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中小企業の「過剰債務率」34.7%、2.4ポイント悪化=第6回過剰債務アンケート

 東京商工リサーチは2月1日~9日にかけて、債務の過剰感についてアンケート調査を実施した。「コロナ前から過剰感がある」は13.6%、「コロナ後に過剰となった」は18.9%で、合計32.6%の企業が「過剰債務」であると回答した。これらを合計した「過剰債務」企業の割合は、前回調査(2021年12月)の29.7%から2.8ポイント悪化し、3割を超えた。「オミクロン株」の感染拡大に伴う人流の抑制や、サプライチェーンの乱れによる生産の乱れなどが影響したとみられる。
 「過剰債務」と回答した企業が最も多かった業種は、飲食店の81.1%だった。前回調査では、66.6%にとどまっていたが、14.4ポイント悪化した。年明け以降のまん延防止等重点措置の適用に伴う、宴会や会食の自粛が暗い影を落としている。
 規模別では、中小企業(資本金1億円未満、個人企業等)で「過剰債務」と回答した企業は34.7%にのぼった。前回調査(32.2%)から2.4ポイント悪化した。

  • 本調査は、2022年2月1日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答7,137社を集計・分析した。
    前回調査は、2021年12月17日公表(アンケート期間:12月1日~9日)。
    資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
    構成比のうち、前回調査との増減は小数点第2位まで比較し、切り捨てている。

Q.貴社の債務(負債)の状況は、次のうちどれですか?(択一回答)

中小企業の「過剰債務率」、35%に迫る
 本中小企業の「過剰債務率」、35%に迫る調査では、負債比率や有利子負債比率など財務分析の数値に限定せず、債務の過剰感を聞いた。
 「コロナ前から過剰感」は13.6%(7,137社中、977社)、「コロナ後に過剰感」は18.9%(1,350社)で、合計32.6%が「過剰債務」と回答した。
 規模別で「過剰債務」と回答したのは、大企業の18.0%(915社中、165社)に対して、中小企業は34.7%(6,222社中、2,162社)。前回調査では、それぞれ15.6%、32.2%だった。

過剰債務

業種別「過剰債務率」 飲食店が14.4ポイント悪化
 「コロナ前から過剰感」、および「コロナ後に過剰感」と回答した企業を業種別で分析した(業種中分類、回答母数20以上)。
 「過剰債務率」の最高は、飲食店の81.1%(53社中、43社)だった。前回調査では、66.6%で3番目の水準だったが、オミクロン株の感染拡大やまん延防止等重点措置に伴う時短営業などが影響し、14.4ポイント悪化した。
 前回調査で、過剰債務率が81.8%で最も高かった宿泊業は78.0%(41社中、32社)だった。
 以下、織物・衣服・身の回り品小売業の73.3%(30社中、22社)、娯楽業の66.6%(42社中、28社)と続く。
 旅行や葬儀、結婚式場などが含まれる「その他の生活関連サービス業」は、59.2%(54社中、32社)だった。
 また、農業が57.1%(21社中、12社)で7番目に高かった。飲食店の営業自粛や休校に伴う給食の提供中止など、消費動向の変化の影響を受けているようだ。


 中小企業の「過剰債務率」は34.7%で、前回調査から2.4ポイント悪化した。年明けからのオミクロン株の感染拡大が再度の人流抑制に繋がっていることやサプライチェーンの乱れが国内企業の生産活動の下押しを招いている。こうしたことも背景とした、足元の業績や受注環境の悪化、将来キャッシュフローへの不安の高まりなどが債務過剰感の上昇を引き起こしているものとみられる。
 ただ、ウィズコロナ、ポストコロナへの取り組みが進んでいるとは言い難い状況だ。前回調査(2021年12月)では、「コロナ前から過剰感」、「コロナ後に過剰感」と回答した中小企業のうち、「政府などによる支援策を活用して「事業再構築」など新たな取り組みを実施する予定」は21.1%にとどまった。こうした状況は2カ月経った現在でも大きく変化していないとみられる。

 政府は「事業再構築補助金」などでコロナ後への対応を企業へ促している。ただ、コロナ禍では、史上最大規模の資金繰り支援が実施されており、企業の事業価値の毀損・摩耗への危機意識が散漫になっている恐れがある。資金繰り支援も大切だが、中小企業の場合、将来キャッシュフローを最大化することに単独で取り組むことは難しく、経営者が主体的に外部機関と連携する必要がある。その第一歩は差し迫った危機意識を伴走支援者と共有することだ。今後のコロナ支援ではこうした視点も重要になるだろう。

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