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ゴンチャジャパン・角田社長 アフターコロナの外食産業、「採用」が生き残りのカギ 単独インタビュー(後編)

―ライバルは

  カフェに行く時、ゴンチャを真っ先に思い浮かべていただきたいと思うが、今はまだまだ他のブランドが強い。我々は魅力ある商品をもっと出していかないといけない。他社と比べて「どっちにしようかな」と選択肢の一つとして上げて貰えるようになる必要がある。
 お茶は、コーヒー店のように「飲みたいから気軽に入る」というチェーン店がない。ティータイムの中で、ゴンチャを想起してもらえるきっかけ作りが必要だ。当社が実施したブランド認知では、若い世代ですら75%ほどだった。スターバックスは「ほぼ100%」だ。ここを上げていきたい。
 コーヒーはどこでも飲める時代になったが、日本なのにおいしいお茶を飲める場所が少ない。「コーヒーはコーヒー屋さん、お茶はお茶屋さんで飲もう」という習慣ができればいい。
 お子さんや若い人でコーヒーが苦手な人は少なくない。私もコーヒーは好きだが、コーヒーは「気付け」のような位置づけであると感じる。疲れた時とか、眠気覚ましに飲む、というように。お茶はシーンを問わず楽しめるものだ。

―若年層以外へのアプローチは

 若い世代が上の世代を引っ張って来てくれるような形を作りたい。このほど販売を始めてヒットしている「いちご杏仁のミルクティー」は、スタッフからの前評判が高かった。お客様にご好評いただいたのはもちろんだが、スタッフが家族や周りの大人に口コミしてくれて評判が広がった部分もある。スタッフは約3,000人。今後は店頭での試飲などの機会を作りたい。ゴンチャは「タピオカ屋さん」ではなく、「ティーカフェ」だということを知らない層に周知していかねばならない。

ゴンチャ角田社長後編

ゴンチャジャパン・角田社長(TSR撮影)

―直営が15%、残りがフランチャイズ(FC)だ。コロナ禍で飲食店のスクラップが進んだが、ゴンチャはFCが増えた

 坪あたりの売上効率が良いこともあるが、「お茶をメインにしているチェーンがまだない」というアドバンテージもあるようだ。
 また、店舗のパッケージとして、小さいものから大きいものまで対応できる柔軟さもある。初期投資も比較的抑えられる。店舗面積は平均24坪だが、一番小さい店舗は6坪台、一番大きい店舗は約70坪だ。選択の幅が広い。また、FCの皆さんが言ってくれることだが、スタッフの採用に強いことは大きい。
 外食は、“原価”“人件費”“賃料”が(経営の)3要素。だが、採用費は見えにくいが大きい負担だ。トレーニングが終わったところで辞められたら、また募集をかけないといけない。採用のための媒体費が掛かる。別業態では、こうした「終わりのない採用活動」が嫌になって閉店するFCもある。
 他の外食業態だと3人募集しているのに、応募が1人しかないこともある。ゴンチャの場合、厳しい立地も一部ではあるが、平均して応募者が多い傾向だ。募集人数に対して5倍の応募が集まることもある。
 コロナ前の採用は、人手不足で危機的だったが、コロナ禍で閉店や時短営業で飲食業の雇用が緩んだ。ただ、昨秋あたりから、また採用の厳しさが戻りつつある。外食産業は採用が今後の大事なポイントの一つになる。

―なぜゴンチャに応募が集まるのか

 若い人へのブランド力もあるが、「オペレーションフレンドリー」な面は大きいだろう。商品の性質的にも食材のくずは出ないし、揚げ物もないので店のバックスペースが他業態に比べて清潔だ。また、働いている人の負荷を軽減するために自動釣銭機を導入した。これがあると閉店後に現金合わせしなくて良い。今後、モバイル、デリバリーも一元化し、もっと現場の負荷を低減しようと思っている。
 FC加盟を検討される方は、新規事業を選ぶ際、かなり厳しい目で選ばれる。細かいところまで見た上で選んでもらっている。

―今後の外食業界をどのように見通すか

 日本の外を見ると医療体制や感染者のケアも形ができていく中で、生活、レジャーは「ウィズコロナ」に変わっている。日本も次第に正常化するだろう。そうなると、これまでに溜まったレジャーや楽しみへの渇望が一気に現れる。このニーズをきっちり迎え入れる準備が絶対に必要だ。
 当社はこの春、数字がとても良かった。ある程度人流が回復したことがあるが、ここにはインバウンドは含まれていない。
 チャンスを取り逃さないようモバイルオーダーを3月から全店で可能にした。メニューの多言語化については、英語、中国語は以前から導入していたが、新たにベトナム語や韓国語にも対応した。また、通常時なら「ここはプライムロケーションだよね」という場所も、先を見据えて出店ポイントに入れている。

―親会社(ゴンチャグローバル)との関係は。事業の決断は親会社が行う?

 日本で決断できる。ゴンチャは、約1,700のグローバル店舗があるが、国内は1割弱の120店。ただ、売上ベースでは2割近い。日本は1店舗当たりの売上が大きいので、我々のやることが「正」となれば、グローバルブランドを日本チームがリードしている、というモチベーションになる。
 アジアの中で、日本は特に発想力が強い。商品開発とか、日本は発想が豊かだ。日本は職人気質だったり、食へのこだわりのある人も多いからだろう。日本でしっかり数字を取れれば、日本の施策はグローバルに水平展開されていく。そういう意味で我々がイニシアチブを取りたいと思っている。

 4月下旬の日曜日。新宿駅(東京)から徒歩すぐのゴンチャの店舗は、ピークタイム前(午後2~4時)の1時でも10組の若者が列を作っていた。この店舗はコロナ前から営業しているが、緊急事態宣言中は土日でも客の入りはまばらだった。店舗の客入りは、街に若者が戻ってきた“ものさし”とも言える。
 ゴンチャの店舗網は拡大をたどり、4月下旬でコロナ前の2倍の120店を超える。目標出店数について、角田社長は「いろいろ言われるのもイヤだから」と明言を避けた。だがその先に、有力カフェチェーンを見据えているのは間違いない。
 「タピオカ屋さん」としてのイメージが強いが、「お茶のゴンチャ」が浸透すると、ミドル、シニア世代も赤いロゴ入りカップを手にお茶を飲む姿が当たり前になるかも知れない。

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