ゴルフスタジアムのリース問題、「信義則違反」の判断に注目集まる
ゴルフのレッスンプロと信販会社のリース契約を巡る東京地裁での約5年に及ぶ集団訴訟の一部判決が、7月に予定されている。
集団訴訟とは別に、すでに判決が確定した大阪高裁の訴訟では信販会社の一部責任を認め、残リース料のうち3割がカットされた。リース事業協会の定める「自主規制規則」が守られなかった場合、リース料の請求が信義則上制限されるとした。
名古屋地裁の訴訟でも、残リース料を数割カットする条件で和解したケースがあるという。これまで信販会社やサプライヤーとの契約を巡るリース料支払いの訴訟は、特殊な事例を除き、信販会社の請求を全て認めることが大半だった。
契約当事者の誠実さを問う「信義則」が争点の約600名のレッスンプロの集団訴訟。その判決に注目が集まっている。
トラブルの発端
今回、問題となったリースのサプライヤーは、(株)ゴルフスタジアム(TSR企業コード:296139424、以下GS社)だ。GS社はレッスンプロに対し、数百万円のソフトウェアをリース契約すると、実質無料でホームページを新規作成するとして全国1000名のレッスンプロと契約した。
GS社は毎月、広告料名目でリース料相当額をレッスンプロへ支払っていたが、GS社の資金繰りが悪化し、広告料の支払いが滞った。そのため数百万円の残リース料を抱えたレッスンプロと信販会社のトラブルに発展。レッスンプロは被害者の会を結成した。
その後、GS社はレッスンプロから破産を申し立てられ2017年7月、東京地裁から破産開始決定を受けている。
大阪高裁では信販会社の一部責任を認定
大阪高裁の裁判では、レッスンプロがリース契約できる見込額をリース会社が示し、その金額で見積書を作成する「逆算リース」や、価値の乏しいソフトに対し、高額なリース契約が公序良俗に反する点などが争点となった。
大阪高裁の判決は、契約書類の作成や電話で意志を確認したこと、価格の合意などでこれらの主張の大半が否定された。だが、高裁はリース事業協会の定めた「小口リース取引に係る自主規制規則」に基づき、規則に反すればリース契約が成立してもリース料金の請求が信義則上制限される場合があると示した。
サプライヤーと顧客との間の取引を確認する規則で、今回のケースに当てはめると、信販会社の電話確認でリース料相当分の広告料を支払うスキームが把握できれば契約締結がなかった可能性もあるとして、取引状況の確認が十分に行われなかった点を指摘した。
一審の京都地裁では、信販会社の請求を全て認めた。控訴審の大阪高裁では、信販会社の責任を一部認め、リース残額の3割がカットされた。最終的に両者は最高裁へ控訴したが棄却され、2021年12月、高裁判決が確定した。
東京地裁の約600名の集団訴訟は、約5年の長い期間、弁論が行われてきた。一部は弁論が終結し、今年7月から順次判決が予定されている。
大阪高裁の訴訟でレッスンプロの代理人を務めた住田浩史弁護士(御池総合法律事務所、京都府)は、東京地裁の判決について「(大阪高裁の判決より)もっと良い結果が出ることを期待している」とコメントした。
東京地裁の集団訴訟を担当する弁護団団長の西村國彦弁護士(さくら共同法律事務所、東京都)は、「小口リースの扱いで数百万円の契約をサプライヤーに責任を押し付け、リース会社は電話で簡易的に確認する仕組みが多くの被害者を生んでいる」と問題点を指摘する。
東京地裁が「信義則」をどう判断するか。信販業界が注目する判決が迫っている。
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