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ゴンチャジャパン・角田社長 「タピオカ屋さん」のイメージだけでは成長できない 単独インタビュー(前編)

 2019年にリバイバルブームを巻き起こした「タピオカ」。この影響で、2017年3月に25社にとどまっていた「タピオカ屋さん」は2020年3月に112社まで急増 した。だが、コロナ禍での人流の減少に加え、ブーム一巡から「インスタ映え」を求める客も減り、新規開業は沈静化した。
 こうしたなか、2015年に日本市場へ参入し、タピオカブームをけん引した人気チェーン「ゴンチャ」は、コロナ禍でも店舗網を拡大している。
 東京商工リサーチは、ゴンチャの国内店舗を運営する(株)ゴンチャジャパン(TSR企業コード:014439670、渋谷区)の角田淳社長にブーム後のタピオカの現状と、アフターコロナに向けた外食産業の動向などを訊いた。

ゴンチャ角田社長前編

ゴンチャジャパン・角田社長(TSR撮影)

―2020年は、新型コロナ感染拡大で街から人が消えた。どのように乗り越えたのか

 非常に厳しい時期だった。できることを全部やった。一番大きかったのはデリバリーの導入だ。Uber Eatsや出前館などのサードパーティも利用したが、当社でも自転車を購入し、自前でデリバリーした。原宿の直営店と本社(東京・初台)にキッチンがあるが、デリバリー専門の店舗にしてお客様へ商品を配達していた。
 ゴンチャの商品はシーリング(ドリンクに密閉した蓋)をしているので、こぼれにくく、移動に適している。
 家から出られないストレスを多くの方が抱えていた時期に、デリバリーでドリンクが届くニーズはかなりあった。デリバリーは当時のベースを支えた。また、出店施設の営業時間の短縮や、一部休業など状況に応じた対応をとった。

―デリバリーの業績への貢献度は

 (デリバリーの)実施店平均で15%程度だ。外食の一般的な割合が7~8%なので多い方だ。ファストフード全般がそうだが、ゴンチャも席のないテイクアウト専用の店舗があり、比較的デリバリーに対応しやすかった。
 コロナ禍は「マニュアルのない、前例のない事態」だった。外食業界が様々な工夫をしながら生き残りに向けて試行錯誤した。我々の場合はフランチャイズ(FC)もあるが、FC各社も人材の再配置など雇用をある程度守りながらやってきた。みな尽力したが、前例がなく、本当に最善の形なのかはわからない。 

―人流は回復しつつあるが、消費回復を実感した時期は?

 山はいくつかあった。昨年(2021年)11月、12月は、売上にコロナの影響がほとんど出なかった。人流と店舗の売上がリンクして、感染者数が下火になると数字が戻る動きが顕著となった。ただ、ゴンチャの場合、タピオカブームが「ものすごかった」ので、ブーム沈静化のタイミングとコロナによる外出自粛がほぼ一緒だった。なので、ブームが落ち着いた影響なのか、コロナの影響なのか、非常に判断しづらい状況だった。
 一方、新規感染者数が減少した昨年の後半に売上が上がったので、私たちとしてはブームの終わりは底が見えて、「人流によって数字が戻った」ことを初めて把握できた。

―以前ほど、ホームページや店頭でタピオカにフォーカスしていない

 そもそも、2015年の日本上陸当初からお茶を主軸に運営してきた。日本だと緑茶やほうじ茶は無糖で飲むのが普通だが、甘くしたり、トッピングを加えたりして飲むアジア風の楽しみ方をメインに打ち出した。その一つがタピオカに過ぎなかった。そこに、たまたまタピオカブームが沸き起こり、注目された。
 売上への貢献度が大きかったので、「タピオカ屋代表」みたいに言われたが、もともとゴンチャは「お茶屋さん」だ。タピオカ以外にも、幅広いお客様に様々なお茶の楽しみ方を提案していく。

―それでもタピオカのイメージは強い

 現在もタピオカをトッピングするお客様は8割いらっしゃる。そこから「ブームが落ち着いて定着した」のだと思う。ただ、「タピオカ屋さん」(のイメージ)だけでどこまで成長できるか、どのようなニーズがあるのかと考えると、それよりは日本人の生活にお茶は欠かせないわけだからお茶を軸にしよう、という元々の考えに回帰した。

―多くの「タピオカ屋さん」が淘汰される中でゴンチャは生き残った

 SNSなどを見てもタピオカを好む方は、食感や味などにこだわって商品を選んでいる。そういった面でも他社と品質の比較をしてもらっていると考えている。ブームの時に様々なブランドが出店し、「レンジ調理」など簡易的な調理でご提供するお店もある中で、ゴンチャはお店で丁寧に調理して提供している。そういった品質や味わいへのこだわりをご理解いただけたのかもしれない。

―店舗数がコロナ前の2019年から2倍に増えた

 今年4月末で、27都道府県に120店を出店し、コロナ前の2019年末の55店から2倍に増えた。以前は400店を目指す目標もあったが、それがどういう意味を持つのだろうと考えた。売上を見るのか、店舗数を見るのか。
 今後我々がフォーカスするのは、1店舗あたりの来店者数だ。1店舗あたり1日500人の来店で現状の120店だと6万人になる。大手ファストフードだと、もっと膨大な数になるが、6万人は東京ドーム1回の動員数を上回る規模だ。これを意識して6万人という数にこだわっている。
 今年中に30店増やす、50店増やすといった出店数を目標に据えると、達成出来ても出来なくても、必要以上に注目される。上場会社ではないので、そこまでコミットしなくてもいいと思う。
 「楽しんでもらう」ことを第一に、そういうスタンスで着実にファンを増やし、ニーズを作っていく。

(続く)

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