、「娯楽業」の68.7%など、コロナ禍が直撃した対面型サービス業ほど債務の過剰感の解消が遅れている。
 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの行動制限は出ていないが、コロナの第7波が押し寄せ、コロナ前の売上高に戻らないことも過剰債務が続く要因になっているようだ。
 短期的な利益確保も難しいなか、実質無利子・無担保(ゼロ・ゼロ)融資の返済が始まり、資金繰り支援効果は剥落し始めている。過剰債務を抱えた企業に、金融機関の融資姿勢は厳しくなっている。新たな資金調達がしにくい状態が長引くと、事業継続を断念する「あきらめ型倒産」が増える可能性も出ている。

  • 本調査は、2022年8月1日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,978社を集計・分析した。
    前回調査は、2022年4月18日公表(アンケート期間:4月1日~11日)。
    資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。

Q1.貴社の債務(負債)の状況は、次のうちどれですか?(択一回答)


中小企業の3社に1社が「過剰債務」

 本調査は、負債比率や有利子負債比率など財務分析の定量数値に限定せず、債務の過剰感を聞いた。
 「コロナ前から過剰感」は11.6%(5,978社中、697社)、「コロナ後に過剰感」は17.8%(1,067社)で、計29.5%が「過剰債務」と回答した。
 規模別で、「過剰債務」との回答は大企業が15.6%(845社中、132社)に対し、中小企業は31.7%(5,133社中、1,632社)と、2倍の差が開いた。
 「過剰感があったが、コロナ後に解消」は、業績回復の遅れを反映し、大企業が1.7%(15社)、中小企業が2.3%(122社)と、いずれも僅かにとどまった。

(全企業5,978社)

(資本金1億円以上845社)(資本金1億円未満5,133社)

業種別「過剰債務率」 対面型サービス業が上位

 「コロナ前から過剰感」、および「コロナ後に過剰感」と回答した企業を業種別で分析した。(業種中分類、回答母数20以上)
 過剰債務率の最高は、「道路旅客運送業」で85.0%(20社中、17社)だった。以下、「宿泊業」の81.2%(32社中、26社)、「飲食店」の77.1%(35社中、27社)、「娯楽業」の68.7%(32社中、22社)、旅行や葬儀、結婚式場などの「その他の生活関連サービス業」の65.7%(35社中、23社)と続く。
 対面型サービス業が上位を占め、人流抑制や三密回避の定着が経営に深刻な傷跡を残していることが改めて浮き彫りとなった。

「過剰感がある」「過剰となった」と回答した企業の業種(上位15業種)

Q2. 「コロナ前から過剰感」、「コロナ後に過剰感」と回答された方に伺います。債務(負債)の状況が、貴社の事業再構築への取り組みに影響を与えていますか?(択一回答)


「過剰債務」が事業再構築の足かせ 3社に1社

 Q1で「コロナ前から過剰感」、「コロナ後に過剰感」と回答した企業に事業再構築への取り組みを聞いた。1,628社から回答を得た。
 「事業再構築の意向はない」は29.9%(487社)だった。一方、過剰債務が足かせで「取り組むことができない」は12.5%(205社)、「取り組み規模を縮小した」は20.0%(326社)だった。過剰債務を抱える企業のうち、32.6%が事業再構築にマイナスの影響を訴えている。
 規模別では、過剰債務が事業再構築の足かせになっている企業は、大企業で21.4%(112社中、24社)、中小企業で33.4%(1,516社中、507社)だった。

事業再構築への取り組み


 「過剰債務」を抱える中小企業が依然として3割を超えていることが今回の調査でわかった。政府はコロナ禍初期より、実質無利子・無担保(ゼロ・ゼロ)融資などの貸付型、新型コロナ特例リスケジュールなどのリスケ型を中心とした強力な資金繰り支援で、倒産を抑制してきた。しかし、こうした支援がスタートしてから2年以上が経過し、債務の返済が始まっている企業も増えるなど、緊急避難的に実施した支援の「副反応」への対処が急務だ。
 政府は「事業再構築補助金」や「中小企業活性化パッケージ」などの取り組みを進めているが、過剰債務を抱える中小企業のうち「事業再構築の意向はない」との回答は29.3%にのぼり、政府のメッセージは必ずしも中小企業に届いていない。
 また、「(債務)過剰感があったが、コロナ後に解消した」と回答した中小企業は2.3%にとどまっている。過剰債務の解消も念頭に置いた活性化に向けた取り組みは今年4月に始まったばかりだが、コロナ前の売上高の確保が難しいなかで、債務の返済に道筋をつけることが容易ではないことを物語っている。
 対面型サービスを中心に「過剰債務率」が6割を超える業種が散見され、「あきらめ型倒産」を誘発しかねない状況だ。こうした業種は、ポストコロナでのインバウンド需要の担い手として期待されるだけに、各業種、企業の置かれた状況への細かいフォローが必要になっている。

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