• TSRデータインサイト

上場企業の雇調金、計上額8000億円に迫る 小売は半数が受給 第11回上場企業「雇用調整助成金」調査

 新型コロナ感染拡大に伴う雇用支援として2020年4月分から適用された雇用調整助成金(以下、雇調金)の特例措置制度を活用した上場企業は、2022年3月末で845社に達した。
 上場企業3877社の21.7%を占め、前回調査(2021年9月末時点)の829社から16社増えた。
 コロナ禍も3年目に入り、雇調金を受給する企業の増加ペースは当初に比べ鈍化するが、小売やサービス、交通インフラなど、雇用維持のため引き続き助成を必要とする企業は少なくない。
 雇調金計上額が判明した845社の計上額合計は7945億1340万円に達し、2021年9月末(5829億9390万円)から半年で2115億1950万円(36.2%増)増えた。調査を開始した2020年11月末の計上額は合計2414億5420万円だったが、支給額は1年5カ月間で約3.3倍(229.0%増)に膨らんだ。
 2020年4月以降の本決算で初めて雇調金を計上し、かつ2期連続で計上した上場企業は423社(構成比50.0%)と半数を占めた。
 業種別では、製造は1期で受給を終了した企業が半数以上に達したが、鉄道や航空などの交通インフラ、外食を含めた小売などの対面サービスなどは、コロナ前の水準に需要・業績が戻らず受給が長期化している。2022年3月にまん延防止等重点措置が全面解除され、4月以降は地域特例がなくなった。このため、受給に依存する企業では先行きの雇用維持に不透明感も漂い始めた。

  • 本調査は、雇用調整助成金の受給、または申請を情報開示した上場企業を対象に、2020年4月1日~2022年3月31日で金額、および活用や申請を開示資料に記載した企業を集計した。今回の調査で11回目。

【計上額別】「100億円以上」が15社に増加


 845社の計上額別は、最多は1億円以上5億円未満284社(構成比33.6%)だった。次いで1億円未満256社(同30.3%)、10億円以上50億円未満115社(同13.6%)、5億円以上10億円未満63社(同7.5%)、50億円以上100億円未満17社(同2.0%)、100億円以上15社(同1.6%)と続いた。
 100億円以上は15社のうち、8社が交通インフラを含む運送だった。長引く外出自粛で追加計上が相次ぎ、計上額を押し上げた。

2205雇調金総合

【業種別】小売(外食含む)の約半数が受給


 845社の業種別は、製造が329社(計上額1322億8700万円)で最多だった。
 次いで、外食を含む小売164社(同2128億8100万円)、観光などのサービス159社(同1401億9200万円)と続く。
 業種別の利用率は、小売が47.1%(348社中、164社)と約半数を占めた。次いで、運送が40.6%(123社中、50社)、サービスが29.3%(541社中、159社)と、コロナ禍が直撃した業種で申請が目立った。
 製造は22.1%(1482社中、329社)だった。
 計上額では、航空会社・鉄道を含む運送(50社)が2442億7900万円で最も多かった。

2205雇調金業種

【業種別の受給企業数】小売、運送の6割が2期連続


 特例措置が開始された2020年4月以降に雇調金を計上し、かつ2021年度にも2期連続で計上した企業は423社だった。雇調金を受給する845社の半数以上(構成比50.0%)を占める。
 業種別に連続計上をみると、最多は製造の144社、次いで小売108社、サービス77社と続く。連続計上企業の割合では小売が65.8%と最も高く、次いで、運送64.0%も6割を超えた。サービス48.4%や、卸売49.0%も約半数と高い水準にある。
 製造は43.7%で、2020年春の緊急事態宣言で従業員の帰休措置を採った企業が多くみられたが、その1度だけの計上にとどまる企業が多かった。

2205雇調金連続計上


 雇調金の特例措置期間内に受給が判明した上場企業は、今年3月末で845社を数えた。合計の計上額は7945億1340万円に達し、8000億円が目前に迫る。累計100億円超を計上した企業は2021年9月末から5社増え、15社となった。業種別では15社のうち、運送(交通インフラ)が8社と半数を超え、8社はいずれも百貨店やホテルなど複合事業を行う鉄道会社だった。
 雇調金の受給は、コロナ禍に直撃された業種とそれ以外で二極化が広がっている。特例措置期間に2期連続で雇調金を計上したのは423社で、受給する企業の50.0%を占めた。業種別では、運送、小売(外食含む)が6割超と活用が目立つ。一方、製造とその他(情報通信や建設などを含む)は2020年度だけの計上にとどまるケースが多く、コロナ禍が長引くにつれて業種格差は広がる一方だ。
 今年1月から特例措置の段階的縮小が始まった。全国でまん延防止等重点措置が解除され、7月以降は特例措置の中止を含め、さらなる規模縮小が検討されている。それだけに小売や交通インフラを中心に、業績回復が急がれる。感染者数は大型連休を終えて一進一退が続くが、雇調金受給に支えられた企業では、今後は人員削減や採用抑制が懸念されている。

2205雇調金上位

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

政策金利引き上げ 「1年は現状維持」が59.6% すでに「上昇」が52.0%、借入金利は上昇局面に

企業の59.6%が、これ以上の政策金利の引き上げに「待った!」を希望していることがわかった。今後の望ましい政策金利の引き上げ時期は、「向こう1年は現状維持」が59.6%で最多だった。「引き下げ」も23.6%あり、企業経営の観点では利上げを望む声は少数(16.6%)にとどまった。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の12.2%が事業資金を個人名義で調達 保証債務に上乗せ負担、債務整理や廃業を複雑に

事業資金を代表者名義で調達したことのある中小企業は12.2%に達することがわかった。政府や金融界は「経営者保証ガイドライン」(適用開始2014年2月)や「事業再生ガイドライン」(同2022年4月)などを通じ、企業が抱える債務を整理する際に個人保証が足かせにならないよう取り組んでいる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年「早期・希望退職募集」は 1万7,875人 、リーマン・ショック以降で3番目の高水準に

2025年の「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は43社(前年57社)で、募集人数は1万7,875人(同78.5%増)に達したことがわかった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年7-9月の客室単価 1万6,975円 稼働率80%超え 人手不足の解消が課題

ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年7-9月期の平均客室単価は、1万6,975円(前年同期比8.9%増)で前年同期を上回った。7-9月期で、13ブランドの平均が前年を上回るのは3年連続。平均稼働率は83.9%で前年同期を2.9ポイント上回り、 稼働率も3年連続で上昇している。

5

  • TSRデータインサイト

【最新決算】 私立大学、半数以上が赤字に転落 売上高トップは順天堂、利益トップは帝京大学

全国の私立大学を経営する545法人のうち、半数を超える287法人が直近の2025年3月期決算で赤字だったことがわかった。  

TOPへ