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倒産企業の平均寿命23.8年 3年ぶりに上昇【2021年】

 2021年に倒産した企業の平均寿命は23.8年(前年23.3年)で、3年ぶりに前年を上回った。
 産業別では、最長は製造業の36.3年(前年33.4年)、最短は金融・保険業(同22.0年)と情報通信業(同14.9年)の15.7年で、その差は20.6年だった。
 全倒産に占める構成比は、業歴30年以上の“老舗”企業が33.8%(前年32.5%)と、前年から1.3ポイント上昇した。一方、同10年未満の“新興”企業は26.5%(同27.4%)で、前年より0.9ポイントダウンし、差は7.3ポイント(同5.1ポイント)に拡大した。
 地区別では、“老舗”企業の構成比は四国が53.9%(同48.1%)で8年連続トップ、都道府県別では高知県が64.7%(同25.8%)で、初めてトップになった。
 老舗企業は代表者の高齢化に加え、事業承継や後継者育成が遅れた企業が少なくない。一方、 新興企業は代表者が若く、資産背景が脆弱でも柔軟な経営を打ち出しやすい。新興企業の倒産構成比が5年ぶりダウンの背景には、こうした事情のほか、コロナ禍の各種支援策が老舗企業より効果的だったこともあるとみられる。

  • 本調査は、2021年に全国で倒産した6,030件(負債1,000万円以上)のうち、創業年月が不明の909件を除く、5,121件を対象に分析した。
  • 業歴30年以上を『老舗企業』、同10年未満を『新興企業』と定義し、業歴は法人企業が設立年月、個人企業は創業年月から起算した。

“老舗”企業倒産の構成比33.8%、15年間で最高に

 2021年に倒産した6,030件のうち、業歴が判明した5,121件を対象に分析した。
 業歴30年以上の“老舗”企業は1,731件(構成比33.8%)で、構成比は前年より1.3ポイント上昇した。倒産に占める“老舗”の構成比は2年連続で上昇した。
 “老舗”企業は、事業基盤を確立し、金融機関との関係も密接だ。しかし、過去の成功体験に固執し、急激な外部環境への対応が乏しくなりやすい。また、代表者が高齢の場合、生産性向上への投資に消極的な企業も多く、事業承継や後継者問題は遅れがちだ。こうした事情を背景に、倒産だけでなく休廃業を決断するケースも増えている。
 一方、業歴10年未満の“新興”企業の倒産構成比は26.5%で、前年27.4%より0.9ポイント低下した。前年を下回ったのは5年ぶり。政府の創業支援を背景に、経営計画が杜撰な創業も少なくない。ただ、経営基盤も脆弱だが、長引くコロナ禍への柔軟な対応に加え、コロナ関連の支援策が大きく寄与したようだ。

業歴別

平均寿命 23.8年で3年ぶりに延びる

 2021年の倒産企業の平均寿命は23.8年(前年23.3歳)で、3年ぶりに前年を上回った。
 リーマン・ショック後の2009年12月、中小企業金融円滑化法が施行された。経営不振に陥った中小企業は、金融機関から借入返済の条件変更(リスケ)を受け、資金繰りは一時的に緩和した。同法が終了した2013年3月以降も、金融機関は柔軟にリスケ対応を持続し、倒産が減少した事で企業の平均寿命は延び続けた。
 2019年は深刻な人手不足で倒産が増加した。2020年は新型コロナ感染拡大で経営環境が激変したが、相次ぐ支援策で倒産は急減した。ただ、資金余力が乏しく、創業間もない小・零細企業の淘汰は避けられず平均寿命は短縮した。
 2021年は、コロナ禍の資金繰り支援で倒産は歴史的な低水準となった。老舗企業にもコロナ関連の支援策は広がったが、代表者の高齢化や後継者不在で事業を断念するケースが増加。老舗企業の倒産が平均寿命を押し上げた格好となった。
 産業別では、10産業のうち、製造業、卸売業、不動産業、情報通信業、サービス業他の5産業で平均寿命が延びた。平均寿命の最長は、製造業の36.3年で、前年の33.4年より2.9年延び、2年ぶりに前年を上回った。以下、卸売業28.6年(前年27.4年)、不動産業24.5年(同22.1年)、運輸業24.1年(同26.2年)、小売業23.1年(同25.1年)の順。
 平均寿命が最も短いのは、金融・保険業(同22.0年)と情報通信業(同14.9年)の15.7年。

