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ベルベ破産、銀行ごとの決算書と「多重リース」

  2021年11月、突然店舗を閉鎖したベーカリーの(株)ベルベ(TSR企業コード:350365636、大和市)が3月8日、横浜地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は58億8837万円だった。直近の決算書上の負債は10億円程度だったが、大きく膨らんだ。「負債膨張」の背景に何があったのか。関係者への取材や破産申立書などから破産に至る裏側がようやく見えてきた。
 運転資金の不足を調達するため、銀行ごとに異なる決算書を作成したのは序の口。多重リース、出資金名目の資金集めなど、明るく親しみやすい店舗イメージとかけ離れた粉飾の手口が浮かび上がる。
 前社長のA氏は、ベルベの経理を自ら行い、会計事務所の従業員も取り込んで帳簿や決算書を粉飾していた。資金繰りに行き詰まった2021年10月28日、前社長は弁護士に民事再生法の申請を相談し、不正を告白。だが、全容を把握するための資料提供を求められたA氏は、次の打ち合わせ前に所在がわからなくなった。
 東京商工リサーチ(TSR)がベルベの破産劇を追った。


地元で人気のベーカリー

  ベルベは1973年、神奈川県大和市内で創業。リーズナブルな価格で人気となり、特に「スイートポテト」は多くのファンを獲得した。積極的に出店し、神奈川県内だけでなく、都内の汐留や大手町など激戦区にも進出した。
 しかし、経理を含め経営を実質1人で担っていたA社長(当時)は、緻密な事業計画や収支計画を立てていなかった。順調な経営を装っていたが、内実は火の車だった。
 原材料価格の高騰、人件費の上昇など経営環境が悪化していた。それでもベルベは、商品単価を据置き、顧客に喜ばれた。だが、乱脈経理で当然のように運転資金が枯渇すると、前社長は開店資金を調達し、それを流用することで乗り切ることを繰り返した。
 銀行やリース会社からは、新店舗に必要な資金しか調達できない。これでは運転資金には流用できない。そこでA社長は、複数の金融機関に新店舗向けの融資を依頼し、運転資金に充てる方法を思いついた。つまり、1店舗の開店資金を複数の金融機関から調達し、当座の運転資金に回して凌いだのだ。
 そのために金融機関ごとの異なる粉飾した決算書を提出した。当該銀行がメインバンクであるかのように装い、資金を調達するだけでなく、単一の動産を担保に複数のリース会社から融資を得ていた。いわゆる「多重リース」だ。

ベルベ

新規出店の真意

 複数の金融機関からの資金調達は返済額の増加を意味する。返済資金と運転資金を調達するため、さらに新規出店が加速する。これを繰り返し、2015年から2018年までの新規出店数は11を数える。
 だが、早晩こうした手法は行き詰まるのは必至だ。そこには実体のない債務だけが残る。最終的に金融機関から資金調達が難しくなり、2021年5月ごろには友人から出資金という名目で資金を調達したが、ついに同年10月末には支払不能となった。

不正会計の裏側

  ベルベが裁判所へ提出した資料などによると、2021年10月28日、A社長が民事再生法の申請について弁護士事務所に出向いている。
 弁護士との打ち合わせで、A社長は不正会計を明らかにした。弁護士は粉飾されていない、真正の決算書や各店舗の収支がわかる資料の提供を要請。11月1日に再度打ち合わせをすることで、その日の相談は終わった。
だが、打ち合わせ前日の10月31日。ベルベ関係者からA社長が所在不明で、連絡が取れなくなったことを知らされた。打ち合わせは延期となったが、数日経過しても行方はつかめず、支払期限も迫っていた。そこでA社長抜きで、弁護士と幹部社員で今後の方針が検討された。
 だが、ベルベの不正会計の全容を知っているのはA社長ひとり。税務申告を委託していた会計事務所も担当者がA社長に取り込まれ、実際の財務内容の把握は困難だった。
 どれがベルベの債務なのかさえ明確にできない状況では、民事再生法による再建は不可能だ。幹部社員が社長に就任し、破産を申請した。
 TSRは会計事務所に取材したが、「守秘義務があるため取材をお断りします」とのコメントしか得られなかった。不正を知りながら粉飾の決算書を作成したのか。その責任はどうなるのか。ベルベの粉飾による倒産劇は、次々と問題点を広げている。

ベルベ

  ベルベの破産申立書によると、一般債権のうち「借入金」は、メガバンクや地銀、信金など金融機関のほか、企業や個人など約30先に及ぶ。銀行口座数は、定期預金などを含め98口座が確認された。
 財産目録は、資産合計が簿価27億6900万円に対し、評価額(見込み)はわずか2272万円にとどまる。
 関係者によると、A前社長はいまだに連絡が取れないという。そのため、破産管財人による調査も時間が掛かる可能性がある。
 順風満帆にみえたベルベだが、裏側は不正会計による見せかけで債権者、従業員など数多くの関係者が被害を受けた。また、ベルベのファンも突然の倒産に驚いた。
 ベルベの破産全容は、これから時間をかけて解きほぐされていく。果たしてA前社長ひとりの責任だったのか。債権者数が多く、消費者(ファン)の支持を得ていた分だけ、混乱の終着には時間がかかりそうだ。

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