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上場企業の不動産売却87社に増加、13年ぶりの80社超【2021年度】

 2021年度(2021年4月-2022年3月)に不動産売却を開示した東証1部、2部上場企業は、87社(前年度76社)で3年連続で増加した。80社台に乗せたのは2008年度以来、13年ぶり。
 不動産の譲渡益と譲渡損の差額はプラス5,267億9,200万円で、3年連続で増加した。差額は、2001年度以降では2020年度の4,106億5,200万円を抜き、最大を記録した。
 新型コロナ感染拡大の影響で、上場企業も業績悪化と同時に、遊休資産の処分や業務の効率化に取り組んだ。さらに、財務改善や在宅勤務の広がりでオフィスの見直しなどに着手する企業も出始め、不動産売却が加速した。2021年度もコロナ禍への対応や資産の有効活用、資産効率の向上を目的に不動産売却を進めた企業が多かった。
 また、譲渡損益を公表した81社では、譲渡益の計上は78社(構成比96.2%)で、前年度の91.8%(74社中、68社)を4.4ポイント上回った。
 不動産を売却した87社のうち、直近の本決算や四半期決算で最終利益が赤字は15社(構成比17.2%)にとどまり、前年度の30社(同39.4%)から22.2ポイント減と大幅に下回った。
 長引くコロナ禍で業績にかかわらず資産効率を高め、キャッシュポジションに余裕を持つ動きが定着してきたとみられる。
 売却土地面積が合計1万平方メートルを超えたのは24社(前年度23社)で、前年度より1社増加した。譲渡益トップは本社ビルを売却した電通グループの890億円だった。
 商業地の公示地価の回復に加え、円安進行やウクライナ情勢などの先行き不透明感もあり、2022年度も上場企業の不動産売却は増えそうだ。

  • 本調査は、東京証券取引所1部、2部上場企業(不動産投資法人を除く)の開示をもとに、2021年度(2021年4月~2022年3月)の国内不動産(固定資産)の売却契約、または引渡しを集計、分析した(各譲渡価額、譲渡損益は見込み額を含む)。
  • 資料は、『会社情報に関する適時開示資料』(2022年4月18日公表分まで)に基づく。東証の上場企業に固定資産売却の適時開示が義務付けられているのは、原則として譲渡する固定資産の帳簿価額が純資産額の30%に相当する額以上、または譲渡による損益見込み額が経常利益、または当期純利益の30%に相当する額以上のいずれかに該当する場合としている。
  • 上場区分は固定資産売却の開示時点を基準に集計。


譲渡差益は5,267億円、3年連続増加で2001年以降の最大を更新

 譲渡差益の総額は、公表のあった81社(前年度74社)の合計が5,267億9,200万円(前年度4,106億5,200万円、前年度比28.2%、見込み額を含む)で、2001年度以降の最大となった。
 内訳は、譲渡益計上が78社で合計5,275億9,000万円(同4,148億7,800万円)。譲渡損計上は3社で合計▲7億9,800万円(同▲42億2,600万円)だった。

不動産売却

売却土地面積 合計123万平方メートル トップはIHI

 2021年度の売却土地総面積は、公表した77社合計で123万2,158平方メートルだった。前年度(公表63社、合計177万311平方メートル)より3割(30.3%)減少し、2年連続で前年度を下回った。
 売却土地面積が合計1万平方メートル超は24社(前年度23社)で、前年度を1社上回った。
だが、10万平方メートル以上の開示は、IHI(東証1部)の1社(前年度3社)にとどまり、全体では大幅な減少となった。
 売却土地面積トップは、IHIで合計59万2,159平方メートル。事業ポートフォリオの変革への投資原資の確保を目的に、計6カ所の遊休資産などを売却した。
 2位は森永乳業(東証1部)の合計6万9,983平方メートル。3位は小森コーポレーション(東証1部)の5万6,119平方メートル。

譲渡価額総額 公表20社合計で1,809億3,100万円

 譲渡価格の総額は、公表した20社(前年度19社)の合計が1,809億3,100万円(同1,284億3,800万円)(見込み額を含む)で、前年の1.4倍に増加した。
 1位は日本通運(公表時東証1部、上場廃止)の732億円。日本通運は前年度も譲渡価格500億円でトップだった。以下、2位がエイチ・アイ・エス(東証1部)の324億円、3位が京浜急行電鉄(東証1部)の200億円。
 これら3社は譲渡価額が100億円以上(前年度2社)だった。

不動産売却

業種別 機械が最多の12社

 業種別では、機械の12社がトップだった。以下、卸売業(11社)、サービス業(10社)、小売業(9社)、陸運業(6社)の順。
 機械は、2021年度に唯一10万平方メートル以上の開示をしたIHI(合計59万2,159平方メートル)の影響もあり、売却土地面積の合計でも72万5,380平方メートルと業種別の最多となった。

不動産売却


 リーマン・ショック以降、低水準で推移していた上場企業の不動産売却は、コロナ禍で再び活発になってきた。不動産売却の理由は、経営資源の有効活用や資産効率の向上が中心になっている。だが、コロナ禍への対応や、リモートワークなどの働き方改革でオフィス活用の見直しを挙げる企業も一部あった。
 2021年の商業地の公示地価(国交省)は、全国平均で前年度比0.4%上昇した。古くから所有し、簿価の低い不動産の売却も目立ち、2021年度の不動産売却による譲渡差益は2001年以降で最大の5,267億9,200万円となった。
 2021年度も前年度同様に、資産の効率化や財務体質の向上を目的に、売却した不動産をリースバックする「セールアンドリースバック」が続いた。コロナ禍を契機に、不動産所有に対する企業の認識が変化しており、上場企業の不動産売却が不動産市場に与える影響も注目される。

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