業歴別

産業別 製造業は老舗企業が65.0%、新興企業は1割以下

 産業別では、“老舗”企業の構成比は10産業のうち、製造業、卸売業、不動産業、サービス業他の4産業で上昇。一方、低下したのは、農・林・漁・鉱業、建設業、小売業、金融・保険業、運輸業、情報通信業の6産業だった。
 “老舗”企業の構成比は、最高が製造業の65.0%(前年56.9%)で、唯一、60.0%を超えた。次いで、卸売業42.1%(同40.7%)、不動産業36.8%(同30.7%)、運輸業32.2%(同35.7%)、小売業31.7%(同33.3%)と続く。
 製造業は、2020年の社長の平均年齢が63.03歳で、60代以上が6割(61.0%)を占めた。業績低迷が続くなかで、後継者・事業承継の問題などの課題を抱え、行き詰まるケースもある。
 業歴10年未満の“新興”企業の構成比の最高は、情報通信業37.3%(同43.2%)だった。創業時の投資額が少なく、創業が容易な情報サービス業(ソフトウェア業)の倒産が多かった。

業歴別

地区別 老舗企業は四国が8年連続トップ

 2021年の“老舗”企業倒産の地区別は、最高が四国の53.9%(前年48.1%)。前年より5.8ポイント上昇し、2014年以降、8年連続でトップとなっている。
 次いで、中国44.2%(同36.7%)、中部42.5%(同40.1%)、北陸41.6%(同43.3%)、東北40.4%(同39.7%)の順。
 最低は九州の27.0%(同29.6%)で、前年比2.6ポイント低下した。
 “老舗”企業の構成比がトップの四国は、都道府県別で高知県が1位(構成比64.7%)、愛媛県が3位(同56.5%)、徳島県が7位(同50.0%)、香川県が10位(同48.7%)だった。
 2020年の社長の平均年齢は、高知県が64.61歳と6年連続で全国トップ。また、徳島県や香川県も全国平均(62.49歳)を上回っている。代表者の高齢化は深刻となっていて、事業承継や後継者問題は経営の大きな課題となっている。
 “新興”企業の地区別の構成比は、九州が36.5%(前年32.4%)で、6年連続トップ。次いで、北海道28.2%(同23.5%)、関東27.9%(同30.0%)の順。9地区のうち、4地区で構成比が前年を上回り、北海道(前年比+4.7ポイント)や九州(同+4.1ポイント)で伸びが高かった。

業歴別

都道府県別 老舗企業の構成比の最高は高知県64.7%

 2021年の“老舗”企業倒産の構成比を都道府県別でみると、トップは高知県の64.7%(前年25.8%)だった。次いで、山口県60.5%(同36.9%)、愛媛県56.5%(同45.0%)と西日本が続く。全国平均の33.8%以上は30府県(前年全国平均32.5%、35道県)だった。
 一方、“老舗”企業の構成比の最低は、佐賀県で13.6%(同36.5%)で、“新興”企業の構成比は40.9%と4番目に高い。事業基盤が脆弱な新興企業が、新型コロナ感染拡大で急激に業績悪化に陥り、大きな影響を及ぼしたようだ。
 “老舗”企業の構成比が前年より上昇したのは25都府県(前年19道県)。最高は、高知県の前年比38.9ポイント上昇。次いで、山口県が同23.6ポイント上昇、石川県が同13.7ポイント上昇の順。高知県の社長の平均年齢は64.61歳で、2015年以降、6年連続でトップだった。

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